ファクンド・カンパッソ

ハンドラーとしてクラッチタイムにチームを操る

ファクンド・カンパッソは過小評価されていた。NBAは世界のバスケットボールのトップで、南米出身の選手がヨーロッパでキャリアを積んでも「ここで通用するかは別」という見方をされる。ナゲッツは昨シーズンのカンファレンス・ファイナルに進出したチームで、各ポジションに実力者が揃う。アルゼンチン代表の絶対的なポイントガードであるカンパッソも、開幕時点での予想ではシューティングガードの2番手、あるいは3番手と見なされていた。正ポイントガードのジャマール・マレーは35分近くプレーし、残りはモンテ・モリスが出る。カンパッソはシューティングガードのギャリー・ハリスの2番手をPJ・ドジアーと争うものと見られていた。

実際にそんな立ち位置で、限られたプレータイムと本来とは違う役割を与えられたカンパッソだが、ここに来てプレータイムを勝ち取り、パスだけに留まらないオールラウンドな真価を発揮しつつある。

現地1月3日と5日に行われたティンバーウルブズとの2試合は、カンパッソにとってのブレイクスルーとなった。

3日の試合では5本の3ポイントシュート成功を含む15得点、さらには3スティールを記録。スタッツに残る成果を出した。この試合を終えてカンパッソは「気分が良いね。僕はオフェンスでもディフェンスでも100%の力を出そうとしている。激しくディフェンスして、オフェンスでは自分のシュートを打つ。正しい判断をすることで、どんなチャンスもモノにしたいんだ」と語っている。

マレーは「彼がシュートを打つ時はベンチが盛り上がる。一生懸命にプレーしていることをみんな知っているから応援したくなる」と、またヨキッチは「ファクはゲームチェンジャーだ。願わくばこの活躍をずっと続けてほしい」との言葉でカンパッソを称える。マイケル・マローンは「3ポイントシュートだけじゃなく、オンボールのディフェンスも見事だ。攻守どちらでも仕事ができるのは素晴らしい。これが彼の本当の姿だ」と語った。

だが、本当の意味で『本当の姿』を見せたのは5日に行われた2試合目だった。26分のプレータイムで11得点1リバウンド2アシスト。スタッツは特別すごいものではないが、コート上の支配力はすさまじいものがあった。前半のリードを失い、接戦で推移していた第3クォーターの終盤に投入されたカンパッソは、本来のハンドラーの役割を与えられてゲームを作った。アルゼンチン代表で見せていたものと同じ、前から当たる激しいプレッシャーは、ウルブズのプレーメーカーであるディアンジェロ・ラッセルに仕事をさせなかった。ここからオフェンスにも火をつけて、第4クォーター開始1分からの4分間で13-0のランを演出。まさに『ゲームチェンジャー』の仕事ぶりだった。

結局、カンパッソは接戦の試合での第4クォーターにフル出場。マレーと同時にコートに立ちながら、最後までメインのハンドラー役を担った。マイケル・ポーターJr.が新型コロナウイルスのプロトコルにより欠場となったことで回って来たチャンスで、見事に結果を出した。

どんな選手も新しいリーグに順応するまでに少なからず苦労はするものだが、彼はわずか5試合の試運転でアジャストしたようだ。

パワーフォワードのジャマイカル・グリーンも調子を上げており、先発のポール・ミルサップに負けない働きをしている。こうなるとヘッドコーチにとって、どの選手にどうプレータイムを与えるかは悩ましい。マローンは言う。「誰だって長くコートに立ちたい。どの選手も調子を上げているが、スタートで起用できる数には限りがある。試合を通じて高いレベルのプレーをどう保つかが大事だ。ファクは明らかにもっとプレーすべきだろう。チームを走らせ、プレーメークして、ディフェンスしているんだからね。ただモンテもPJもいる。ベンチから出る選手がエナジーを与えることもすごく大事だ。ウチにはタレントが揃っているが、全員が力を合わせて勝ちにいくことが何より大切なんだ」

1勝5敗スタートとなったが、カンパッソの活躍でウルブズに連勝して一息ついた。ヨキッチとマレーを始め、チームの中心となる選手個々は好調をキープしている。このタレント集団をいかにチームとして機能させるか。指揮官にはうれしい悩みが続きそうだ。