セバスチャン・サイズの千葉ジェッツ加入は、今オフを代表する移籍となった。身長205cmの彼は昨シーズン、サンロッカーズ渋谷において持ち前の機動力でコートを縦横無尽に駆け回り、228cmのウイングスパンを生かし攻守においてゴール下で圧倒的な存在感を発揮した。千葉に悲願のリーグタイトルをもたらす切り札になれるか、大きな注目を集めるリーグ随一の走れるビッグマンに、新シーズンへの意気込みを聞いた。
「リーグ優勝に貢献することが正しい選択だと思いました」
――母国スペインを中心に移籍先にいろいろな選択肢があった中でBリーグ復帰を選び、さらに千葉への加入を決めた理由を教えてください。
まず、素晴らしい経験ができた日本に戻ってくることができてうれしいです。昨シーズンは個人としても良い結果を残せたことで、移籍市場がオープンになった時、世界中からいろいろなオファーがありました。もちろん母国のスペインを筆頭にヨーロッパに残ることも検討しましたが、日本に戻ることが自分にとってベストと判断しました。
中でも千葉ジェッツからのオファーは魅力的でした。千葉はこれまでも天皇杯3連覇、レギュラーシーズン最高勝率を達成するなど、見事な成績を残しています。昨シーズンも好成績でしたが、そこからさらに強くなろうという意欲があります。Bリーグで優勝したことはないですが、今のチームにはその力があります。自分が加入してリーグ優勝に貢献することが正しい選択だと思い、加入を決めました。
――シーズン中断が決まった後、コロナ禍の中でスペインへ帰国するのはとても大変だったと思います。
とても奇妙な状況でした。2月に代表活動でスペインに一度戻りました。そして日本に戻ってきた日、リーグが延期になると聞かされました。その後、練習はしていましたが、いつ再開するのか、これからどうなるのか分からない日々を過ごしました。約1カ月後にリーグの打ち切りが決定したのですが、その時にはすでにスペイン行きの飛行機の便はない状況でした。幸運なことに大使館が特別に便を手配してくれたので他のスペインの人たちと一緒に帰ることができました。
――新シーズンでは外国籍選手のレギュレーションが変わり、昨シーズンと違って3人全員のベンチ登録が可能となります。昨シーズンのSR渋谷ではローテーション制が取られ、出場試合が限定されていました。この変更についての感想を聞かせてください。
SR渋谷では3人の試合数、出場時間はほとんど同じでしたし、起用法には納得していました。チームの結果が示すように、ローテーションは上手く行っていたと思います。それでも今シーズン、3人がベンチ入りできて一緒にプレーできるのは素晴らしいことで、ルールの変更には満足しています。
「どのチームも僕らを止めるのに苦労するはず」
――古巣であるSR渋谷との対戦は、特別に意識するものとなりますか。それとも、他のチームと同じメンタリティで臨みますか。
かつてのチームメートとの対戦は素晴らしい機会で、自分にとってモチベーションが高まる特別な試合となります。SR渋谷の選手たちとは良い関係を築くことができており、彼らは今も友人です。ただ、友人を相手にしても、試合に臨むメンタリティは他のチームを相手にする時と変わりません。誰が相手でも試合に勝つだけです。
――千葉についての印象を教えてください。サイズ選手が加わることで千葉のインサイド陣はリーグ屈指の戦力と見られており、特に富樫勇樹選手とのコンビネーションを多くのファンが期待しています。
千葉はタフで優れた選手が揃っている素晴らしいチームです。みんな人柄が良くて、すぐに馴染むことができました。雰囲気はとても良く、短い間でここまでの関係を築くことができたことに驚いています。コーチ陣も素晴らしく、フィットできると思っています。自分のネクストステップとしてうってつけのチームです。
勇樹はリーグベストのポイントガードです。多くの得点を取れますし、パスをさばくのも上手いです。そして僕たちによるピック&ロールは、どんな相手に対しても大きな武器になるでしょう。試合でどんどん使っていけたら良いと思います。
ガード陣は手堅い陣容だし、ビッグマンはギャビン(エドワーズ)、JD(ジョシュ・ダンカン)がおり、これまで僕がプレーしてきた中でも1、2を争う力があるインサイド陣です。Bリーグの中でも屈指の陣容だと思います。僕たちはタフな選手の集まりで、アウトサイドシュート、ドライブなどによるゴール下での得点といろいろなことができます。リバウンドなど守備力も高く、どのチームも僕らを止めるのに苦労するはずです。
――千葉のファンへの印象を教えてください。
昨シーズン、SR渋谷のホームゲームにも千葉のファンがたくさん応援に来ていたのには感銘を受けました。彼らの存在はチームにとって大きな助けになります。そして船橋アリーナで、選手を大きな声援でサポートしている姿も印象に残っています。
「バスケットボール界の友人たちから、Bリーグについて聞かれる」
――Bリーグも2年目となります。欧州とは異なるスタイルへの適応はすでに問題ないと自信を持って言えますか。
Bリーグへのアジャストは昨シーズンで完了しています。SR渋谷では、すでにBリーグを経験しているライアン・ケリーからいろいろなことを教えてもらえたのが大きかったです。彼のおかげで、リーグに適応するのはより簡単になりました。あとはコート外でもより適応できるように、日本語を学んでいるところです。日本の新しいものと古いものが混ざった部分だったり、食文化が好きです。そして、人々は僕らに敬意を持ってくれます。日本語を学ぶことで、これらの文化をより深く体験したい。それができれば素晴らしいですね。
自分の役割は、これまでと似ていると思います。まずは、守備をしっかりやってそこから攻撃でいろいろなものをもたらす。昨シーズンの経験を通して、自分が中心選手としてどのようなプレーをすべきか学びました。千葉でも中心選手になる準備はできています。
ただ毎シーズン成長して、何か新しい要素を加えていくべきだと思っています。この夏は、特に多くのシュート力を打って、外角シュートの向上に取り組みました。僕はゴール下へのドライブなどアグレッシブに得点を取りに行くのを得意としています。相手がそれを警戒して、スペースができたらすぐに外角シュートを打つ。そうすることでプレーの選択肢が増えます。また、僕のドライブを相手がヘルプディフェンスで止めにきたら、フリーになった味方にパスを出せば良い。さらにスキルを磨くことで、よりアドバンテージを作ることができます。
――欧州で実績を残した選手のBリーグ入りが増えています。サイズ選手の周りでもBリーグへの関心を感じますか。
僕が加入する前は、スペインにおいてBリーグはあまり知られていませんでした。だからこそ、僕にとって日本に行くことは大きな意味がありました。今、たくさんのバスケットボール界の友人たちから、Bリーグについて聞かれます。日本での生活はどんな感じなのか、試合日程はどうなのかとか、どんなチームがあるのかなど。自分がヨーロッパの選手におけるBリーグのマーケットを開拓したという思いは持っています。
これから欧州の選手からの人気はさらに高まっていくでしょう。これまでアジアといえば中国が第一で、次に韓国といった感じで、日本は関心を持たれていませんでした。それが今は大きく変わってアジアの中で日本が一番かもしれないです。
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
シーズンが開幕し、コートに立ってファンの皆さんのサポートを感じることをできるのが楽しみです。皆さんはチームの一員であり、皆さんがいなくては僕たちは何もできません。ファンの皆さんは、コートにおける6人目の存在なんです。皆さんとともに素晴らしい成果を勝ち取りたいので、引き続き応援をよろしくお願いします。
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