ポール・ジョージ

スランプ脱出の35得点、クリッパーズがマブスに完勝

2勝2敗のイーブンで迎えたクリッパーズとマーベリックスのプレーオフファーストラウンド第5戦。開始直後はマブスが主導権を握ったものの、その後はカワイ・レナードとポール・ジョージの両エースがコンスタントに得点を重ねたクリッパーズの一方的な展開となった。約5分半で24-2のランで一気に抜け出したクリッパーズが、第2クォーター以降も攻守に緩みを見せることなく154-111で完勝している。

クリッパーズにとって勝利と同じぐらい良いニュースが、ポール・ジョージの復調だ。ジョージはこのシリーズの初戦こそ27得点を奪ったものの、その後の3試合は調子を崩し、得点は14、11、9と伸びなかった。この3試合ではフィールドゴール47本中成功わずか10本、成功率21.3%という深刻なシュートスランプ。それがこの試合ではフィールドゴール18本中12本成功(66.7%)、35得点を記録。数字だけでなく、シュートに行く積極性もこれまでとは違った。

ジョージが積極的にアタックするようになったことで、レナードもリズムを合わせるように調子を上げて32得点を記録。こうして両エースの揃い踏みとなれば、クリッパーズは止められない。

試合終了直後のオンコートインタビューでジョージは「僕は暗闇の中にいた」と発言。その後の会見でそのことを問われ、「これまでとは違う場所に来た気がする。これまでとは違うメンタリティで試合に臨んだ。そうすることで自分を見つけ出すことができた」と話した。

オーランドのディズニー・ワールド内に設けられた『バブル』と呼ばれる隔離エリアがNBAのシーズン再開の舞台となってもう1カ月。最初の検疫期間ほどではないものの、選手たちは『バブル』の中で不自由な暮らしを強いられながらバスケットボールを続けている。よりプレッシャーの掛かるプレーオフが始まり、ジョージは精神を病んでしまった。

「正直に言えば、メンタルヘルスを軽視していた。閉ざされた環境で過ごしているうちに不安になり、落ち込んで、試合に集中できなくなった」とジョージは言う。

ただ、その闇から引き出してくれたのはコーチやチームメートだった。「言葉をかけて、励ましてくれた。それが大きな支えになって、僕は元に戻ることができた。バスケットボール漬けの生活は簡単ではないんだ。息抜きをするのも難しい。この環境を整えてくれたNBAには感謝しているけど、やっぱり難しい部分はある。気持ちを試合から離して、戦闘態勢を解除する方法を見つけ出さなきゃいけなかった。その点、チームメートが本当に助けになってくれた。一緒に時間を過ごしてゲームをしたり、ドッグ・リバースも僕と会話をしてくれた。家族も支えてくれた。僕は本当にたくさんの人に声をかけてもらって、こうして元気になれたんだ」

ジョージの後に会見場に姿を見せたレナードは、「彼はずっとアグレッシブだったよ。ただシュートが決まらなかっただけ。今日はシュートが入ったから、みんなジョージがアグレッシブに見えたんだろう。それだけのことだよ」と、ジョージのメンタルヘルスに対する報道陣の興味をそらそうとした。大袈裟なことにしたくないと考えての言葉であるのは明らかで、その意味でもチーム全体でジョージを支えようとする意志が感じられる。

攻守に安定した働きのできるジョージは、プレーオフになるとギアを一段階上げてプレーの質を高める勝負強さを備えている。それが『Playoff P』と呼ばれる所以なのだが、いつもと違う『バブル』の環境では、ギアを上げるだけではなく、下げることも必要だったのだろう。ここまでルカ・ドンチッチが強烈なパフォーマンスを見せるマブスに大苦戦を強いられているが、ジョージが自分を取り戻したことでクリッパーズは大きな武器を手に入れたことになる。

一方で、マブスは後がない状況に追い込まれた。ひざを痛めているクリスタプス・ポルジンギスは第4戦に続いて欠場。ドンチッチも足首のケガを気にしているのは明らかで、フィジカルに守られたことに納得のいかないジャッジも重なり、フラストレーションを抱えながらのプレーで22得点と抑えられた。