『ハードワーク』という強みを存分に発揮した勝利
シーホース三河とのチャンピオンシップ・セミファイナルで延長の末に逆転勝利を収めたアルバルク東京。ビハインドを背負う時間帯がずっと続いたが、焦ることなく自分たちのプレーに集中して、後半になってディフェンスから流れを引き寄せた。いや、三河が我慢できなくなるまでオフェンスを止め続けたと表現するほうが正しいだろう。田中大貴も「後半のディフェンスに尽きます」と勝因を語る。
そのディフェンスを支えたのがハードワークで、リードした展開での試合巧者ぶりに定評のある三河を凌駕した。チャンピオンシップが始まる前に田中はチームの強みとして『ハードワーク』を挙げていたが、まさにその通りの展開となった。
ファストブレイクからの得点はA東京の20に対し三河は2。第3クォーター終盤にアイザック・バッツのリバウンドから比江島が走りブチ込んだ速攻は鮮やかだったが、二度とは許さなかった。逆にA東京は流れが悪かった前半も含めてコンスタントに速攻から得点を挙げ、追撃の大きな力となった。「もともと三河さんはトランジションディフェンスがあまり良いチームじゃないのはスカウティングでヘッドコーチからもずっと言われていました」と田中は言う。
「逆にあれだけインサイドにサイズがあるのでオフェンスリバウンドはすごく強いし、そこをしっかり身体を張って守れば走れると、という話はあったので。そこはインサイドの選手がみんな頑張ってくれていたし、走るってことは自分たちが良いディフェンスができているということです。明日も本数が増えれば増えるほどウチのペースになっていくと思っています」
延長戦までもつれる激闘も「相手はもっとキツい」
そうしていくうちに三河が根を上げた。40分間での逃げ切りに失敗した時点で、三河にエネルギーはもう残っていなかった。「実際に三河の選手たちがどうだったかは分かりませんが、最後までハードワークし続けるっていうのはウチの一つの武器です」と田中は言う。
「何回も言ってますけど、自分たちには他のチームよりも1年間ハードに取り組んできて、そこの部分の自信はあるので。やっぱり最後、誰が出ても足止まることなく動き続けますし、明日どういう展開になるか分からないですけど、今日延長まで行ったことも『相手はもっとキツい』ととらえて、『自分たちはもっと激しくできる』というのを明日もう一回しっかり見せられれば」
また、田中の働きでもう一つ見逃せないのが、三河のエースである比江島慎との『ライバル対決』に完勝したことだ。「比江島選手のことは結構よく分かっているつもりで、自分はもうずっと対戦してきているので、彼のクセ、このタイミングでやって来るだろうなとか、他の選手より分かると思っているので、なるべく自分がついたほうがいいと思って。逆に金丸選手につくのはあまり得意じゃないので、そこはザックがよりフィジカルです。雄大の方がやっぱり機動力がありますし、祥平さんもフィジカルです。その役割分担は選手で話し合って。そのコミュニケーションは取れていると思います」
「彼に良いようにやらせないと、向こうの流れも悪くなる」
そうして引き受けた相手のエース、比江島は栃木ブレックス戦でそうだったように、勝負どころのオフェンスでは必ずボールを託された。その対応について「来いや、とは思ってないですけど」と苦笑しつつ田中は語る。「スコアラーとして日本で一番すごい選手だと思っているし、彼がボールを持てば持つほどそれはウチにとって脅威でしかないので。ただ逆に言うと、彼に良いようにやらせないようにすると、やっぱり向こうの流れというのも悪くなると思うし、なんで今日はオフェンス部分もそうですけどディフェンスのとこでも自分のところの責任は大きかったと思っています」
比江島は12得点、田中は9得点。田中は「いつもより力が入っている感じがあった」と自身が振り返るように、シュートタッチは決して良くなかったが、アレックス・カークとのピック&ロールで作ったズレを多彩なプレーで広げ、執拗に繰り返すことで三河を苦しめた。
「単発に見えるかもしれないけど、相手もそれに対してずっと動かないといけない。その疲労がボディブローのように、最後は相手の足に来たんじゃないかとは少し感じます」と田中は言う。田中に揺さぶられ続けた比江島は延長戦に入って早々に足を攣り、ラスト5分でシュートを打てなかった。ライバルに競り勝ったことで、田中の『ハードワーク』に対する自信はより深まったに違いない。
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