和歌山信愛

和歌山信愛はウインターカップ15年連続22回目の出場を果たす和歌山県の強豪校だ。それでも学校の方針は『勉強をしてこそのスポーツ』であり、選手も文武両道で日々励んでいる。ウインターカップではベスト8を目標に掲げているが、ここ2年間は初戦敗退。そのため「一試合一試合を大事に、思いっきりいきたい」と、チームを引っ張る3年生の佐本優帆と阿部真子は意気込む。

「一緒にバスケをする仲間の存在は大事」

──まずは自己紹介をお願いします。

佐本 佐本優帆です。出身中学は大阪の高槻第六中学校です。中学の時は府選抜に入っていて、2年生の時はジュニアオールスターに出て優勝しました。ポジションはガードです。阿部さんがメインガードで自分はフォワードみたいな動きをしているんですが、ガードで記載されているのでガードと言っています(笑)。ドライブからのジャンプシュートが得意です。

阿部 阿部真子です。大阪の和泉中学校出身で、3年生の時に府大会で3位になりました。ポジションはガードで、得意なプレーは前でプレッシャーをかけてディフェンスで当たることです。

──お隣とは言え、他県の和歌山の学校に進学しました。和歌山信愛を選んだ理由を教えてください。

佐本 私は違う学校と悩んでいたんですが、中学校の時のチームメートが一緒に行こうと誘ってくれたのがきっかけでした。やっぱり一緒にバスケをする仲間の存在は大事だと思うんです。いろいろな学校を見たけどあまりピンと来なくて、それやったら友達と一緒に頑張りたいなと思って和歌山信愛に来ました。

阿部 私はもともと高校ではバスケをする気がなかったんです。なので地元の公立高校に通おうと思っていた時に、信愛が声をかけてくださって練習に行ってみたら、学校がすごくきれいだったので決めました(笑)。

──高校でバスケをするつもりがなかったとしたら、入学後に周りの選手とのギャップを感じませんでしたか?

阿部 最初の方はすごく感じました。みんな本気でバスケをしに来ている子たちなので。自分も本気でバスケをするつもりで来たけど、ポテンシャルの違いとかをすごく感じたし、人見知りなので最初は全然しゃべれませんでした。でも、その時に同期がすごく声をかけてくれたことで「一緒に頑張れる気がする」と思えて、ここまで頑張ってきました。

佐本 本当に最初は全然しゃべれなかったんですよ。阿部さんと同じ中学から来ている子がもう1人いるんですけど、ずっとその2人でいて。同期は10人いますが特に阿部さんがずっと壁を作っていて、しゃべれないし怖いし、どうしようみたいな(笑)。

──どうやって阿部選手の壁を崩していったのですか?

佐本 とりあえず話しかける(笑)。反応はしてくれたので、とにかく話しかけて後は時間が解決してくれました。でも、練習中は話す機会が多くなるので、バスケットがあれば大丈夫ですね。

和歌山信愛

「全国の空気感を練習中から出していく」

──では、阿部選手から見た佐本選手はどんなキャプテンですか?

阿部 すごく頼れるキャプテンです。同期に対してもですが一人ひとりにすごく向き合ってくれます。キャプテンになってからは特に1年生の一人ひとりにアドバイスをしに行ったり、悩んでいる子がいたら声をかけたりして、みんなを引っ張っていけるキャプテンやなと思っています。コート上ではいつも声を出してプレーしていますし、佐本さんのドライブでチームに勢いがつくことが多いです。でも、すごくおっちょこちょいで忘れ物が多いです。なんでも忘れます(笑)。

佐本 もっと悪いところがあるので言われなくて良かったですが、ヒヤヒヤしました(笑)。

──阿部選手はどんな副キャプテンでしょうか?

