192cmで走力とフットワークに優れ、メンタルの強さも備える
U15世代の日本一決定戦『Jr.ウインターカップ』の初代王者となった四日市メリノール学院中学校(三重)を大黒柱として牽引したのが福王伶奈だ。192cmの恵まれたサイズに走力、フットワークにも優れる彼女は今大会、1回戦でわずか13分52秒出場で36得点の鮮烈デビューを飾った。
その後も不戦勝となった2回戦を挟み3回戦で23得点、ベスト8で37得点、ベスト4で30得点と大暴れ。2日連続のダブルヘッター最後の試合となる決勝の京都精華学園中学校は、福王をフィジカルで上回る留学生ディマロ・ジェシカ・ワリエビモ・エレとのマッチアップに苦戦し8得点に留まったが、身体を張った守備で大会得点王(平均31.2得点)の相手を19得点に抑え、チームの逆転勝利を導いた。
福王は優勝の喜びを語る。「本当に途中、何度も無理だ、負けると思っていて、それがまさか逆転で優勝できるなんて思ってもいなかったです。ただひたすらにうれしいという気持ちとともに、支えてくれた仲間や先生方、応援してくれる保護者の方たち、他のメンバーに感謝の気持ちしかないです」
スタッツ的には不発だったが、福王の可能性はむしろ高さで支配できなかった決勝戦でこそ見えた。インサイドだけでなく、アウトサイドからも隙があったら臆せずにシュートを狙っていく。また、これまでのようにプレーできなかった第1クォーターで、精神面でも発展途上の中学生ならそのまま最後まで崩れてもおかしくない。しかし、後半に立て直すメンタルの強さを見せてくれた。
それは周囲のサポートがあってこそと彼女は強調する。「自分は何度も留学生の子にやられていて、もう本当に何度もあきらめようと思いました。ただ、その度に仲間や先生方が支えてくださって、自分一人では絶対にここまで留学生と戦えなかったです」
「あの子は日本の宝だと思います」。
このように福王を評する稲垣愛ヘッドコーチは、中学3年間での成長ぶりをこう称える。「将来は多分、日の丸を付け、海外を相手にしても負けない選手になれる子です。とても真面目で、先頭をきって走る能力があります。そしてフックシュートを覚え、3ポイントシュート、ドライブと一生懸命練習しています」
「これから海外の選手とプレーをするにあたってはメンタルと体力が一番の鍵だと思っています。やっぱり初めはやられてしまい面を食らったわけではないですが、ちょっと心が折れそうな時もありました。ただ、そこで自分自身の力で持ち直してくれたので、それはすごく大きかったです。今日はよく踏ん張ってくれました」
「外でも中でも活躍できるようになりたいです」
高校でのさらなる飛躍が楽しみな福王は、今大会を次のように振り返る。「決勝の京都精華戦までは、シュートを打つ時にボールを下げないことができていました。決勝では今まで練習してきたドライブや3ポイントシュートを打てましたが、バックシュートを外し、3ポイントシュートも入らなかったです。これからはドライブやいろんなシュートのバリエーション、3ポイントシュートを練習して、外でも中でも活躍できるようになりたいです」
また、今大会も多くのメディアから取材を受けており、自身への注目度について「試合が始まる前まではすごくプレッシャーになります」と語る一方で、「試合中は試合のことしか頭にないので、どちらかと言ったらそこまでプレッシャーにはなっていないです」と芯の強さを見せる。
実際、決勝前のウォーミングアップの時、BGMでBTSのヒットソング『Dynamite』が会場に流れると「BTSがすごく好きなので」と曲にあわせて踊るなど、大舞台でも物怖じないタフさを持っている。
恵まれた身体能力だけでなく、心技体の3つでバランス良く成長を続ける福王が、これからどんな道のりを歩んでいくのか。次代の日本バスケ界を担う逸材として、4月からは高校生になる彼女のプレーがより楽しみになる今大会での活躍だった。