ジャック・クーリー

「守備でしっかり戻らないとゲームにならない」

10月25日、琉球ゴールデンキングスは島根スサノオマジック相手に82-75で勝利。キム・ティリ、ドウェイン・エバンスが揃って欠場する中、唯一の外国籍選手として文字通りフル稼働して勝利の立役者となったのがジャック・クーリーだ。

この試合、クーリーは37分の出場で、フィールドゴール11本中9本成功の25得点、7つのオフェンスリバウンドを含む18リバウンドに3アシスト。さらに何度もダブルチームを仕掛けられる中でも冷静に対処してターンオーバーわずか1と圧巻の内容だった。

「今日は、試合前から自分が出ずっぱりであることへの覚悟を決めていました。そして昨日より、もっと頑張らなければいけないと思っていました」

試合後の会見で語ったこの言葉通りのプレーを見せたクーリーだが、あくまで勝因はチーム力にあると続ける。「藤田ヘッドコーチがしっかりまとめているので、誰かが欠けたからと崩れるチームではない。今日はミツ(満原優樹)が36分出場でよく踏ん張ってくれました。彼を誇りに思います」

藤田弘輝ヘッドコーチは、次のような戦いを意識していたと振り返る。「ピック&ロールのスクリーナー、ポストアップのユーザーなどオフェンスはクーリー中心で、今日はおそらく35分以上は出場することが最初から分かっていました。そこでディフェンスでどれだけ負担を減らせるか。ボールプレッシャー、ディナイをして簡単にポストにボールを入れさせない。ポストに入ったら周りがヘルプして、少しずつでもクーリーを助けてあげようと話していました」

この周囲の助けでゴール下での守備の負担を軽減できたクーリーだが、その分は「島根のビッグマンは、全員が走れる選手です。相手に勝つチャンスを与えるとしたら、トランジションポイントを与える時、そういう意味で自分が戻ることを徹底しなければいけない。自分が守備でしっかり戻らないとゲームにならないと思っていました」と、ほぼフル出場の中でもハッスルバックを怠らない献身的な姿勢も光った。

ジャック・クーリー

ファウルを避けながら、激しく「傾向は学んだ」

また、特に注目すべき点は、前半にファウル3つとなりながら後半はよりフィジカルの激しいプレーを、ファウルを避けつつ成し遂げたこと。そこには指揮官との強い絆であり、大黒柱としてのプライドがあった。

「後半、ディフェンスのギアを上げないとそのまま負けてしまう展開でした。ギアを上げてファウルアウトして負けても、それはステップアップのための経験となります。前半から何も変えずにそのまま負けることは考えられませんでした。藤田ヘッドコーチは自分に絶大な信頼をおいてくれているので、それを裏切るプレーはできない。その中で後半はアグレッシブかつスマートにプレーできました」

後半にプレーの強度を上げたのは、ファウルアウトを覚悟しての賭けではない。「タフな状況で少しナーバスにはなっていましたが、昨シーズンでレフェリーの傾向は学びました。今日のヘッドレフェリーは、後半はよりフィジカルにプレーさせてくれると感じていたので、それを踏まえてどこまで激しくいけるのか、自分の中で線引きはありました。ここまでなら大丈夫だと、自分に言い聞かせ自信を持ってプレーできていました」と、昨シーズンの経験を生かした冷静な判断もしっかりあった。

クーリーといえば、相手のコンタクトをものともしないアタックでシュートをねじ込んでのバスケット・カウントを決めた時の雄叫びはファンにとってお馴染みなど、感情を表に出してチームを引っ張る熱いハートを持った選手。ただ、それと同時にレフェリーの笛の傾向を把握してアジャストできる冷静沈着な部分も持ち合わせている。昨シーズンもリーグトップ級の活躍を見せていたが、様々な面でBリーグにより適応した今シーズンは、より相手に脅威を与える存在となる。その思いをより強くした今節のパフォーマンスだった。