ディフェンスを前面に押し出す我慢の展開、SR渋谷が競り勝つ
アルバルク東京とサンロッカーズ渋谷の今シーズン初対戦。最後までもつれる熱戦を制したのはSR渋谷だった。
序盤は両チームとも激しいプレッシャーディフェンスをかいくぐって、第1クォーターからアレックス・カークが9得点、ライアン・ケリーが10得点と取るべき選手にボールを集めて得点を伸ばしていく。デション・トーマスが右コーナーの3ポイントシュートを確実に決めれば、ジェームズ・マイケル・マカドゥが軽快なステップでゴール下の得点を返す、互いに譲らない序盤となった。
それでもA東京は第2クォーターのオフィシャルタイムアウトの時点でチームファウルが5に到達。須田侑太郎、小酒部泰暉と思い切りの良いプレーを見せる2人がファウルトラブルでベンチに退くと、SR渋谷がインテンシティを上げて猛追。伊佐勉ヘッドコーチは「第1クォーターを終えてフィジカルの部分で負けていたので、戦うことを指示しました。フィジカルとアグレッシブにやるチームだということをみんなが思い出したことで強度が上がったと思います」と振り返る。
勢いで上回ったSR渋谷は、強引にインサイドを割った渡辺竜之佑のフックシュートで追い付く。ここからリードチェンジを繰り返す展開となり、38-37とSR渋谷がリードして前半を終えた。
後半もSR渋谷のペース。というよりA東京が『らしさ』を見せられない。選手もボールも動かず、カークが無理な体勢のまま勝負に行かざるを得ないシーンが目立った。カークはしぶとくシュートを決めていくものの、形が良くないためすべては決まらない。リズムも悪いので、他の選手が外から放つシュートはことごとく外れた。そんな状況で一時は9点のビハインドを背負ったが、チームとして噛み合わない中でも小酒部、津山尚大と単発ではあるがアグレッシブなプレーでSR渋谷の流れを断ち切ることで食らい付く。
しかし、最後はディフェンスでSR渋谷が上回った。オフィシャルタイムアウトを迎えた時点で63-65と2点ビハインドを背負っていたが、そこから前からの激しいプレッシャーを続けるとともに、ピック&ロールに対してもマークマンがファイトオーバーで食らい付くことでズレを作らせない。またインサイドにボールが入ればカークを囲い込み、簡単なシュートを打たせず、フリースローでしか得点を許さない。一方で攻めではケリーがオフェンスリバウンドを拾ってダンクで押し込み、山内盛久がカークの伸ばす腕をフワリと超えるフローターでリードを奪う。時間のない中で広瀬がルーズボールに飛び込んで貴重なポゼッションを奪うなど、SR渋谷が僅差のまま逃げ切るかに思われた。
勝利を決定付けるシュート「チームで攻めることができた」
3点ビハインドで迎えたラスト20秒、安藤誓哉が時間を使い切ることなく思い切って放った3ポイントシュートをねじ込んでA東京が追い付いたが、タイムアウトを取ったSR渋谷は最後の攻めをケリーに託す。そのケリーがきっちりとファウルを誘い、このフリースローを2本沈めて勝負あり。安藤がハーフコートショットを試みるも決まらず、SR渋谷が73-71で勝利した。
最後のケリーのシュートについて、伊佐勉ヘッドコーチは「ディナイでパスが出せなかったが、他の4人がスペーシングしてライアンがアタックできた。チームで攻めることができた」と、土壇場で勝利を引き寄せたオフェンスを振り返った。一方でA東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは、「ファウルが使える状況なのに使えなかった」と、対応を悔やんだ。
A東京はリズムに乗れない中で踏ん張ったが、勝利には至らず。これでシーズン再開から1勝4敗。田中大貴に竹内譲次とチームを引っ張るべき日本代表コンビに元気がないのは気がかりだが、パヴィチェヴィッチは「譲次についてはローテーションに変化があるので、それに慣れるのが第一。2人とも日本代表の活動があり、なかなか我々のチーム練習にフルで参加できていない。その結果、いつも通りの彼ららしいプレーが見られないのではないか」と語る。この試合に関してはチームにエナジーを与える須田がファウルトラブルで11分の出場に留まったのも痛かった。
SR渋谷は5連勝。伊佐ヘッドコーチは「A東京さん相手に毎シーズン良いところまで行くんですけど勝てなかった。そういう意味では、この時期の1勝としては非常に良いものでした」と、チームにとっても一つ手応えを得られたことを喜んだ。
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