取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

昨夏に行われたU-19ワールドカップで日本代表は10位に食い込み、男子ではA代表を含めてもFIBAの国際大会における過去最高の順位を記録した。「世界を驚かそう」と臨んだ大会で結果を出した津屋一球と西田優大は、ともに東海大の主力選手となり、さらなる成長に意欲を燃やしている。大学2年目のシーズン、秋のリーグ戦開幕に向けて激しいトレーニングを積む津屋と西田の2人に話を聞いた。

西田「2年目で心も身体も少しずつ余裕が出てきた」

──新人戦が終わってリーグ戦に向けた準備を進めているところだと思いますが、2年生になったことで日々の練習への取り組み方や意識に変化はありますか?

津屋 今はリーグ戦に向けて基礎体力から作り直しているところです。次のリーグ戦では優勝が目的なので、みんなハードにやっています。前回の新人戦では1年生と2年生のチームだったので、自分のプレーだけでなく1年生を気持ち良くプレーさせる気遣いが増えてきたと思います。ここからは上級生が入って来ますが、1年たって東海のバスケットも分かってきたので遠慮してしまうのではなく、逆に必要があれば上級生に指摘もしていくつもりです。そういう姿勢をチームにとって良い形で出せるように意識しています。

西田 新人戦での自分たちの良かったところはやはりディフェンスで、課題はリバウンドとフリースローでした。そこはゲーム前の練習から詰めていかないと身に着かない部分なので、5対5とかゲームライクの練習でそこの質を追い求めるようにしています。2年目になって、心も身体も少しずつ余裕が出てきたと思います。去年はオフェンスだけやって、ディフェンスまでやる体力がなかったんですけど、今年になってディフェンスでも頑張れるようになっています。心の面でも1年生は高校までエースとしてやっていた選手ばかりなので、彼らを精神的な面で支えたりすることも意識できるようになってきました。

──お互いに、1年前と比べてどこが成長したと感じますか?

津屋 西田はディフェンスがすごく伸びました。オフェンスは前から文句なしでしたが、最近はディフェンスも他の選手より良いぐらいになっています。これまではディフェンスが下手だったというより「本気でやってるのかな」って感じでしたけど(笑)、それが最近めちゃくちゃ良くなっていて、すごいですよ。一つ言うとしたら、相手は西田に寄って僕が空くことがあるので、こっちが確率の高い場合はたまにはパスくれよ、ということですかね(笑)。

西田 津屋は泥臭いところでもすごく頑張るプレーヤーで、それにプラスしてシュートがうまくなっています。ペリメーターのシュートも確率が上がったし、今は4番をやっているんですけどピックからリフトしての3ポイントシュートも決めてくれるので、そこは本当に頼りになります。課題は、うまく行かない時にもうちょっとうまく切り替えてほしいかな(笑)。

津屋 顔に出ちゃうんですよ。昔に比べたらちょっとはマシになってるとは思いますけど、でもやっぱ出る時は出るので、そこは直します!

津屋「リーグ戦もですが、最終目標はインカレ優勝」

──2人とも去年の夏はU-19ワールドカップで世界を経験して、東海大で1年を過ごしました。今の目標はどこに置いていますか?

津屋 日本代表になりたいという気持ちもあるんですけど、今はチームのことを考えています。リーグ戦もですが、最終目標はインカレ優勝なので、そこを意識しています。

西田 最終的な目標は日本代表になることなんですが、そのためには今の東海大でチームを勝たせるプレーヤーにならなくちゃいけないので、まずはチームのことを考えています。

──新人戦では3位に終わりました。リーグ戦で優勝するには何が必要になりますか?

西田 一人ひとりが自分の役割をもっと明確にして、それを全うできるプレーヤーにならなきゃいけないと思います。やっぱり勝負どころで決めるのは大倉(颯太)だったり自分だと思っています。その場面で他の選手が行ってしまいタフショットを打つのは違うと思うので。そこで自分がしっかりスクリーンを掛けてもらって決める、そういうプレーを決めることでチームとしても流れが出てくると思います。エースの自覚というわけじゃないですけど……陸さん(陸川章ヘッドコーチ)からもそう言われることがあって、自分がやらなきゃいけないと思うし、負ける試合ではやっぱり自分がやれていないことが多いので。

津屋 さっきは自分にパスが欲しいという話をしたんですけど、勝負どころになったらやっぱり西田が行くべきだと思うし、そこはガツガツやり続けてほしいです。僕個人の役割としては、やっぱり泥臭い仕事で、リバウンドとかルーズボールとかディフェンスはすごく意識しています。ただ、西田や大倉にオフェンスを任せきりにするのではなく、そこに絡んで得点をちょっと乗せていくのも自分の大事な仕事だと思っています。

──高校時代から良い意味でのライバル関係にあった2人だけに、阿吽の呼吸がありますか?

