西川貴之

残り4秒で得たチャンス「準備はできていました」

三遠ネオフェニックスは広島ドラゴンフライズと対戦。大苦戦を強いられながらも食らい付き、残り4秒で西川貴之が逆転3ポイントシュートを決めた三遠が劇的な勝利を挙げている。

前日の第1戦では広島がジャマリ・トレイラーのファウルトラブルに苦しんだが、この試合では三遠のカイル・ハントが後半開始早々に個人ファウルが4つに。ここで広島は朝山正悟が3本連続で3ポイントシュートを成功させて一気にたたみかける。それでも試合を通じて三遠のヘッドコーチ、ブラニスラフ・ヴィチェンティッチはタイムシェアを徹底し、太田敦也と井上宗一郎をコートに送り出していた。実績のある太田はともかく、特別指定で加入したばかりの井上はこれが三遠でのデビュー戦だったが、プレータイムは8分でも強力インサイド陣を擁する広島を相手に身体を張り、流れの悪い時間帯で逆に点差を縮めて繋ぎの役割を果たした。

58-66で迎えた最終クォーター、三遠はハントとステヴァン・イェロヴァツをコートに戻す。2日連続の試合の第4クォーターは体力的にキツいもの。そこでベンチでしっかり休んだハントはゴール下で奮闘。イェロヴァツも巧みなカットで相手ディフェンスを崩し、3ポイントシュートも決めて三遠が猛追する。それでもハントとイェロヴァツの両方ともにファウルがかさむ状況で、ゴール下の肉弾戦になると一歩引かざるを得ず、トレイラーやグレゴリー・エチェニケにオフェンスリバウンドを強引にもぎ取られて苦しむことになった。4点差まで詰め寄った残り1分40秒、イェロヴァツがファウルアウト。反撃もここまでと思われた。

ただ、広島も問題を抱えていた。第4クォーターを任されたポイントガードはアイザイア・マーフィーと岡本飛竜。マーフィーは縦への突破力を生かし、自ら仕掛けてはズレを作ってパスを出して8アシストを記録。しかしリードを守るべき第4クォーターに三遠の望む早い展開に応じてしまい、終盤に接戦へと持ち込まれてしまった。そしてイェロヴァツ退場後の勝負どころで、岡本は良いオフェンスを組み立てられなかった。

こうして迎えたラスト22秒、2点ビハインドの三遠の攻め。ドライブで仕掛けるハントはエチェニケとトレイラーに2人がかりで止められたが、こぼれ球を岡田慎吾が抜け目なく奪って外で待つ西川貴之にパスを出す。ここで西川はトーマス・ケネディのファウルを受けながら逆転の3ポイントシュートを成功させた。わずかな残り時間を守り切った三遠が、85-83で勝利を収めている。

殊勲の西川によれば、最後のプレーは「鈴木達也とのピック&ロールからハントがアタックするか、僕にパスが出るか」というもので、その前のポゼッションで3ポイントシュートを外していたが「準備はできていました」とのこと。

「開幕からロスターが揃わなかったりケガ人も多い中でやってきて、勝てない理由をそれで片付けることもできるんですけど、そうせずに戦おうとここまでやってきて、最後までやれば難しい展開でも良い展開に変えられることを学べました」と西川は言う。

今も主力に故障者が出ていて、ずっとビハインドを背負ってファウルトラブルにも苦しむ展開でも誰一人としてあきらめずに戦い続けたことが、最後の逆転勝利へと繋がった。簡単なようで、これができるチームは決して多くない。三遠の指揮官、ヴィチェンティッチは言う。「試合中に『絶対勝つぞ』とは言いましたが、特別なことをしたわけではありません。毎日の練習で何をやるべきか全員がしっかり理解できている。選手が信じて戦ってくれたおかげです」