「みんなが40分間、集中力を切らさずに戦い抜きました」
アルバルク東京は、1月13日に行われた天皇杯3次ラウンドのサンロッカーズ渋谷戦を、田中大貴の決勝ブザービーターにより73-72で制した。
この試合、A東京は第2クォーター序盤に9点のリードを奪われるが、そこから盛り返して後半早々に追いつくと、あとはずっと僅差で推移する息詰まる攻防が続く。この激闘は残り1分を切ってからも続き、残り16秒にA東京は安藤誓哉のシュートで勝ち越すが、残り6秒にライアン・ケリーにゴール下でタフショットを決められ再びリードを奪われる。すでにタイムアウトは使い切っており、自陣エンドゾーンからの攻撃となった。
ここでA東京が選択したのは、大黒柱である田中にボールを預けること。ビッグマンのスクリーンなどコンビプレーを使うこともせず、田中の1対1に最後のチャンスを任せた。その田中は自陣からボールを運び、3ポイントシュートラインの数メートル手前から左側に加速。マークしていたベンドラメ礼生がバランスを崩して倒れると、田中も左に重心が流れ、打った後でコートに倒れるオフバランスの難しいシュートを沈め、A東京を劇的勝利に導いた。
「試合を通して激しい試合になりましたけど、みんなが40分間、集中力を切らさずに戦い抜きました。その結果、次の試合に進むことができることをうれしく思います」
勝利の喜びを語った田中は、最後のプレーをこう振り返る。
「タイムアウトもなかったですし、自分がボールをもらって攻めようと思っていました。ただ、どういう状況になるかはしっかり見ていて、最後に礼生と1対1になったので自分で打ち切ろうと思いました。左に行くのは礼生に読まれると思っていましたが、自分の方がサイズはあるので、ブロックされるとは思っていなかったです。なんとか間合いを作って最後のシュートを打てればいいと、ある程度のイメージは持っていました」
託した安藤誓哉、結果を残した田中大貴
残り6秒、タイムアウトなしでリードを許す絶体絶命の場面でも、チーム全体が落ち着いていたことが大きかったと田中は続ける。「相手に決められた後、すぐスローインをせずスペースを確保してからオフェンスを始められました。誓哉とコミュニケーションが取れていて、2人の中で自分がボールをもらってプレーをする形になりました」
この試合、田中はフィールドゴール7本中2本成功の4得点、3ターンオーバーと決して調子は良くなかった。一方の安藤はフィールドゴール11本中9本成功の18得点と、明らかに安藤の方がシュートタッチは良かった。たが、最後にチームの命運を担ったのは田中であり、その期待にしっかり応えた。
ちなみに、試合の最終盤に安藤は胸にグータッチをして田中を鼓舞していた。安藤は語る。「タイムアウト後、大貴さんに個人的に託す意味を込めて、何も言葉をかけずに拳だけ胸に当てました」
そして田中は、最後は思い切り良く打てたと振り返る。「試合を通して多くのシュートを打ててはいなかったです。フリースローも2本外しました。最後のシュートまでは良い状態でプレーできていなかったですが、逆に開き直って打てたのは良かったと思います。
今回の勝利はA東京にとって、ここまで苦しんでいるリーグ戦での巻き返しに大きな追い風となるものだ。また、どんなに苦しくてもここぞの場面でしっかり仕事を遂行する、タレント集団のA東京にあっても田中が絶対的な存在であることの理由をあらためて証明する一戦だった。
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