「ケガなく終えられて良かった、ホッとした気持ち」
川崎ブレイブサンダースは、2020年最後の戦いとなった琉球ゴールデンキングスとのアウェーゲームを1勝1敗で終えた。26日の試合は序盤から主導権を握り、第3クォーター終了時点で18点のリードを奪う危なげない勝利で連敗を3でストップ。しかし、翌日の年内最終戦は、接戦で推移しながら終盤に突き放されて連勝を逃した。
川崎のリーダーである篠山竜青は、この2連戦を次のように振り返る。
「京都に連敗してからチームのベースを見つめ直さないといけない中、琉球戦の前の1週間は良い練習ができました。それを昨日は40分間遂行できましたが、80分間遂行するソリッドなところはまだ見せられなかったです。アウェーで2連勝するのは難しく、琉球さんは本当に強いチームです。ただ、11月にホームで連敗した分はやり返したかったです。たくさんのファンの皆さんが応援してくれていたと思いますし、2020年最後の試合は勝って終わりたかったのが本音です」
連勝はできなかったが、敗れた2試合目においても収穫はあった。前日に36得点と大暴れだったニック・ファジーカスがファウルトラブルに陥るなどリズムを崩し、フィールドゴール16本中6本成功の15得点に終わった中でもディフェンスで粘って食らい付いた。そこには篠山も「第3クォーターでしっかり我慢してついていき、第4クォーターも4点から8点差の間で繋いでいけたのは、辛抱強さが出てきたと思います」と手応えを得ている。
ただ、それと同時に改めて課題も浮き彫りになった。篠山はこう続ける。「ただ、そこからひっくり返していくにはゲームコントロールの部分でも新たな課題が見つかりました。そしてフリースローのミス、昨日から続くイージーシュートを外したりする簡単なミスについてはもう一回、日常から見つけなおさないといけないです」
調子が良い時こそ「サインを見逃さないように」
年内最後の試合を負けて終わってしまったことには当然のように悔いは残る。ただ、篠山個人でいうと、1年前となる2019年最後の試合はレイアップを打った後の着地で体勢を崩して左肘関節脱臼を負い、3カ月の長期離脱を余儀なくされた。それだけに故障なく2020年を終えられたことに安堵の思いがある。
「年末に大きな怪我をしてしまうのが自分の中で少なからず残像としてあります。去年の脱臼だけでなく、脛の骨折(2014-15シーズン)もそうでした。チーム状況的にはなかなか波に乗れていないですが、チームと関係ない自分の中だけのものでは、年内をケガなく終えられてよかった。ホッとした気持ちはあります」
好事魔多しとならないように、この1カ月は細心の注意を払って過ごしてきた。「12月になって3ポイントシュートも入ってきて、調子が上向いてきました。そういう時こそ危ないと、戒めとしてケアとかストレッチにより集中しました。『調子が良いからこのままでいいじゃん』と、いろいろなサインを見逃してしまうことがないように。ちょっとでも張りとか違和感があったら徹底的にケアするなど、自分のコンディションを気にしていました」
故障なく無事に2020年を終えられた篠山だが、バスケットボールだけでなくスポーツ界全体でいうと、今シーズンは例年以上に怪我が多いイメージは強い。特に女子の皇后杯では『日本のエース』である渡嘉敷来夢が右膝前十字靭帯断裂の重傷を負ったニュースは大きな衝撃を与えた。
ともに日本代表を牽引するリーダーで親交もある渡嘉敷の負傷について、篠山は「ショックです」と沈痛な表情を見せる。
「特に女子は東京オリンピックでメダルを狙っていく中、本橋菜子選手(11月の代表合宿中に前十字靭帯を損傷)もケガをしてしまいました。『東京の次を目指して』とは簡単に言えないですし、苦しい気持ちになります。ただ、あの中で皇后杯を優勝するENEOSは本当に強いチームだと、単純に思いました」
「しっかり上向きになれるようにあがいていきます」
コロナ禍による様々な困難に直面にした2020年が終わった。「2021年は新たな気持ちで新年を迎えて三河戦の準備をしたいと思います」と語る篠山が今、川崎ファンにあらためて伝えたいのは、今シーズンのチームスローガンである『UN1TE』が示す想いだ。
「2020-21シーズンをここまで消化してきて乗り切れない部分があります。その中でケガ人とか連敗とかいろいろなことが起きましたが、こういう時こそ常に一人ひとりがベクトルを自分に向けて、何が足りないのかと考えなければいけない。そして川崎はそれができるチームです」
「特にとどろきアリーナで良い試合を見せられていないのは分かっていて、それはすごくもどかしい気持ちです。チームが、これからしっかり上向きになれるようにあがいていきます。だから2021年も僕たちを信じてついてきてほしいですし、一緒に戦ってほしいです」