ファジーカスがエースの貫禄、第1クォーターで16得点
10月16日、川崎ブレイブサンダースが本拠地で広島ドラゴンフライズと対戦した。序盤からテンポの良いパス回しで質の高いチームオフェンスを展開し、最後までタフな守備を継続した川崎が99-64で圧勝。連勝を4に伸ばしている。
第1クォーター、ニック・ファジーカスと外国籍2人のビッグラインアップの川崎に対し、広島はサイズの不利を補うべくゾーンディフエンスで迎え撃つ。しかし、川崎は軽快なパス回しによって守備のズレを作りだし、ファジーカスが決める得意の展開で攻略。このクォーター、ファジーカスは味方が演出したイージーシュートのチャンスを着実に沈め、3ポイントシュート4本を含むフィールドゴール6本中6本成功で16得点を記録する。エースが絶好調の川崎が29-18と先行した。
第2クォーター、広島はアイザイア・マーフィーがキレ味鋭いドライブからのシューティングファウルを獲得。また、田中成也もドライブに3ポイントシュートで思い切りの良いオフェンスでチームを牽引するなど、日本人ガードの奮闘で残り3分には5点差にまで点差を詰める。しかし、川崎は終盤にかけビッグマンがセカンドチャンスから沈めて突き放し41-31と2桁リードに戻した。
後半に入ると、川崎が守備のギアをさらに1段階上げる。開始早々に前から激しいプレッシャーをかけ、パブロ・アギラールがスティールを奪うとそのまま自ら持ち込んでのレイアップでバスケット・カウント。さらにファージカスのスティールから辻直人も速攻を決め、直後に辻が3ポイントシュートをファウルを受けながら決める4ポイントプレーを成功させる。これで開始2分半に51-35と突き放した川崎が、ここから広島を圧倒する。
結局、川崎は第3クォーターだけで6スティールを奪取。堅守速攻をこれ以上ない形で披露して33-15のビッグクォーターを作ると、第4クォーターを前にリードを28点にまで広げ勝負を決めた。
佐藤賢次「ビッグラインアップをやりきる」
川崎が快勝した最大の要因はビッグラインアップがばっちりはまったこと。リバウンドで49-25、オフェンスリバウンド19-8と優位に立つと、ペイント内の得点で52-30とゴール下を支配した。開幕からこの布陣は思うように機能していない面もあったが、佐藤賢次ヘッドコーチは「ビッグラインアップが上手くいってもいかなくても、メインとしてチーム全体でやりきる。そして勝ち切るのが目標でした」と強い決意を持ってこの試合に臨んだ。
その理由をチーム作りの長期的な視点、そして広島対策の2つがあったと明かす。「先週まではビッグラインアップを使った際、シュートを打つ時に迷いがありました。それをなくして機能させ、チームを成長させる過程として一回、思い切ってメインで使ってチームの方向性を一つにしたかったです。今日は上手くいったので、一つステップアップできました。強力なオプションとして育てていきたいです。また、エチェニケ選手以外のところではサイズのアドバンテージがあります。そこも含めてこの作戦で行こうと思いました」
「エチェニケ選手に対するディフェンスが、ビッグマンも頑張ってくれましたし、チーム全体で機能しました」と指揮官が語るように、広島の大黒柱グレゴリー・エチェニケ封じに成功したのも大きかった。序盤からエチェニケがインサイドでボールを持つと、2人、3人に囲む徹底マークで思うようにシュートを打たせない。広島はフロアバランスの悪さから、エチェニケが外にパスを出しても、そこから守備のズレを作るまでには至らず。その結果、広島は個人技頼みの単発なオフェンスが続いた。
田中成也「本当に完敗という言葉しか出ないです」
昇格組の広島はここまで開幕節の大阪エヴェッサ戦は1勝1敗。第2節のアルバルク東京戦は連敗だったが、ともに第4クォーター途中まで僅差で食い下げる健闘を見せていた。それが今回は良いところなしの大敗となり、堀田剛司ヘッドコーチは「何かを変えないといけない。このままだと、この程度のチームになってしまいます」と危機感を募らせる。
先発を務める田中成也も同じ意見で「本当に完敗という言葉しか出ないです」とチームで戦う重要性を痛感した。「強い川崎さん相手に、僕たちが受けて立ってしまった結果だと素直に思います。去年、B2で選手一人ひとりが個人で通用していた部分はありましたが、それではB1では勝てない。チームとして戦わなければ勝てないと思い知らされました」
完膚なきまでに打ちのめされた広島だが、だからこそ課題がより明確になった部分はある。堀田ヘッドコーチが「今後、広島ドラゴンフライズが変わるためのきっかけになると思いますし、そうしたいです」と語るように、これ以上ない教訓を得たことを今日の試合でどれだけ生かすことができるのか注目したい。