10月11日のホームゲームで川崎ブレイブサンダースは、70年を越える歴史の中で初めて永久欠番セレモニーを行う。フレッディ・カウワン、節政貴弘とともに選出されたのが北卓也だ。選手、ヘッドコーチの両方でリーグ優勝を経験し、現在はGM(ゼネラルマネージャー)を務めるMr.ブレイブサンダースに後編では、川崎の伝統や理念、今後の在り方について聞いた。
「一人の社会人として成長させる部分も担っていかなければ」
──70年の歴史を紡いできたブレイブサンダースの伝統については、どういったとらえ方をしてきましたか。
伝統は無意識に染み付いていたものだと思います。企業スポーツとして入社して先輩からいろいろ伝えられて、それを自然と理解して身に付いていったもの。それをはっきりと理解できたのは東芝からDeNAに運営母体が変わった時ですね。そのタイミングで東芝時代の過去の映像などを見て、あらためて伝統や70周年の歴史について強く感じました。
──企業チームからプロチームへ変わり、今後はその伝統をどうやって受け継いでいったらいいのか。チーム一筋のGMとしてどういう思いですか。
東芝時代は、まずは会社組織なので先輩がいます。それがましてやものづくりの工場だったので、年配の方々からもいろいろと注意してもらったり、教えられたりという中で選手たちの人間性は成長できていました。今はそういう環境ではないので、社会人としての意識なども我々が教育をしなければいけない。そこはまだまだ足りないところはあると思っていますし、プロバスケットボール選手だけでなく、一人の社会人として成長させる部分も担っていかなければと意識しています。
──では、川崎の理念、伝統が作り上げてきた文化はどういったものですか。
理念は東芝の時から、ブレイブという言葉があります。そこからハードワークする、チームワークを高める、リスペクトをすることに繋がり、この3つは体現してほしい。東芝の時から伝統として継続してきたものをしっかり具現化させたいですし、そこはチームにも求めたいです。
そして、今の状況ではコロナ禍の中でも応援してくれる方々の支えでチームが成り立っていることを忘れないでほしい。その支えに応えるためには、バスケットボールで活躍する。そのためにはチーム全員で協力し、チームのために、チームの勝利のために一人ひとりが何ができるかが哲学であり、チームの根本に根付いています。
「いろいろな事態を想定しておくのが大事」
──チーム初のGMに就任して1年以上が経過しました。北さんが考えるGM像とはどのようにとらえていますか?
チーム編成と運営をする、ということですね。チーム編成のところがやっぱり一番大きい部分だと思っています。良い選手を獲得しなければ優勝はできない。ただ、適材適所という考えもありエース級の選手ばかりを集めても優勝することはできない。そこは中心となる選手を軸にどういった部分を埋めていくのか。Bリーグのルールに対応していきたいです。
また、ヘッドコーチは1試合ごとにプレッシャーもあり、相当にメンタルを消耗します。GMは試合の勝敗も気にしますが、それよりも何かが起こったときにすぐに対応する、故障者などいろいろな事態を想定しておくのが大事だと思います。
──選手を獲得するだけでなく、切ることもGMの仕事だと思います。その辺はどう思っていますか?
しんどいです。1番嫌ですし、嫌な仕事です。やりたくないですけどそれは仕事なのでやらなければならない。プロだから仕方ないですが、やはりそういった決断をするのは嫌ですし、悲しいし寂しくなります。
選手に契約満了を伝える時は、しっかり理由を話したい。みんなプロ選手で個人事業主であるからには、試合に出てなんぼ、稼いでなんぼだと思います。だから、ウチにいてほしいけど、試合に出られないよりは、出られるところに行ったほうがいい。そういう視点でも決断をしないといけない。その選手の将来のことを考え、理由を説明しています。
──選手とヘッドコーチとして長年、コートもしくはコートサイドにいたのが、GMは違います。そこへの違和感は当初はありましたか。
GMになったらベンチに入らないのは分かっていたので、最初から違和感はなかったです。ただ、今まではベンチからしか試合を見たことがなかったのが、アリーナの上部から試合を見る。アウェーに行ってもいろいろな場所から見ていましたけど、それでコートの全体、お客さんの姿も見えたのは新鮮でした。また、アウェーでもいろいろな人が話しかけてくれたので、そこで「川崎も応援してください」と会話をするのも新鮮で楽しかったです。
「満員のとどろきアリーナで試合ができることを楽しみに」
──シーズンが開幕しましたが、コロナ禍を受けファンの方々との接し方も変わらないといけない。それを踏まえて、ファンサービスはどう考えていますか?
オンラインですかね(笑)。それは冗談ですけど、入場制限があり、声も出せない中、ホームコートアドバンテージがどういったものになるのかは実際に試合をやってみないと分からないのが本音です。機会を作れれば、またファンの皆さんとコミュニケーション取りたいと思っています。でも、こんな時期ですから避けなければいけないところもありますので、そこは皆さんのアイデアも募ってやっていきたいと思います。
──冗談ではなくオンラインで定期的に番組発信するのはどうですか?
川崎には優秀な発信をする選手がいますから。
──セレモニーは11日ですが、10日と両日とも先着2,500名に永久欠番3選手、川崎の歴史を紹介するアニバーサリーブックレットがプレゼントされます。北さんの現役時代の姿も掲載されていると聞いています。
僕の選手時代の写真は、変な顔の写真ばかりになっています(笑)。シュートを打っている時は口が開いている写真しかないので、自ら率先して「見てください」と言うのはお恥ずかしいと思います(笑)。現役時代を知らなかった人たちが写真を見て、「こういう感じだったのか」など思ってくれたらうれしいです。
──では最後にファンの皆さんに伝えたいことはありますか?
いつも通りのホーム開幕とはいかないですが、リーグ主体でクラブもしっかり感染対策をしています。そこを含めて試合に見に来ていただければと思います。こういう状況の中でも皆さんに勇気を与えたり、元気になってもらえるプレーを選手たちは見せるので、ぜひ会場やバスケットLIVE、その他メディアなどを通して応援をお願いします。この状況が早く落ち着いて、普段通りの満員のとどろきアリーナで試合ができることを楽しみにしています。
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