ハーパージャン・ローレンス・ジュニア&松本宗志

去年の福岡第一は、河村勇輝に小川麻斗、クベマジョセフ・スティーブと『超高校級』の選手を揃えて圧倒的な強さを発揮した。スタメンは全員が3年生で、ハーパージャン・ローレンス・ジュニアは控え選手、松本宗志はスタンドから応援していた。その2人が今はキャプテンとして福岡第一を引っ張る。彼らなりに福岡第一に入学してから成長のステップを踏んできた。十分な自信を持って高校バスケの集大成、ウインターカップ3連覇に挑む。

「福岡第一の歴史でも3連覇はやったことがない」

──高校バスケの集大成となるウインターカップがいよいよ近づいています。どんな気持ちで臨みますか?

ハーパー ウインターカップを2連覇していて、自分たちの代では3連覇という大きな目標があります。福岡第一の歴史でも3連覇はやったことがないので、しっかり勝ち取れるよう頑張りたいです。

松本 僕は2年生まで試合に出ていなくて、先輩たちがウインターカップ連覇を達成してくれました。自分たちの代で3連覇というチャンスをいただいたので、つかみにいきたいです。

──福岡第一に入学してから今までを振り返って、自分が一番成長できたと思うタイミングはいつですか?

ハーパー 天皇杯の千葉ジェッツ戦で試合に出してもらって、1回だけですけどプロの選手を相手にナイスディフェンスができて、それがすごく自信になりました。自分の武器はディフェンスだと分かったので、それはすごく良かったです。

松本 僕は入学してからの2年間でBチームも経験したし、練習試合には出してもらったんですけど公式戦には全然出れなくて、その間に自分の向き合う時間がありました。その期間に成長できたのが良かったです。

──新型コロナウイルスの影響で大変な1年になりました。一番大変だったのは何ですか?

ハーパー 一番ヤバかったのは練習なんですけど、『33秒』を40本走ったことです。オールコートを3往復、それを4種類で5本ずつの20本のランメニューなんですけど、20本走って先生のところに集合したら「その程度で満足なのか」と言われて、僕たちは一生懸命走ったつもりだったんですけど、マジかと思ってもう20本走りました。40本走った後は誰も一言もしゃべれず、僕もダウンして、気付いたらみんな帰ってました。

松本 ラインをしっかり踏んで33秒以内で走ることはできていたと思うんですけど、キツい時こそ頑張れるようにみんなで声を出す雰囲気作りが足りなかったんだと思いました。でも聞いた話だと先生も本当に40本走るとは思っていなかったみたいで、「こいつらやりきったな」と感心していたみたいです。そういう意味では、やりきれて良かったです。

ハーパージャン・ローレンス・ジュニア&松本宗志

松本「試合に出ていること自体が楽しくてニヤニヤする」

──今年はハーパー選手がゲームキャプテン、松本選手がチームキャプテンです。キャプテンに指名された時の気持ちは?

ハーパー 去年のウインターカップの途中で麻斗さんに「来年はキャプテンだぞ」と言われました。驚いたんですけど、やるからにはチームをまとめなきゃいけないと覚悟を決めました。チームキャプテンは僕が松本くんを指名しました。3年生の中で一番まともなので、2人で一緒にこのチームを引っ張りたいと思いました。

松本 自分も心の準備はしていました。去年の先輩はすごい人たちばかりだったので、プレッシャーもあったんですが、ジュニアと一緒にチャレンジしよう、何事にも挑戦しようという気持ちで、2人で頑張っていくことに決めました。

──松本選手が真面目で、ハーパー選手は明るい感じ。2人だからこそ良いバランスが取れている気がします。

松本 僕も本当にその通りだと思っていて、真面目な2人だったら揃ってガチガチに固まっていたと思います。ジュニアは練習中に良い雰囲気を作ってみんなを引っ張るので、ジュニアがいることで自分もバランス良く頑張れていると思います。

ハーパー 僕は沖縄出身なので「なんくるないさ」なんですよ。なんとかなるさ、って感じでいつもやっています。天皇杯でも17点差を追い付いて逆転した試合があったんですけど、その時も僕はずっと「なんとかなるっしょ」と思っていたら案の定、最後は(キエキエトピー)アリのブザービーターで勝てました(笑)。

──今年の福岡第一は2桁のビハインドを背負っても取り戻せるメンタルの強さ、爆発力があります。

松本 前半にあまり良いプレーができずに暗い雰囲気でも、後半に追い上げる場面で僕は楽しすぎて顔に出ちゃうんですよ。大濠戦もすごく楽しくて、ニヤニヤしながらプレーしてました。僕は2年生まで全然試合に出れなかったので、試合に出ていること自体が楽しくて、特に強いチームと試合をして負けている状況でも、ジュニアとかアリが声を出してくれて、行くぞという雰囲気が今年の福岡第一にはあると思います。負けてる試合でも暗くならずにゲームを進められるので、その楽しい感じは武器だと思います。

ハーパー 東山と試合をした時も主力が3人いない状態で12点負けてたんですけど、その時もなんくるないさ精神でした。ウチが後半に強いのはどのチームよりも練習で走っているからで、走り負けない力は絶対にあると思っています。

──今年の福岡第一は選手層が厚い中でも、キーマンになるのはハーパー選手とアリ選手だと思います。その自覚はありますか?

