スポーツを通して成長したカリー「その機会を誰もが得られる環境を作る」
ステフィン・カリーはかねてから準備を進めていた『カリーブランド』を昨年12月に発表した。これまでカリーはアンダーアーマーと契約を結び、シグネチャーモデルのシューズを履いてプレーしてきたが、『カリーブランド』の発表以降は同じアンダーアーマーのシューズではあっても自身のブランドのロゴを冠した『カリーフロー8』を使っている。
しかし、『カリーブランド』は単なるシグネチャーシューズのシリーズではない。カリーは自身のブランドを立ち上げるにあたり、『すべての若者が平等にスポーツを親しむこと』をミッションに掲げた。カリーの父親であるデル・カリーも社会貢献に熱心で、NBAプレーヤーとして活躍していた時期にデル・カリー財団を立ち上げた。「僕は家族が地元のコミュニティに恩返しをする中で育ってきた」と語るステフも、妻のアイーシャとともに様々な活動を行っており、それが『カリーブランド』に繋がった。
「遊ぶことは子供にとって基本中の基本で、成長に欠かせないものだよね。一人の人間として、またリーダーとしての今の僕があるのも、子供の頃にスポーツをやっていたからだ。僕はスポーツを通じて、ハードワークやチームワーク、コミュニケーション、時間の管理など多くを学んできた。僕が『カリーブランド』でやりたいのは、このような機会を誰もが得られる環境を作ることだ」
これまでもカリーはアンダーアーマーと連携して、オークランドで子供たちを支援する様々な活動を行ってきた。古いコートを改修したこともあるし、最近ではアンダーアーマーのマスクを多くの人々に寄贈した。「これまでの取り組みがあったからこそ、子供たちがどんな課題に直面しているかを直接知ることができた。僕たちが作った強固な基盤の上に、『カリーブランド』はある」とカリーは言う。
20のコート、125のプログラム、1万5000人のコーチ養成
シューズやアパレル、アクセサリーなどの商品を展開し、その売上の一部を、スポーツを行う環境が整っていない子供たち、そのコミュニティの支援にあてる。その具体的な手段として、2025年までに世界中に20のコートを作り、若いアスリート向けに125のプログラムを実施し、1万5000人のコーチを養成する計画が立てられ、すでに進行中だ。
『001』のナンバーが付けられた最初のカリーコートは、ウォリアーズのホームタウンであるカリフォルニア州オークランドに作られた。マンザニータ・レクリエーション・センターにある屋外コートが改修され、誰でも安全に使えるようになった。『カリーブランド』はこのコートの改修だけではなく、管理も担当する。「ここオークランドに最初のカリーコートができたのは特別なことだ。子供たちに安全にプレーする場所と、大きな夢を与えられるといいね。僕は彼らの成長をサポートしたいんだ」とカリーは話す。
バックボードを彩るカラフルなグラフィティは、カリーのシューズにも取り入れられている。「デザインはストーリーへと繋がる。家庭とコミュニティ、一体感を表すデザインをバックボードとシューズに用いた。そのストーリーを意識することで、履く時の気分は上がるよ」とカリーは言う。『カリーブランド』の取り組みは、彼自身にモチベーションという形で還元されるというわけだ。
カリーコートの『002』はアンダーアーマーの本社があるボルチモアで今年の夏に完成する予定。屋外で誰にでも使えるカリーコートは、日本でも計画が進んでいるそうだ。『カリーブランド』は昨年末のローンチから、アメリカだけでなく世界各国で展開されており、チャリティ団体とのコラボレーションで地元の子供たちにバスケを教えるプログラムなどの活動がスタートしている。
カリーは言う。「僕が行動で示してきたことは、他の人たちにも支持してもらえると思う。僕たちの誰もが、次世代の人たちに良い影響を与え、何らかの形で恩返しができるんだ」
『カリーブランド』の商品を機能面やデザイン性を気に入って、あるいはカリーへのあこがれから購入するのもいいが、カリーの掲げるミッションに賛同して買うことにも意味がある。まだ立ち上がったばかりの『カリーブランド』だが、これが大きく成長すれば、カリーのミッションはそれに応じて前に進む。