田中大貴

2連覇を達成し、昨シーズンもリーグ最高勝率を達成したアルバルク東京だが、今シーズンは開幕から27試合を終えた時点で15勝12敗と波に乗れずにいる。常に勝率7割をキープしてきたチームにとってこれは異常事態と言えるが、勝ち続けてきたからこそ難しいと田中大貴は言う。うまくいかない理由、今後の上昇に向けて何をするべきなのか。田中に現在の心境を聞いた。

「本音を言えばもうちょっと上のところにいたかった」

──過去には元旦にも試合がありました。世間とはまた違った生活を送られているかと思いますが、年末年始はどのように過ごしましたか?また、お正月らしいことは何かされましたか?

レギュレーションが変わって大学生があまり天皇杯に出場できない状況かもしれませんが、大学1年生の頃から1月は天皇杯というイメージがあって、その頃から自分はあまり正月を感じたことがないんです。お雑煮も食べてないですし、年越しそばを食べたくらいです。

正直なところ1月1日が新年という感じがしないんですよね。やっぱりシーズンが終わって、その年が終わったなという感じが強いので。正月ぐらいはゆっくりしたいなという思いはどこかに持ちながらも、新年1発目の試合が終わって何日か休んで、今はそこから天皇杯に向けての準備をしています。

──ではここまでのシーズンを振り返りたいと思います。現在15勝12敗という成績はファンやメディアも想定外でした。田中選手自身はこの数字をどのように捉えていますか?

順位的に見ると厳しい位置にいます。東地区の場合は1つの負けだったり、レギュラーシーズンの単なる1試合かもしれないですけど、それが後々に響いてくるというのはここ何年間かで分かっていたので、本音を言えばもうちょっと上のところにいたかったです。それはチームメート全員が思っている事だと思います。

──数字を見ると平均失点が増えていて、特にディフェンス面で苦戦しているように思いますが、ご自身はどのように感じていますか?

数字がすべてを示すとは思っていないですが、ただ自分たちが今までやれていたことができていないとは感じています。例えば簡単なターンオーバーをしないとか、相手にファストブレイクを出されない、オフェンスリバウンドを取られないとか。そういう部分である程度高い数字を出せていたと思うんですけど、今はそういうやってはいけないことが出てしまっている。安定していなかったり、それが今この位置にいる理由の一つだとは思います。

連覇して去年もリーグ最高勝率になったことで、当然相手も対応してきます。ちょっと難しい話になりますが、スカウティングされて読まれてうまくいかなかった時でも自分たちが最低限やらないといけないことがあります。それができていなかったり、我慢し切れないというのが大きいのかなと思います。自分も今までと違って簡単に失点してまう場面が多いですし、ここは問題かなと。

田中大貴

「ディフェンスが良いチームが優勝する」

──こうした小さな変化は、周りのチームのレベルが上がったからなのか、それともA東京のスタンダードが下がったからなのか、どちらでしょうか?

両方だと思いますね。正直、スタンダードが下がったという言い方はあまり好きじゃないですけど、徹底はできていないと思います。今まで結果を出しているから今年も結果を出せるというのは大間違いで、そこの危機感は持っていました。レギュレーションの変化も踏まえて、簡単にいくと思ってはいなかったですけど、勝率や数字だけを見るとうまくいっていないですね。今までにこういう状況になったことがないので、重く受け止め過ぎてしまっている部分もあるんじゃないかと思います。

──個人的な意見ですが、デション・トーマス選手の部分でもう少しイニシアチブが取れるのではと思っていました。誤算と思える部分はどこかありますか?

これが悪い、これが上手くいっていないという考えは本当はあまりしたくないです。ただ、新型コロナウイルスに感染したり、シーズン序盤に外国籍選手が入国できずに開幕したりというのは少なからず影響はあったと思います。

トーマス選手が欧州で有名だからと言っても、一緒にやるメンバーもシステムも違います。向こうでやっていたパフォーマンスをこのチームに入ってすぐに出せるかというのは、簡単なことではないと思います。ウチは練習を繰り返して積み重ねて完成度を高めて行くチームなのでなおさらでしょう。

──田中選手個人に目を向ければ、高値安定した数字を残しています。その中でチームの成績が比例しないことで葛藤したりすることはありませんか?

見てる側とやっている側の意識の違いもあると思うんですけど、自分ではそこまで安定していると思っていないです。ウチのチームは誰かが20点、30点取って勝つスタイルではないですが、今の自分の心境からすると自分や安藤(誓哉)だったりアレックス(カーク)がそれぐらいのパフォーマンスをしないと、自分たちのゲームに持って来れないイメージが強いです。

それと同時に、自分たちはディフェンスで優勝してきたと思いますし、ディフェンスが良いチームが優勝すると思っています。自分たちメインの選手がもう1段階上のパフォーマンスをして流れを持ってきて、チームディフェンスを改善すれば結果はついてくると思います。

田中大貴

天皇杯を「良い流れを持ってくるための大会に」

──リーグ戦も大事ですが、先に天皇杯がやってきます。どのようなスタンスで挑みますか?

良い流れや良い雰囲気というのは確実にあると思っていて、それを持ってくるきっかけになるのが天皇杯だと思っています。その戦いがこれからのリーグ戦に繋がっていくと。うまくいっている時は簡単ですが、うまくいかない時にどうするかというのが大事で、そこが今チームに問われている部分じゃないかなと思います。

レギュラーシーズンの試合とは違い一発勝負なので、当然ですが勝ちにいきますし、良い流れを持ってくるための大会にしたいです。チャンピオンシップでどれだけ勝負できるがが大事ですが、そのためにはやり続けていくことしかできません。うまくいかないから、あまり勝てないからといって途中で止めたり、バラバラの方向を向くのは一番やってはいけないことだと思います。本当にやり続ける、それも一つのチームの力だと思うし、そこが今年試されていると思って、残りのシーズンもやっていきたいです。

──では最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。

年が明けて最初の試合では、ファンの皆さんが会場に足を運んで試合を見てくださっている姿を見て、こちらもこういう状況だからこそ勝つ姿を見せたいと思いました。自分たちも今まで優勝してきたチャンピオンチームとしてのプライドがあり、ファンの皆さんも応援しているチームが優勝チームなんだという思いがあると思います。ファンの皆さんの思いのためにも、チームを上向かせてどんどん成長していけるようにやり続けるので、一緒に戦ってほしいです。会場で試合が見れるかどうかも分からないですし、難しい状況が続きますが、何とかパワーを届けていきたいと思っています。気持ちを新たに、やるべきことを再確認して、良い年にしていきたいです。