津屋 練習でもやったことがないような合わせが試合で急にできちゃったりすることがたまにあります。それは他の選手とではないことで、「あっ、おう(笑)」みたいな。

西田 ミスした時も、どこが悪かったか2人とも分かっているので言葉を交わす必要がないというか。お互い手を上げて、それで理解できるみたいなところがある2人ですね。

津屋 言葉が必要な時はちゃんと話します。身長も同じぐらいなのでスイッチするかしないか、お互いの考えを確認するとか。でも、そうでもない時は顔を見合わせて終わりですね。

西田「田中大貴選手のディフェンスを真似したい」

──プライベートでも一緒にいることが多いですか?

津屋 遊びに行ったりすることはないですけど、同じ学部で授業もほとんど同じなので、朝から晩まで一緒にいることが多いです。

西田 お互いにマイペースと言うか、全然気にしないですね(笑)。

──ちなみに将来の夢としては、Bリーグでプレーする自分の姿を想像しますか?

津屋 僕はBリーグでプレーすることしか頭にないですね。どのチームに行きたいとかは考えないですが、今ここで頑張って自分のレベルを上げて、できるだけ良いチームに入りたいです。僕は昔から比江島慎選手を尊敬しています。プレースタイルはちょっと違うんですけど洛南の先輩ということもあって、今もよく比江島選手のプレーは見ています。いつか対戦したいと思うし、願うなら一緒のチームでやりたいです。

西田 最終目標は日本代表なので、そこに近づけるようなBリーグのチームに入りたいです。今はディフェンスがうまくなりたいので、お手本にしているのが田中大貴選手なんです。日本代表の合宿でマッチアップしたこともあるんですけど、オフェンスからすると嫌な間合いを取られて、揺さぶろうとしてもブレない芯のあるディフェンスなんです。それで追い込まれてタフショットを打たされることが多くて、そのディフェンスは真似したいです。

──津屋選手も去年の夏はU-19ワールドカップに参加しました。代表で得たものは今の自分にプラスになっていますか?

津屋 もちろんです。日本を背負っているからこそ、代表の練習はすごくハードなんです。東海大の練習も相当ハードですが、それ以上ですね。それに相手が世界となると身長の差があるので、大きい選手を相手にどうプレーするかはすごく勉強になります。

津屋「強い東海大を見てもらえるように頑張ります」

──8月下旬になるとリーグ戦が始まり、総決算のインカレとなります。東海大は名門ですが、筑波大の3連覇があって去年は大東文化大が優勝しており、大学No.1からは遠ざかっています。そこにプレッシャーはありませんか?

西田 高校生の時はディフェンスもできなかったので、東海大に行って試合で使ってもらえるかどうか実は不安しかなかったです。それでもトーナメントからスタメンで使ってもらって、必要とされていると感じることができました。しかし去年は自分が出て一つもタイトルが取れなくて、インカレでは5位という中途半端な成績で、そのことは忘れちゃいけないと思っています。

津屋 僕も去年のインカレでは結構プレータイムをもらって、チームの代表として試合に出ているという自覚はあったつもりです。それでも勝たなきゃいけないというプレッシャーではなく、単純に毎試合でベストを作ることだけを考えていました。勝てずに終わってしまって感じたのは、「優勝しなきゃ」より「優勝したい」です。だから今もプレッシャーを感じながらやるのではなく、優勝したいからそのための練習をやっている感じです。

西田 そうですね。「東海だから」じゃなくて、やっぱりチャレンジャー精神を持って、すべての試合でベストを尽くすことが大事です。「全力を尽くして負けたら仕方がないよ」と陸さんもよく言うんです。結果がどうであれ悔いはないと言い切れるぐらい、全力を尽くしたいと思います。リーグ戦になったらディフェンスを頑張るのはもちろんですけど、見ている人に「違うオーラが出ている」と思ってもらえるようなプレーをしたいです。

津屋 リーグ戦でもインカレでも優勝するのはもちろんですけど、東海のチームカラーはディフェンスとリバウンドなので、それをトーナメントだったり去年のリーグ戦よりもっと出して、強い東海大を見てもらえるように頑張ります。