文=鈴木栄一 写真=野口岳彦、鈴木栄一

「今日の試合を勝てたのは一つ自信にしていい」

6月15日、バスケットボール男子日本代表は強化試合で韓国代表に88-80で勝利した。ニック・ファジーカス、八村塁という2人の新戦力の活躍が大きな勝因になったのは間違いないが、一方でベテラン勢も存在感を発揮した。その一人が、持ち前のタフなディフェンスで韓国の外角シュートを抑えるのに貢献した古川孝敏だ。

相手が複数の主力を欠いたとはいえ、長らく後塵を拝している韓国相手の勝利ということで、大きな意義を見いだすこともできる。しかし、古川は次のように冷静にとらえている。

「勝てたのは良かったですが、まだまだディフェンスでもったいない部分が多く見られました。リバウンドは多く取れていましたけど、もっとオフェンスにうまくつなげていけるようにしないといけない。出だしにやられた後、途中で失点を抑えていましたが、最終的には80失点。まだまだ浮き沈みがあります。塁とニックが入ってきた中で自分たちがどこを生かし、ディフェンスではどうカバーし合うのか。チームとしての戦い方をもっと詰めていかなければいけないです」

ただ一方で、「新しい選手が加わった中、今日の試合を勝てたのは一つ自信にしていいと思います。良かった部分もあるので、全部ネガティブにとらえることはないです」と続ける。

「5人それぞれが持ち味を生かせるように」の精神で

ファジーカスと八村の加入により、シューターとしての自身のプレーに変化はあったのか。「彼らにボールが入ることでオフェンスは落ち着く部分があります。パスをしっかり見てくれていますし、彼らのためのスペースを作ってあげたい。そこからの展開で自分が空いていれば打つ。自分をアピールしたいという強い気持ちがある中でも、どれだけチームのためにできるのか。2人だけでなく、代表は各チームのエースが揃っている。その中で、自分の我を出しすぎず、周りを生かすための動きを意識しています」

古川自身も琉球ゴールデンキングスのエースシューターだというプライドを持っているが、フォア・ザ・チームに撤する中で自身の役割をそうとらえている。そして、常にチームのことを考えている彼だからこそ、ファジーカスと八村に頼りにきりになってはいけないことの大切さを強調する。

「新しいメンバーが入って、チームというのはそんな簡単に出来上がるものではないです。2人に頼りすぎでは、彼らの負担が大きくてなってしまいます。いかに良い流れの中で2人をプレーさせられるか。また、それを生かしながら、自分たちがいかに良いタイミングでシュートを打てるか。5人それぞれが持ち味を生かせるように、時間がない中でしっかりコミュニケーションをとって作り上げていきたいです」

「悪い時にどれだけ自分たちで立て直せるのか」

代表チームでは年齢が上になった古川が意識しているのが、リーダーとしての役割だ。「立場的にもチームの流れが悪い時には声をかけていきたいです。悪い時にどれだけ自分たちで立て直せるのかが大事になってきます。選手たちで変えていかなければいけないところについて、気づいたら声をかけていきます」

ファジーカス、八村のインパクトは本当に強烈だった。ただ、4ブロックを挙げた竹内譲次とともに、チームの屋台骨となるベテランのタフで激しいプレーも、日本のバスケットボールを展開するために欠かせない。そのこともあらためて感じたベテラン勢の奮闘でもあった。