2シーズン連続のファイナル進出、レギュラーシーズン最多勝利など、Bリーグが誕生して以降の千葉ジェッツは強豪として確固たる地位を築いた。今シーズンも12勝3敗と大きく勝ち越してバイウィークへと突入したが、その強い千葉を作り上げた大野篤史は「まだまだ伸びしろがある」とチームの成長を止めない。就任5シーズン目を迎えた大野ヘッドコーチに現在の心境を聞いた。
「どこにでもやられるし、どこにでも勝つチャンスがある」
──スタートダッシュに失敗した昨シーズンと違い、12勝3敗と良いスタートを切ったことで、何かテコ入れをする必要はあまりないのではないでしょうか?
今年のチームにはまだまだ伸びしろがあると思っています。毎年そうですけど、満足したらそこで成長しないので、取り組み方は変わっていきますが、「こうなったからやることがない」ということはないです。もちろん、改善しなければいけない点があると思っているから取り組んでいます。
──具体的に現在取り組んでいることはどんなことでしょう?
何か新しいことに取り組むのではなく『in general』。ピック&ロールの守り方だったり、細かいポジショニングだったり、1対1のところ。大枠のところをもう一度確認して、共通理解を深めています。クローズアウトシチュエーションでミドルを割られて打たれたり、キックアウトされて3ポイントシュートを打たれるケースがかなりあったので。
──そういう意味では特に守備面では徹底できていなかったという印象ですか?
「そんなことは分かっているでしょ?」的な感じでやっていたんですけど、アシスタントコーチのゾラン(マルティチ)に「できないことはもう一度立ち返らないといけない」と言われて、確かにそうだなと。
僕は5対5の中で2対2のシチュエーションをどうするかということばかり考えていたんですけど、2対2に問題があるならそこに戻ると。この時期に1on1の練習をすることはほぼなかったです。本当は戦術的な要素に目を向けていこうと思っていたんですけど、他のチームから見ればファンダメンタルなことに取り組んでいるので、少し練習量も増えたと思います。
──12勝3敗、東地区2位という成績に対してはどのように評価していますか?
ここまでに何勝何敗とか、ここには勝てるだろうとか、そういう星勘定をしたことがないので何とも言えませんが、これぐらいはできると思っていました。どこにでもやられるし、どこにでも勝つチャンスがあると思っています。
勝つために必要なことをやるスタンスは変わりませんが、少し変わってきているのはタイトなスケジュールで、準備期間が本当に少なくなっていることですね。スカウティングのところで最低でも10個から15個くらいの用意がある。水曜ゲームと土日のゲームに対して全部をカバーすることはできないですからね。どこを大事にするかということで『in general』に至りました。
「ホームコートでふざけたプレーをしたら許せない」
──個人的なイメージで恐縮ですが、これまでは勝ち試合でもできなかったこと、悪かったことに目を向けることが多かったと思いますが、今シーズンはそういった印象がなくなってきたと感じます。結果に対してのアプローチに変化はありますか?
僕、ネガティブですか?(笑)全然変わってないです。負けたら悔しいですし。ただ、100対50で勝ったとしても、やることは一緒なので第4クォーターに適当なプレーをしていたら怒ります。特にホームコートでふざけたプレーをしたら許せないです。会見はロッカールームでのミーティングで怒った後なので多分落ち着いているかと(笑)。そういう意味では、選手たちにもホームコートでしっかり戦わないといけないという意識が芽生えてきたと思います。
致し方ないと思ったのは宇都宮ブレックスとの2戦目(68-85)。自分たちよりも良い準備していたと思いますし、あとの2試合は勝たなきゃいけないと思っていました。
──接戦を落としたほうがしょうがないと思うことが普通だと思っていました。
点差よりもゲームの内容ですね。川崎ブレイブサンダース戦も10点勝っていて、ゲームのクロージングでミスしています。選手を試しながらだとしても、勝ち切らなきゃいけない試合でした。逆にサンロッカーズ渋谷の1戦目は負けてしかりのゲームを拾ったと思っていますし、2戦目は勝ちゲームを落としたと。
──様々な思いが錯綜する中でバイウィークを迎えました。個人の時間も増えるかと思いますが、練習以外の時間はどのように過ごしていますか?
シーズン中とあまり変わらないですね。試合の振り返りやユーロリーグを長めに見るくらいです。ディフェンスのルールが違い、NBAは見ないので選手の名前も分かりません。本を読むかユーロリーグを見るかですね。
娯楽としてユーロを見ていますが、例えばバルセロナのシューターのアクションを見て、シゲ(田口成浩)にとってエフェクティブなのかなとか、(富樫)勇樹にとってこのアクションまで持って行けたらエフェクティブなのかなとか、そういう風には見ることはあります。パーソナルが違うので、同じようには動けないですけど。
──娯楽と言えど、その延長線上に選手が思い浮かぶのですね。他にリラックスできる瞬間はありますか?
最近ゴルフを始めたのですが、シーズンに入るとやれないですし、全然うまくならないのでそろそろやめようかと思っています。行く時間を作ろうと思えばあるんですけど、そこまでして行きたくないなと。
そうなると、お酒ですね(笑)。
5シーズン目を迎え「古巣と思えるチームになった」
──千葉で5シーズン目を迎えましたが、Bリーグが始まり同一チームで指揮を執り続けているのは、シーホース三河の鈴木貴美一ヘッドコーチと大野ヘッドコーチだけです。まず、そのことに対するご自身の評価はどうでしょうか?
こればかりはやりたくてもやれないことですが、5年前にここにきて、自分が作りたいものや伝えたいことに対して、選手が信じてついてきてくれました。そして、結果を出してくれたことについてはありがたいと思っています。何年続くか分からないですし、1年1年が勝負だと思っています。
──まだ旅の途中ではありますが、強豪チームを作り上げることに成功したことで、優勝以外は失敗と見られることもあると思います。その中で、優勝以外に成功と言えることはありますか?
支えてくれている人たちが喜んでくれればそれでいいです。勝つことと喜んでもらうことの2つが僕の成果だと思っているので。優勝しても支えてくれている人たちが喜んでいないのであれば、良いシーズンではなかったと思います。評価するのは僕ではないですし、ブースターやスポンサー、フロントが喜ぶかどうかが大事です。
僕がこれまでで一番思い入れのあるチームはパナソニック(現役時のチーム、後に休部となり和歌山トライアンズに)だったんです。千葉に5年間いて、古巣と思えるチームになったと思います。次にもう一回同じことができるかと言われたら、どれだけの熱量を持ってやれるのか分からないぐらい思い入れはあります。
なんか辞めるみたいになってますが(笑)。辞めたらブースターになって、最後は自分が作ってきたモノを観客席でお酒を飲みながら見たいなと思っています。
──では最後に、そんな思い入れのあるチームのブースターに向けてメッセージをお願いします。
もちろん優勝したいですし、その喜びをみんなで分かち合いたいと思っています。市民球団のロールモデルになれたらうれしいです。自分たちができることを必死に取り組んでいくので、これからも変わらずに応援してください。
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