Bリーグ

Bリーグの2020-21シーズンが10月に開幕する。新型コロナウイルスの影響で昨シーズンは途中で終了となり、今シーズンも観客を半分しか入れられないなどコート外の話題が多くなっているが、シーズンが始まればコートで戦う選手たちが主役となる。ここから開幕まで、テーマ別に注目選手をピックアップしたい。今回は移籍先で主役になるべき日本人選手をピックアップする。

齋藤拓実 主力を固定してきたチームに変革の波

昨年夏にプレータイムを求めて滋賀レイクスターズに移籍した齋藤は、ともに日本人選手3位となる平均13.0得点、5.4アシストを記録する飛躍のシーズンを過ごした。ボールプッシュで素早い展開を作り出し、ピック&ロールからチャンスメークしては外国籍ビッグマンをかわすフローターで自らも得点を量産。富樫勇樹、篠山竜青、安藤誓哉と序列が固まった日本代表のポイントガード争いに割って入るだけのスタッツとインパクトを残した。齋藤を筆頭とする若手の活躍が光った滋賀は、チームとしても過去最高勝率を更新している。

一方、名古屋ダイヤモンドドルフィンズは日本代表の安藤周人を筆頭に実力者を揃えながらも、好不調の波が激しいチーム。Bリーグ4年間で最低勝率と結果を残せなかった。伸び盛りのタレントを擁して将来が楽しみなチームだったはずが、その筆頭株である笹山貴哉も27歳となり、『若いチーム』とは言えなくなっている。この4シーズンは主力を固定して戦ってきたチームに、齋藤は新しい刺激をもたらすことが期待されている。また滋賀でともに戦ったジェフ・エアーズと狩野祐介との連携がすでに取れている点もプラスになりそうだ。

齋藤が昨シーズンのような活躍ができれば、新たな『チームの顔』となるだろう。名古屋Dが目指す速い展開がハマればリーグ上位の成績を収めることも可能だ。笹山も黙って先発の座を譲りはしないはずで、この刺激こそが名古屋Dに足りなかったものだ。ポイントガードの競争がチーム全体の競争を活性化させれば、名古屋Dはまだまだ化ける。

小野龍猛 ポストプレーを解禁し輝きを取り戻せ

7シーズン在籍した千葉ジェッツを離れ、B1に昇格した信州ブレイブウォリアーズへと移籍。長らく千葉の主力を務め、チームをBリーグ屈指の強豪へと押し上げた功労者ではあったが、ここ2シーズンはケガに苦しみ、走るディフェンスを徹底するチームで彼の得意とするポストプレーが重視されなくなったこともあり、出場機会の減少とともにスタッツも落とした。昨シーズンは27試合に出場し、平均16.4分のプレータイムで2.9得点と、千葉在籍時ワーストの数字となった。

信州への移籍理由はもう一度輝きを取り戻すため。小野も「自分が主力で優勝するのが一番」と語り、「ポストプレーもまたゴリゴリやっていきたい」と、チームの中心になる気概を持っている。ヘッドコーチの勝久マイケルも「彼の一番の強みであるポストアップ、そこからのクリエイトにも期待していますし、もう一度大きな役割を持つプレーヤーとして活躍してほしい」と、期待を寄せている。

今シーズンは特別レギュレーションで降格はないが、昇格チームは例年B1の壁に苦労するもの。これまで熟成してきたバスケで勝負する方針で、B1経験の乏しい選手が多い信州にとって、小野の経験は何よりも貴重なものとなる。彼の性格を考えれば心配はいらないだろうが、声を出してチームをまとめ、プレーで引っ張る小野がイキイキと活躍することが、信州がポジティブなインパクトを残すには不可欠となる。

田渡凌 攻撃的ポイントガードとして覚醒を

逆輸入選手として鳴り物入りで横浜に入団した田渡だが、過去3シーズンは周囲の期待を超えるパフォーマンスを残せていない。昨シーズンはケガに泣き、途中で先発の座を奪われた。抜群のリーダーシップでチームを鼓舞し責任を背負ってプレーを続けるが、チームを勝利に導くことができず、プロキャリアの手応えは「3年間でゼロ」と、厳しい評価を自身に下した。編成の問題で特に外国籍のビッグマンで強みを出せなかった横浜で勝利に責任を持つのは大変だったに違いない。その経験を自分の実力に変えられたかどうかが問われるのが、移籍を選択した今シーズンだ。

新天地に選んだのはB1初昇格の広島ドラゴンフライズ。信州と同様にB2を戦ってきた選手を基本的には残したため、B1を戦った経験を持つ選手が少ない。その一方でグレゴリー・エチェニケとトーマス・ケネディ、ジャマリ・トレイラーはB2でも抜きんでた実力を持つトリオで、外国籍選手の実力で苦労することは今回はなさそうだ。

昨シーズンは先発陣にプレータイムが偏っていたが、B1のプレー強度に対抗するにはタイムシェアは欠かせない。古野拓巳に岡本飛竜と点の取れるポイントガードが揃う中でも、特に田渡にはオフェンスでチームを引っ張る働きを期待したい。横浜ではゲームコントロールを重視しなくてはいけない状況で、3シーズンの平均得点は7.8に留まっている。だがもともとはバリバリのスコアラー。再びスコアリングガードとしての能力が開花すれば、広島を上位に導く起爆剤となるはずだ。

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