JJ・レディック

「バスケに情熱を注いできた。それは今も変わらない」

プレーオフのファーストラウンドで敗退したレイカーズは、ただちにダービン・ハムの解任を決め、新たなヘッドコーチの選定に入った。ナゲッツのデイビッド・アデルマン、ペリカンズのジェームズ・ボーレゴ、セルティックスのサム・キャセル、ティンバーウルブズのマイカ・ノリ、ヒートのクリス・クインと、候補者の多くは他のチームで長くアシスタントコーチを務めている人物だ。

アデルマンは、殿堂入りコーチとなった父であるリック・アデルマンの下で2011-12シーズンからウルブズの選手育成コーチとなり、2017年からナゲッツのアシスタントコーチだ。ボーレゴは2000年台前半からグレッグ・ポポビッチのスパースでアシスタントを務め、間にペリカンズとマジックのアシスタントを挟み、ホーネッツのヘッドコーチを経験した後、今はペリカンズのアシスタントコーチ。キャセルは現役引退後の2009年からウィザーズ、クリッパーズ、セブンティシクサーズを経て、セルティックスのアシスタントコーチをやっている。ノリは2009年からラプターズ、キングス、ナゲッツ、ピストンズを経て、今はウルブズのアシスタント。今年のプレーオフではヘッドコーチのクリス・フィンチが選手と激突して膝を手術する羽目になり、立てない彼に代わって試合中にサイドラインを動き回り選手に指示を飛ばす役割を担っている。クインは現役時代の指揮官だったエリック・スポールストラの下、2014年からヒートのアシスタントコーチを務めている。

誰もがアシスタントコーチとして豊富な経験を持ち、ヘッドコーチに挑戦する準備が整っている。その中で異色の候補者なのがJJ・レディックだ。15年のNBAキャリアを持つ彼は、マーベリックスでプレーした2020-21シーズンを最後に現役を退き、その後は解説者として、また現役時代から熱心にやっていた自分のポッドキャスト番組のキャスターとしてNBAにかかわってきた。

レディックが候補に挙がることに対して世間の反応は冷ややかで、派手好きなレイカーズにとって悪い意味の『ショータイム』、レブロン・ジェームズの『お友達人事』と受け止められている。ネガティブな見方の根拠は、何と言ってもコーチ経験が皆無なことだ。名選手は名コーチにあらず。10年以上の下積みがある他の候補者とレディックには大きな隔たりがある。

だがレイカーズは恐らく、経験豊富なアシスタントコーチの候補者を絞り込んだ上で、最終的にそのコーチとレディックの間で最終決定を下すだろう。『The Athletic』は、レイカーズがレディックを「長期に渡りクラブを導くパット・ライリーのような存在になり得る候補」と見なしていると報じた。

パット・ライリーは現役引退後の2年間をレイカーズの解説者として過ごしている。そして1980年にレイカーズのアシスタントコーチとなり、その次のシーズンにはヘッドコーチの解任に伴い彼が指揮官へと昇格して『ショータイム・レイカーズ』を築き上げた。

レイカーズは今、2年か3年を任せて結果が出なければ解雇するようなパートタイムのコーチではなく、チームにカルチャーを植え付け、名門クラブを長期に渡って輝かせる指揮官を求めている。それはアシスタントコーチとしての下積みを何年やったかでは測れない。

レディックにはコーチ経験がないが、NBAでキャリアを築き上げた経験がある。彼のバスケIQには疑いの余地がなく、勝負強いシューターとして、その時代の最先端のプレーを彼自身が体現してきた。ポッドキャスト黎明期から自宅にレコーディング設備を整えて自分の番組を持った。それは良いプレーにはしゃいで悪いプレーを罵倒する低俗なものではなく、ファン感情に迎合するだけの人気稼ぎでもなく、最新の戦術をファンに伝えて選手やコーチと議論する、彼にしかできないものだ。その活動を続けてきた経験はチームを率いる際にも生きるだろう。

レディックとレブロンはポッドキャスト番組『Mind The Game』で共同ホストを務めており、関係性が深いのは事実だ。しかし、レブロンの代理人であるリッチ・ポールは「ポッドキャストで共演していても、レブロンがJJをヘッドコーチにしたがっているわけではない。レブロンはレイカーズのヘッドコーチ人事に口出しはしない」とコメントしている。

そしてレディックは解説者を安住の地に定めたわけではなく、現場に戻ることを熱望している。「僕は常にバスケに情熱を注いできた。それは今も変わらない。それはコーチをやる上でも重要な要素になると思う」という言葉で、レディックはコーチ業への熱意を明らかにしている。「試合に勝った後のロッカールームの雰囲気、チームメートとの一体感。そういったすべてが恋しい。それが僕がコーチ業に魅了される理由なんだ」