レナードからのラブコールに応えて球団にトレードを要求
2019年のオフにフリーエージェントだったカワイ・レナードを射止めたクリッパーズは、同時にサンダーからオールスターのポール・ジョージをトレードで獲得するという離れ業をやってのけた。NBAを代表する2人の2ウェイプレーヤーを獲得して一気に優勝候補に躍り出たクリッパーズだったが、この時の舞台裏に関する興味深い情報が伝えられた。
ジョージは2018年のオフにサンダーと再契約を結んだ。その時点では、ラッセル・ウェストブルックとの『兄弟タッグ』が長期間続くと思われたのだが、そのわずか1年後にクリッパーズに移籍。形式上はトレードだったとしても、先にクリッパーズ入りを決めたレナードがジョージの獲得を入団条件として球団に要求していなかったら、もしくはサンダーがこの申し出を拒否していたら、ジョージの移籍が決まることはなかった。
しかし、実際にはサンダーはジョージのトレードを拒否できない理由があった。『ESPN』によると、ジョージがサンダーと結んだ契約内には『トレードを求める場合は検討する』というオプションが含まれていたという。
無論、ジョージはウェストブルックとのデュオで勝てると思ったからこそ再契約したのだろうが、西カンファレンスの競争を勝ち上がるのはどのチームにとっても難しい。2019年のプレーオフファーストラウンドでトレイルブレイザーズと対戦したサンダーは、デイミアン・リラードの劇的ブザービーターにより敗退が決定。このシリーズに1勝4敗で完敗したことも影響したのか、ジョージはレナードからのラブコールに応えた。
サンダーにとっても、クリッパーズからシェイ・ギルジャス・アレキサンダー、ダニーロ・ガリナーリ、ドラフト1巡目指名権5枠、1巡目指名順を交換する権利という好条件を引き出せたのは大きなメリットだった。ジョージのトレード後に、ウェストブルックもロケッツにトレードしてクリス・ポールとドラフト指名権を獲得し、彼らは再建に舵を切った。アメリカのプロスポーツでは、トレードは球団と選手の双方にとってプラスに働くという見方をされることが多い。このトレードも、すぐに勝ちたかったクリッパーズ、現状では頭打ち感があったサンダーにとってwin-winのように思えた。
結果論になってしまうが、クリッパーズは期待された球団史上初のカンファレンスファイナル進出すら逃し、今シーズン開幕前の段階ではプレーオフ争いに絡むことすら難しいと言われたサンダーは西の5位に大躍進した。
クリッパーズは来シーズンの優勝候補の一つだが、レナードとジョージの2021-22シーズンの契約はプレーヤーオプションになっているため、次がラストチャンスになる可能性もある。
『タラレバ』を考えても仕方がないが、もしジョージがサンダーと結んだ契約に『トレードを球団に検討させる』オプションが含まれていなかったら、レナードのクリッパーズ加入も実現していなかったかもしれない。
人生とはタイミング、決断に左右されるものということをあらためて考えさせられる。