大澤徹也

昨年のウインターカップ、東山はベスト4に駒を進めるも福岡第一に59-71と完敗を喫した。前半を10点リードで折り返したが、前半の終わりから仕掛けられたオールコートプレスで体力を削り取られての逆転負け。それでも今年は、河村勇輝を筆頭にスタメン全員が卒業した福岡第一に対し、東山はスタートの3人、米須玲音、中川泰志、ムトンボ・ジャン・ピエールが今年の3年生に。東山のバスケを継続することで優勝候補の筆頭に挙げられている。京都府予選ではライバルの洛南に72-82で敗れたが、「ようやくスイッチが入りました」と吹っ切れた様子の大澤徹也コーチに、ウインターカップの意気込みを語ってもらった。

洛南戦の負けは「今このチームにとって必要な経験」

──今回の各都道府県予選では、東山が洛南に負けたのが一番のインパクトでした。新型コロナウイルスの影響で試合勘に問題があったのでしょうか、あるいは全国優勝の有力候補と見なされていたことがマイナスになったのでしょうか。

公式戦という公式戦がウインターカップ予選しかなくて、試合の経験値という部分はどのチームも一緒ですが、浅い感じで入ってしまった部分はあります。予選自体、洛南戦までもあまり良くなかったので不安はありました。ジャンピ(ジャン・ピエール)の対応など洛南のやってくることは把握できていたのですが、それ以上にやられてしまいました。

洛南高校と戦っているより、見えないプレッシャーと戦っている感じでした。優勝候補と注目されることで「勝たなきゃいけない」というプレッシャーが選手たちにも私にもあって、相手よりも自分と戦うところですね。私も何日かはさすがにこたえたんですが、選手たちは今「やってやろう」と吹っ切れて、ウインターカップに向けて集中できるようになりました。負けていい試合はありませんが、今このチームにとっては必要な経験だったのかもしれません。

──負けから学んで、ウィンターカップに向けて良いきっかけなりましたか?

おっしゃる通りです。それまでは「負けから学ぶ」なんて理解できませんでしたが、そうなるべくしてなっているので。前日の決勝リーグの鳥羽戦もチーム状況は良くなかったんです。もともと強くはないのに、注目されるから選手たちが「俺たちは強いんじゃないのか」という雰囲気になってしまう。それがブチ壊されて、練習のスイッチもようやく入った感じです。

──田中幸信コーチはもういらっしゃらなくて、大澤コーチが1人でチームを見るのは今年が初めてになりますか?

はい、田中先生は3月で退職になりました。私としては真価が問われるところですが、最初に洛南にやられたのは、私としては良くないスタートです。練習を見る以外の仕事もある中で、バスケットをどう優先させるか。バスケットに対する情熱を100%注ぐためにどういう時間の割り振りをするか。そのマネジメント能力をもう少し高めればもっといろんなことができると思います。私自身、言い訳になってしまいますが学級の担任をやりながらリクルートをして練習をしなければいけない。今までは田中先生と役割分担をしていて、見えない部分ですごく助けられていたんだと、ひしひしと感じます。

大澤徹也

「1回戦から全力で、大暴れしてやろうと思います」

──「もともと強くはない」という言葉がありましたが、それでも去年のベスト4で、主力が残っています。優勝を狙うチャンスはあると感じていますか? あるいは大澤コーチが独り立ちして1年目だからまだまだですよ、という気持ちですか?

言い訳できない環境を与えてもらったと感じています。このタイミングでこういうチームを持たせてもらった、これは自分にしかできないチャレンジだ、という思いはすごくあります。ただ、周りのいろいろな人のサポートがあってできているので、もっと力を付けなければいけない、という初年度の気持ちも持っています。今もリクルートに行かなきゃいけないし、バスケを離れたところでは3年生の面接の練習もやらないといけません。そういったマネジメントは大変だし、私一人の責任なのでダメだった時もはっきり分かります。洛南戦でのモチベーションの持っていき方も完全に私の責任なので。でも同時にやり甲斐も感じています。

優勝候補だと皆さん言ってくれるんですけど、去年のメンバーが残っているというだけで、2年生1年生に実績のある選手は少ないです。ウインターカップ予選でやられて、「結局、優勝候補じゃないよな」となっているのが正直な気持ちです。多分、本大会では楽な気持ちで戦えると思いますし、相手としては嫌なんじゃないかな。特にシード校には絶対嫌だと思わせたいですね。1回戦から全力で、大暴れしてやろうと思っています。

──新型コロナウイルスで長い自粛期間があり、目標だったインターハイもなくなりました。あの時期をどう過ごしましたか?

先が見えない、何が正解が分からない中で迷いもありました。他のチームを見ればZoomでミーティングをしたりトレーニングをしたりしていましたが、ウチは「始まるまで自分たちでしっかり準備をしろ」と言っただけです。ただ、新人戦を良い形で終えて新入生が入るところで練習ができなくなり、合わせなど時間をかけてチームを作っていくスタイルなので、その基礎が作れないのはキツかったです。

「この期間をプラスにしなきゃね」と言ってはいましたが、大きくプラスになったことはありません。私自身もただただ学校には来ていて、時間があるのでいろいろ考えるのですが、考えたからといって答えが出るわけではないし、毎日そんな繰り返しだったので充実感はなかったです。練習が再開になった時も、何を目標に頑張ればいいのか分からないままバスケットをやる感じでした。もっとやれることがあったと今は思いますけど、ようやく私もこれですべての状況を受け入れて、ウインターカップを頑張るだけだという心境なので、ここからの巻き返しに期待してほしいです。