文=立野快 写真=野口岳彦

「プレーの時間に比例するような仕事はしたくない」

2年目のBリーグを制したのはアルバルク東京だった。チャンピオンシップに入ってから京都ハンナリーズ、シーホース三河、千葉ジェッツと強豪との接戦を次々に制してこられたのは、ハードワークを前提とするディフェンスがあったからだ。キャプテンの正中岳城はその堅守について、「戦術的な部分だけじゃなく、個人個人が相手の選手に思いきりプレーさせない嫌な守り方を一つひとつやろうとしています」と説明する。「足はしんどい、身体にもキテる。それでも楽しんでいる中で意欲と気概をそれぞれの選手が見せてくれた結果です」と、チームの戦いぶりに胸を張った。

今回のチャンピオンシップ、正中の出場はファイナルでの41秒だけ。それでも腐ることは全くなく、キャプテンとしてチームに戦う姿勢を示し続けた。「プレーの時間に比例するような仕事はしたくないと思っています。試合に出ているからどうこうじゃない、良いプレーをずっと続けられるような後ろ盾というものにならないといけないと思ってやってきたので」と、ベテランとしてチームを支える意識がそこにはあった。

年齢に関係なく、プレーヤーの本能としてコートに立ちたいもの。それでも正中は長くトヨタに在籍する中で、先輩たちから『準備を怠らない姿勢』を見て学んできた。「ケガ人のマネージメントの部分でプレーさせてもらいましたけど、そこで役割を果たせるようにずっと準備を続ける姿勢を見せてきました。これは自分がずっとこのチームにいていろんな人から学んだことです。このチームのあるべき姿を先輩たちに見せてもらってきたからこそ、その姿勢を見せないといけないので」

「練習がしんどいのは特に自慢することじゃない」

A東京の選手たちはシーズン開幕前から、ルカ・パヴィチェヴィッチの練習がどれだけハードかを度々話してきた。その練習をやり通したことで心身ともにどのチームよりもタフになった。だがこれは正中に言わせれば「練習がしんどいのは特に自慢することじゃないので」とのこと。「どのチームもタイトルを取るためにやっていることだし、もちろん何か自信を持つためのきっかけにはなると思いますけど、それだけではたどり着けない」

正中がポイントとして挙げたのは練習量ではなく、力を発揮する賢さだ。「自分たちの特徴をさらに継続して発揮できるようコントロールするっていうことも一つ大事です。『もっともっと』という若い選手もいて勢いもある中で、一歩立ち止まってコントロールする。そういう強みもあったと思います。そうやってすべてコントロールされる中でプレーできるチームになっていくことが、継続した強みを発揮できることにつながると思います。まだまだここからがスタートだと思ってやっていきます」

活力のある若手をうまくコントロールするのも正中を中心としたベテランの役割だった。「行きすぎてから止めるのではなく、彼らをうまく気持ち良くさせないといけない。『やめろ』ではなくて『どうすべきか』を示す必要があります。僕もそうでしたし、そういう流れがずっとあるんですよ。若い選手に思いっきりやらせる雰囲気も必要だし、ミスをしてもなお何か持ってきてくれるようなチームの状況を作ってあげたいと思います」

「こういう舞台に立つことには特別意味がある」

プレータイムはわずかでも、チームの雰囲気を作ることで正中は戦いに参加していた。むしろ、グループ全体をコントロールしていたと言うべきだろうか。一発勝負のファイナルでこそ、彼が作る『チームの雰囲気』は本来の力をストレートに発揮する意味で役に立った。

「ファイナルみたいな試合では全部が全部は許容できないですけど、でも思い切ってやることが良い結果に繋がるということは彼らが感触として得られたと思います。一つのミス、いろんなミスが結果を逆にすることがあると、なんとなく学んだんじゃないですかね。だからこういう舞台に立つことには特別意味があると思います。また強くなる、うまくなる、ステップアップするきっかけになっていくんじゃないかと思いますね」

若手を中心としたエネルギー全開のチームを正中らベテランが上手くバランスを取ったことで今回の優勝に繋がった。優勝を果たしたとはいえ、アルバルクはまだまだ若いチーム。優勝を経験したことで若きスター軍団はさらに成長するだろう。そこに正中の存在は欠かせない。