「チームとして勝てたのが自分の中でうれしいです」
宇都宮ブレックスは1月23日、24日のホーム戦で千葉ジェッツと激突した。この対決の前、リーグトップの22勝5敗と頭ひとつ抜け出して並んでいた両チームの対戦とあって接戦が予想されたが、宇都宮が2試合ともに序盤から主導権を握って圧勝した。
この連勝に大きく貢献したのが喜多川修平だ。この頂上決戦の前まで今シーズン1試合2桁得点のなかった喜多川だが、23日は15得点、24日は13得点と、シーズンベストの暴れっぷりを見せた。
宇都宮は外国籍のレギュレーション変更もあって、オフシーズンに喜多川とポジションが重なる即戦力のLJ・ピークを補強。昨シーズンの時点でもリーグ随一のタレント集団だった2番、3番ポジションの層がさらに厚くなったが、その影響で喜多川のプレータイムは安定せず。例えば前回、千葉と対戦した10月17日、18日のアウェーゲームはそれぞれ3分17秒、6分20秒に留まっている。
それが今回は2日続けて15分以上の出場を果たす。前述の数字を残すだけでなく、24日は第3クォーターに千葉が反撃のきっかけとなりそうな3ポイントシュートを決めた直後のオフェンスで2度に渡って3ポイントシュートを入れ返し、千葉の流れをすぐに断ち切る勝負強さも光った。
「昨日に続いて自分たちのやるべきことをしっかりやって、その結果、千葉さん相手に2連勝できたのは大きかったと思います。チームとして勝てたのが自分の中でうれしいです」
24日の試合後会見で、喜多川はこう喜びを語り、自身が活躍できた要因を次のように分析する。「感触的にはシーズンが始まった時に比べると、落ち着いてプレーできています。ディフェンスでしっかりチームルールを遂行し、ミスをなるべく減らすことが最初に比べてできている。それで自分のリズムをつかめていると思います」
そして、普段のハードワークの積み重ねが調子向上に繋がっていると続ける。「ピーク選手につくなど普段から強度の高い練習ができている。それによって試合で落ち着いてできているなと思います」
「変なきっかけで落ちることもあるので一試合一試合が大事になってくる」
喜多川が復調の鍵に『落ち着き』を挙げたのは意外だった。なぜなら彼は百戦錬磨のベテランで、いつも冷静沈着に自分の役割を遂行するイメージが強いからだ。これまでのキャリアを簡潔に振り返っても、2015年には主将としてアイシンシーホース三河でNBL優勝を経験。そして翌年には琉球ゴールデンキングスのエースシューターとしてbjリーグ制覇を成し遂げ、NBLとbjリーグの優勝を達成した唯一の選手だ。そして宇都宮に加入した初年度の2017-18シーズンには3ポイントシュート成功率のタイトルを獲得している。
申し分のない実績と35歳の豊富なキャリアを誇りながら、落ち着きが欠けていたと課題に真摯に向き合う。この謙虚さと何よりもチーム一体となった戦いで勝てたことへのうれしさを強調する献身性は、喜多川が今も常勝チームでしっかり居場所を確保している大きな理由だ。この彼の人間性は、宇都宮らしい強固な一体感を醸成する手助けとなっているだろう。
これで宇都宮は地区首位争いで一歩抜け出したが、喜多川はそれでも気を引き締める。「今節はすごくチームとして良い試合ができたと思います。ただ、変なきっかけで落ちることもあるので今後も一試合一試合が大事になってきます。悪いところもあると思うので、そこはしっかり見つめ直して戦っていくだけです」
今回の連勝はこのまま宇都宮がリーグ1位の座を維持してレギュラーシーズンを終えた場合、ターニングポイントになったと後に総括されてもおかしくない。それと同時に、チーム随一のシューターが調子を上げる大きな契機になった2試合だったと、後に振り返ることになっても驚きはない。それくらい週末の喜多川は、強烈な存在感を発揮していた。