エースキラーとリムプロテクト、守備を強化
2シーズン前には西カンファレンスファイナルまで進んだものの、昨シーズンはプレーオフ進出すらギリギリだったブレイザーズ。最大の要因がユスフ・ヌルキッチの離脱だったとはいえ、シーズン前から決まっていた欠場だけに、開幕前のチーム作りの失敗が後々まで響きました。ディフェンスの良いアル・ファルーク・アミヌとモーリス・ハークレスが移籍したにもかかわらず、オフェンスに特徴のある選手ばかりを集めたことが問題だったのは明らかで、それはカーメロ・アンソニーがシーズン途中に加入しても根本的な解決にはなりませんでした。
バブルでは復帰したヌルキッチに加え、トレバー・アリーザの欠場もあってチーム内の序列を覆したギャリー・トレントJr.がディフェンス面で奮闘し、なんとかプレーオフには進んだものの、プレーオフ1回戦で対戦したレイカーズとの実力差は明らかでした。この反省からか、迎えたオフの補強では明確にディフェンスに重きを置き、派手さはないものの堅実な補強をしています。
最初の補強はロケッツからのロバート・コビントンの獲得でした。アリーザに加えて、2つのドラフト指名権を手放す大きな決断でしたが、マイクロボールとなったロケッツで平均2.2ブロックとリムプロテクターとしても活躍したコビントンは、脆弱だったヘルプディフェンスを大きく改善してくれるでしょう。センター以外にもインサイドを塞ぐことのできる選手がいることは大きなメリットとなります。
さらに昨年のダンクコンテストのチャンピオンであるデリック・ジョーンズJr.とフリーエージェントで契約しました。線は細いものの長いウイングスパンで、アウトサイドのエースキラー役としても、リムプロテクターとしても期待できるマルチなディフェンダーは多様な使い方ができます。トレントJr.とともに相手のキーマンを潰す役割を担うことが期待されます。
センターの控えには2年前のプレーオフでチームを救う活躍をしたエネス・カンターをトレードで戻しました。ポイントセンターとして振舞うヌルキッチに対して、ポストから自分でアタックし、ゴール下でフィジカルに戦うカンターは全くタイプが異なるだけに、ザック・コリンズも含めて使い分けることで柔軟な戦い方ができそうです。
そして最後にカーメロとの再契約にも成功しました。層が薄かった昨シーズンと違い、カーメロの役割は限定的になりそうですが、クラッチタイムでは迷いなく起用されるでしょう。特殊な日程で疲労の管理が重要になりそうなシーズンだけに、プレータイムが短くなることは36歳のカーメロには好ましい変化です。
ディフェンス力と選手層、その両方を欠いて苦しんだ昨シーズンに比べると、ブレイザーズは見違えるようなロスターを構築できました。各ポジションに核となる選手を配置しているだけでなく、控えにはタイプの違う実力者を並べ、戦術的な柔軟性もありそうです。一つ課題を挙げるとすればロスターが充実したことで、アンファニー・サイモンズやナシール・リトルといった期待の若手にプレータイムが回ってこない可能性が高いことでしょうか。
開幕まで時間はないものの、ディフェンスの再構築と選手同士の相性を見極め、ベストな戦い方を探っていかなければいけません。勝負強さは持っているだけに、戦い方が固まってくれば昨シーズンのような低空飛行にはならず、西カンファレンスを盛り上げる存在になりそうです。