佐本 とにかくストイックです。朝は自主練習なんですが早くに来て毎日続けていますし、どんなことも継続できる人です。あと自分を持っているので、みんなが感情任せに「Go Go!」となった時も、すごく冷静に意見を出してくれます。自分も勢いや感情任せになってしまう時があるので、そういう時はいつも阿部さんがまとめてくれたり相談に乗ってくれるので、すごく助かっています。阿部さんがいなかったら自分は成り立っていないと思います。

──宮本浩次コーチに取材した時に、自粛期間明けから佐本選手のリーダーシップがすごく変わったと聞きました。

佐本 キャプテンになった時の大会は2、3年生だけだったので、一人ひとりが自立できている感じでした。その後、1年生が13人入りましたが、コロナの影響でインターハイがなくなってしまったので、全国の空気感を一度も味わえていない子が多いです。全中に出ていない子も何人かいるので、全国の空気感を練習中から出していくためにはどうしたらいいのかなと考えた時に、厳しくというか、言い続けないとダメかなと思って意識してやっています。

──キャプテンという立場であっても、仲間にいろいろと言わなければいけないのは大変じゃないですか?

佐本 しんどいです。それに自分が言ったことで泣いてしまう子もいるので、そういう時が一番しんどいです。もっと違う声掛けをすれば良かったのかなって、いつも思います。そういう時は同期に「これで良かったかな?」と確認したりして、周りにすごく支えてもらっています。

──この3年間でバスケット面も人間的にも成長したなと感じる部分はありますか?

佐本 ウチは勉強もちゃんと頑張らないといけない学校です。勉強をやってこそのスポーツで、自分たちもその方針は大事だと思っています。時間を無駄にせずに、限られた時間で勉強とスポーツをするので忍耐力がつきました。あとは、私は自分でもおっちょこちょいと感じることが多いですが、発信力だったり、チームを引っ張っていく力はついたと思います。

阿部 勉強と部活を両立しなければいけないので、私も忍耐力はついたと思いますね。あとは、しんどくなった時に割り切ること。プレーが上手くいかなくて落ち込んだりしても、今は割り切って考えられるようになりました。

和歌山信愛

ウインターカップ初出場の「あの一歩が忘れられへん」

──1年生には全国の舞台を知らない選手が多いとのことですが、2人が初めてウインターカップに出場した時の気持ちは覚えていますか?

佐本 自分は楽しかったです。試合は粘りきれなくて負けてしまったので悔しかったですが、やっている時は「ここでバスケをしているんだ」みたいな気持ちで楽しかったです。緊張はしましたけど、それよりも「あの赤いコートに立っている!」みたいな。

阿部 会場に一歩入った時にすごく感動しました。あの一歩が忘れられへん。

佐本 カッコいい! ウチは忘れてもうたわ(笑)。

阿部 全員で並んで礼をしてコートに入る瞬間に「始まる!」と思いました。

佐本 楽しかったが強すぎて、それは覚えてないわ(笑)。

──今年の和歌山信愛はどんなチームですか?

佐本 自分たちのモットーは『声、走る、泥臭く』の3つです。去年や一昨年も粘ることができなくて最後に点数を取られて負けてしまいました。今年はとにかく走る、ルーズボールを追いかける、そして声を掛け合い続けて戦います。サイズもすごく小さくなりましたが、その3つは絶対に譲れない部分です。ウインターカップの目標はベスト8ですが、去年も一昨年も負けています。とにかくガムシャラに突き進んで、一試合一試合を大事に思いっきりいきたいです。

──ウインターカップへの個人的な意気込み教えてください。

阿部 しんどくなっても走り続けることと、一番前でディフェンスをすることが多いので、後ろの選手がしんどくならないようにプレッシャーをかけていきたいです。

佐本 チームの波がある時でも、とにかく走ってみんなを引っ張っていくことと、しっかり自分のプレーをしてドライブなどで頑張りたいです。

──では、最後にチームとしての注目ポイントを教えてください。

佐本 モットーにしている『声、走る、泥臭さ』は自分たちのチームカラーにもなってくると思います。そこの部分はセンターだけじゃなくて小さいメンバーもしっかり走ってルーズボールやリバウンドを取りに行く。そして、ディフェンスでプレッシャーをかけて速攻を出すというのが自分たちの強みになると思います。そういったプレーを最大限に引き出していくので見ていただけたらと思います。