岡山商科大学附属で全国に挑む納谷幸二の『第2の人生』(前編)「変なプライドを持っていたら指導者は務まらない」

岡山商科大学附属で全国に挑む納谷幸二の『第2の人生』(前編)「変なプライドを持っていたら指導者は務まらない」

2020/11/20
納谷幸二

2018年にウインターカップ初出場を果たした岡山商科大学附属は、これで3年連続の出場となる。1年目は初戦敗退を喫したが、2年目の昨年大会では2勝を挙げてベスト16進出を果たした。指揮を執るのは12年目の納谷幸二。かつてトヨタ自動車やアイシンシーホースで、そして日本代表として活躍したシューターの姿を思い出せるファンもまだ多いだろう。指導者キャリアの最初はトッププレーヤーとしてのプライドが邪魔をしたというが、12年目ともなれば板に付いたもの。様々な課題を乗り越えて、チームは全国大会の常連となりつつある。『ベスト8に安定して入る力を持ったチーム』を目指す納谷に話を聞いた。

リーグ優勝を置き土産に引退、縁もゆかりもない岡山へ

──まずはコーチの自己紹介からお願いします。

岡山商科大学附属高校バスケットボール部の納谷幸二です。今回、ウインターカップ岡山県予選で優勝し、これで3年連続の本大会進出となります。

──納谷さんと言えば現役時代、トヨタやアイシンシーホース、また日本代表でシューターとして活躍した印象が強いのですが、現役引退後に高校の教員としてバスケの指導にあたるようになった経緯を教えてください。

現役でプレーしていた時から引退後は指導者になりたい気持ちがあり、その中でもU18のカテゴリーに関心がありました。私は岡山出身でもないし、現役時代に知り合いがいたとか、そういうことは一切ありません。ただ、アイシンでの現役時代に知人を通してバスケットボール教室をやってほしいとの依頼があり、そこでこの吉備学園に来ました。その時に、引退後に岡山で指導をしてほしいと頼まれたのですが、まだ現役を続けるつもりだったので断ったんです。それでも、翌年またバスケ教室に呼んでもらって、またオファーをいただきました。縁もゆかりもない岡山ですが、強豪校でなくても色が付いていないチームを自分の色にしてみようと決断しました。そのシーズン途中で引退を決断して、最後はリーグ優勝で終わることができて岡山に来ました。

──実業団選手として長く活躍して、高校の指導者としてのセカンドキャリアを始めるのは大変だったのでは?

もう年齢も取っているので、いろんな意味で余裕があって、温かい目で選手を見ることができます。もっとも、最初は「大変なところに来ちゃった」と思いました。頼る人もいないですし、階段を2段飛ばし3段飛ばしで行きたいのに、1段ずつ上ることしかできない、そんなジレンマは何年か抱えていました。

──トッププレーヤーから指導者になって、プライドが邪魔したりはしませんでしたか?

正直に言えばかなりありました。「なんでこんなこともできないんだ」と、毎日毎日そんな気持ちでしたね。ジレンマばかりで、当時はよくやって来れたなと自分でも思います。鈴木貴美一さん(シーホース三河のヘッドコーチ)に相談させていただいたいたこともありました。そういう状況だったので岡山以外から仲間が顔を出してくれて、ストレス発散じゃないですが話を聞いてくれたりゴルフに誘ってくれたり、そうやって助けてもらいました。

そんなある時、変なプライドなんか持っていたら指導者は務まらないと気付いてからは、ニュートラルな気持ちで選手たちと向き合えるようになりました。そこからいろんなことが上手く行くようになったと思います。最初の3年ぐらいはしんどかったですけど、そこから少しずつメンバーも集まるようになり、県の上位に少しずつ行けるようになってきました。そのあたりから「自分のやり方を続けていけば形になる」という感覚が得られたんだと思います。

納谷幸二

「引退して指導者になるのであればイチからだよ」

──これからBリーグを引退して指導者へと転じる人も増えてくると思います。そんな人へのアドバイスはありますか?

実は簡単なことなんです。プレーヤーとしての自分のプライドは持っていても構わない。ただ引退して指導者になるのであればイチからだよ、ということです。何の実績もなくイチから始めるわけなので、プレーヤーとしてどれだけ上にいたかは関係ありません。それが頭の中でしっかり整理できていれば全然問題なくやれると思います。

──そういった心の持ちようがあれば、他の指導者へとリスペクトが生まれ、良い関係も築いていけそうです。

実際にそうでした。岡山県でも県外でも、私のことを知っているいろんな方々が仲間に入れてくださり、お声掛けいただいたりして少しずつ勉強させてもらっています。

──高校生を指導する上で大切にしていることはありますか?

やるからには育成だけでなく強化もしたいのですが、ただ勝てばいいわけではないので育成に重きを置いています。将来的に活躍できる選手を送り出すという考え方は、今後もなくなることはありません。私が選手たちによく言うのは「ゲームをイメージして練習しなさい」ということで、練習をやらされるのではなく自分でやりたいと思ってやることを意識しています。好きでバスケットボールをやっているわけですから、練習することでもっと好きになってもらいたいです。

私の年代はやらされる練習が多かったので、そうはさせたくない思いがあります。もちろん、自分がやってきたこと全部を否定するわけではなく、高校時代の先生にはすごく感謝していますし、今でも連絡を取らせてもらっています。それでも当時はすべて厳しいのが当たり前で、それを今の選手に同じようにやるわけにはいきません。一番に求めるのは選手が自分で考えて行動すること。そのレベルまで行ったら、私のコーチとしての役割は果たせたと思えます。

──岡山商科大学附属に来て12年目です。ここで指導して良かったと思えるエピソードはありますか。

やっぱり部活で言えば、最初は全然そうでもなかった選手が3年間でグングン成長するのを見るのは楽しいです。例えば今年の春に卒業して白鴎大に進んだ脇真大選手は、入学してきた時は身体も細いし岡山県でも全然通用しなかったんです。それがU18に入ったり、ここで成長してくれたのはすごくうれしいです。

──ウインターカップ3年連続出場と岡山県では勝てるチームになりつつあります。5年後、10年後の目標はどこに置きますか?

言っちゃっていいんですかね(笑)。ずばり全国制覇です!

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