「マッチアップする選手の映像はみっちり見ました」
2年目のBリーグを制したのはアルバルク東京だった。信条とする『ハードワーク』で千葉ジェッツのトランジションを封じ、85-60と大差でファイナルを制した。爆発力のある千葉をわずか60点に封じたディフェンスがすべてだった。指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチはヘルプを使わず個々が目の前の相手を守ることを選手たちに求めた。レギュラーシーズンではダブルチームに行かないことで落としたゲームもあったが、その中で選手それぞれのディフェンス力は磨かれた。
『スーパールーキー』馬場雄大はゴール下を支配したアレックス・カーク、MVPに輝いた田中大貴に続く14得点を記録。さらにチームトップの3スティールを挙げ、攻守で存在感を見せた。その馬場は「みんなのディフェンスが一つになれたと感じました」と、やはり守備を誇った。
勝因については「良い準備」と断言する。「誰に聞いてもそう言うと思います。優勝するだけの時間を費やしました。もちろん映像も毎日見て、僕がマッチアップする選手を乗せたらダメだと分かっていたので、石井(講祐)選手も小野(龍猛)選手もこの1週間でみっちり見ました」
特にポストアップから攻撃の起点となる小野を自由にさせなかった働きは大きかった。「龍猛さんが左サイドでポストをもらった時とか、ムーブのコールのゲートのところとか、全部頭に入っていて。そっちにやらせたというのが強いかもしれないです」と馬場は振り返った。
テクニカルファウルが高パフォーマンスの引き金に
第3クォーター残り3分54秒、馬場は「人生で初めてかもしれない」と振り返るテクニカルファウルをコールされた。ディフェンスリバウンドからボールをプッシュし、バックビハインドドリブルで富樫勇樹をかわしてダンクに持ち込んだが、背後から飛び込んだギャビン・エドワーズに阻止されたシーンだ。エドワーズのブロックは馬場の手を叩いており、馬場は審判に必死にアピールしたのだが、その行為がテクニカルファウルの対象となった。
「富樫さんを抜いた時点で、もう行ったと思ったので。『ちゃんと見てくれよ』と言って、次のポゼッションでも言ってしまったんです。僕が反省しないといけないところです」
その直後にベンチへと下げられた。「ちょっとカッとなっちゃったんですけど、すぐに切り替えられました。逆にある意味燃えたというか、冷静にものを見れるようになったと感じました」と振り返る。闘争心に火がつきながらも、頭をクールに動かした結果、最終クォーターだけで10得点の荒稼ぎを見せ、最終盤を待たずしてファイナルに決着をつけた。
「場数を踏み、経験を一番得ることができた」
馬場は筑波大学在学中の昨年6月にA東京とプロ契約を結んだのだが、ルーキーであることを忘れてしまうほどのインパクトをシーズンを通じて放ってきた。「優勝云々ではなくて、この1年間やってきたことを振り返っても、よくやったと言いたいです。そういった部分で自分が選んだ道を正解にする、頑張ってきたからこその結果だと思います」と自分の選択が間違っていなかったことを馬場はこの大舞台で証明した。
そんな馬場は優勝で締めた今シーズンの最大の収穫として『経験』を挙げた。「学生とは違う経験を1年間させてもらいましたし、そのことによって大事な試合でも落ち着きが持てるようになりました。場数を踏み、経験を一番得ることができたと思います」
Bリーグデビューを果たした当初は硬さが見られ、シュートを打てる場面で躊躇したりと迷いが見られた。だが日本代表として国際舞台でも活躍し、ケガを乗り越えて優勝を勝ち取った現在の馬場は「自分の力を過信することなく、ルカコーチの下、ひたむきに一生懸命やったからこその結果」と自信に満ちている。
「チャンピオンなので、僕たちが引っ張っていかないといけないと思うので、また一からやっていきたいです」。馬場はすでに次のシーズンを見据えている。
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