文=丸山素行 写真=野口岳彦

日本人ビッグマンの気概と「早く解放されたい」本音

アルバルク東京はチャンピオンシップのセミファイナルでシーホース三河との激闘を制し、ファイナルの舞台に駒を進めた。三河の大黒柱である桜木ジェイアールを2戦合計6得点に封じたことが、大きな勝因だったのは間違いない。その大役を果たしたのが竹内譲次だった。

ファイナルを控えた昨日、公開練習後の取材に応じた竹内は現在の素直な心境を語った。「気が張りっぱなしというか、セミファイナルからなんですけど、平日がすごく落ち着かない。正直、早く解放されたいです(笑)。コートを離れても考えますし、プレッシャーというか、なんでしょうね。そこを目指してやってきたので『いよいよやって来たな』と」

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その大きな身体とは裏腹に、ファイナル前のプレッシャーに苛まれているのは少々意外だった。だが、それは自身が背負う責任に対し真摯に向き合っている証拠だ。ファイナルで激突する千葉ジェッツには、帰化選手のマイケル・パーカーが在籍する。トランジションバスケットを得意とする千葉の中心選手でもあるパーカーを止めるのは竹内の役目だ。

「彼の得意なことをやらせたくないです。やられてしまう状況は間違いなくあると思いますが、できるだけ自分の働きでそういうシチュエーションを少なくする手助けをしたい。もちろん、5人で守るんですけど、例えば1対2になった時は自分の駆け引き次第で守ったりできると思うので、そういう状況で自分が守ることができたら相手のリズムを崩すことができる」

竹内が言うように、数的不利な状況を守り切ることができれば流れはA東京へ傾くだろう。また竹内は日本人ビッグマンとしてのプライドを持って、ファイナルを戦うと意気込んだ。

「自分の強みを出したいです。帰化選手を取ったら優勝争いができるというような感じにはしたくない。日本のリーグなので彼らと互角以上の戦いをすることが自分にとってもモチベーションになりますし、日本のリーグなので日本人が頑張らなきゃと、負けられない気持ちもあります」

対ジェッツのカギは「良い状況判断」

千葉の武器は言わずもがな、高速トランジションオフェンスだ。ディフェンスを信条とするA東京にとって、千葉のトランジションをどこまで抑えられるかが、勝敗を分ける一つのポイントとなる。それは逆に、A東京がどれだけ良いオフェンスの終わり方ができるかということの裏返しだ。竹内もそれを理解し「状況判断」が大事と説く。

「逆サイドから寄ってくるので。相手のスティールには気を付けたいです。あとは良い状況判断というか、シュート、パス、ドライブで何をするのか。自分のポジションはこのチームのバスケットでいろいろなことを求められているので、良い状況判断をしたいです」

竹内が言うように、速攻を防ぐ上で最も大事なことはスティールをされないことだ。特に今シーズンのスティール王に輝いたパーカーは要注意人物となる。

「彼はすごく賢い選手ですし、瞬発力がある選手なので。自分が通ると思っていたパスも瞬発力で取られる、今までも何回も自分が通ると思ったパスを彼にひっかけられてターンオーバーになったこともあるので、そこは過去の苦い経験から対処していきたい」と竹内は警戒する。

「ファイナルでソフトにやるほうが難しい」

A東京はエースの田中大貴とジャワッド・ウィリアムズがコンディション調整のため、昨日の練習では別メニューとなった。だが指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチは「ケガ人や代表選手がいない時期もあったが、それを乗り越えたシーズン」とコメントしており、特に問題視していない。竹内も「コーチもケガ人が出たら他がカバーするという考え方でやってきたので、どういう状況でもやるだけです」と意に介さない。

確かに今シーズンのA東京の強さは、誰が出ても攻守レベルが落ちないチーム力にある。それはどのチームよりも練習量を積んできた彼らだからこそ持てる強みだ。「もちろんキツかったです。ただ勝つためにコーチが必要だと思ってやってきた練習ですし、コーチを信じることができた」と、指揮官への信頼とともに過去のキツい練習を振り返った。

ルカコーチが求めるハードなディフェンスが遂行できず、厳しい指摘を受けたこともあったと竹内は明かす。それでも「ファイナルでソフトにやるほうが難しい。チームの作戦もありますけど、相手が一番嫌がることを考えて、自分でも作戦を立てたい」と信条とするディフェンスを軸に決勝を戦うと意気込んだ。

気が張るのもあと2日の辛抱。その重圧から解き放たれた瞬間に待ち受ける光景は、果たして。