ハーパー キャプテンとエースとして、という意識はあります。いざとなったらアリと僕のピック&ロールで点を取ります。僕はいざとなったらエースとしてやるタイプなので、チームをまとめる役割は松本くんに任せます。

松本 でも、ジュニアも意外と練習中にみんなをまとめるのに協力してくれるので、そういう部分では助かっています。Bチームの練習はどうしてもAチームと比べて質が落ちてしまうのですが、そこでダラッとしているようなことがあればハーパーがキツく言ったりします。

──去年はあれだけのメンバーがいて、今年はそれより劣ると見られていると思います。そうじゃないところはどこですか?

松本 去年はガードの2人と(クベマジョセフ)スティーブさんが中心のバスケットでしたけど、今年は選手層が厚くて、誰がでても堅固なディフェンスから速攻ができます。それが一番の強みだと思います。層が厚い分、出ている選手はエネルギッシュに、アグレッシブにプレーできるし、序盤からバチバチにディフェンスをやって、相手の疲労を溜めさせて後半に点差を広げるゲーム展開にできたらいいと思います。

ハーパージャン・ローレンス・ジュニア&松本宗志

ハーパー「福岡対決を実現させて、最後は優勝で終わりたい」

──ウインターカップの組み合わせ抽選が決まりました。対戦してみたいチーム、選手を教えてください。

ハーパー 僕は沖縄出身なので、地元の豊見城とやりたいです。豊見城のキャプテンは中学校が一緒で、コザ中のキャプテンでした。電話でも「やりたいね」と話していたんですけど、反対の山になってしまったので「俺たちは上がるからお前たちも上がってこいよ」と言っています。対戦してみたい選手は、プレースタイルが似ていると言われる開志国際のジョーンズ大翔くんですね。

松本 ネットのコメントで、メインコートで明成と第一が当たって明成が勝つぞ、みたいに書かれているのをよく見ます。全体的に大きくてハーフコートで、って僕たちとは逆のバスケじゃないですか。そこで福岡第一らしいバスケで勝ちたいです。

ハーパー あとはやっぱり大濠ですね。この前(平松)克樹と「去年みたいに決勝の舞台で福岡対決がしたいな」と話したんです。僕たちも負けたくないし、大濠にも勝ち上がってきてほしい。福岡対決を実現させて、最後は優勝で終わりたいです。

松本 大濠さんは僕たちよりも厳しい山に入っています。そこを乗り越えて決勝まで来たら、本当に強いチームになっていると思います。そこは自分たちもしっかり上げていって、レベルの高い決勝戦が実現できたら良いですね。

──ウインターカップまでの残り少ない時間で、チームをどう高めていきたいですか?

ハーパー ディフェンスは結構できていると思っています。でも、リバウンドは身長が小さいから相手にセカンドチャンスをやられる部分があって、そこは直さないといけないです。去年と比べてできていないのはオフェンス面で、去年は河村(勇輝)さんがピックする時は周りが動いて、そこで周りの選手が活躍していたんですけど、今年はシューターが多くて外で構えることが多いので、チームオフェンスの動きはもっと強化すべきだと思います。

松本 ジュニアがアリとピックしてゲームを組み立てるのは変わらないと思うんですけど、そこで自分たちがしっかりスペーシングして、フロアバランスを整えて、ジュニアがピックしやすいように、アリが中でもっとプレーしやすいようにしたいです。自分たちが中で合わせるのは身長的に少し厳しいんですけど、試合の中で1本でも出せれば相手が中に寄らざるを得ないので、そういう中と外のバランスを上手く取るように考えてプレーしたいです。

──ウインターカップでは、個人とチームのどういう部分に注目してほしいですか?

松本 チームキャプテンとして引っ張る姿と、ディフェンスの要としてマンツーマンだったりプレスだったり、泥臭いプレーで試合の流れを変えたりチームを勢い付けるところです。去年の福岡第一のイメージが強いと思いますが、今年も魅力があるチームになっているので、やっぱり速い、やっぱり強いというところを見ていただければと思います。

ハーパー 個人としてはガードではなかなか行けないダンクに行くので注目してください。チームとしては去年と変わらず堅いディフェンスから速攻を出せます。去年の方が強いと言われていると思うんですけど、自分たちは去年より強いと思っています。その姿をウインターカップで見せたいです!

松本 勇輝さんには「プレッシャーもあるだろうけど自分たちのバスケットを貫き通してほしい」と言われています。今年も自分たちの色をしっかり出して、そして優勝します。