文・写真=鈴木栄一

完全アウェーの沖縄で『気持ち』の勝利

5月12日、チャンピオンシップのクォーターファイナル。名古屋ダイヤモンドドルフィンズは敵地にて琉球ゴールデンキングスと対戦した。フィールドゴール成功率49.2%と高確率でシュートを沈め、守ってもリーグ1位の琉球のお株を奪うタフなディフェンスを見せ、71-69で競り勝っている。

第1クォーター、名古屋Dはジャスティン・バーレルの8得点で8-2と先行。アイラ・ブラウンの3ポイントシュートなどで10-10と一時は追い付かれるが、笹山貴哉の3ポイントシュート、さらには残り1秒で大宮宏正がゴール下のシュートを沈めて7点のリードを奪う。

第2クォーターも名古屋Dは良い流れをキープ。ハッサン・マーティンが早々に個人ファウル3つとなりベンチに下がった琉球とは対照的に、セカンドユニットが奮闘。残り約7分にはジェローム・ティルマンが速攻からのレイアップでバスケット・カウントを奪い、32-16とダブルスコアにまで突き放す。

ここから琉球は古川孝敏の3ポイントシュート2本を含む連続8得点で追い上げ、第3クォーター開始直後にも古川が再び3ポイントシュートを沈める。ところが直後にヒルトン・アームストロングが4つ目のファウルで、課題であるビッグマンのファウルトラブルに苦しむことに。ここで名古屋Dは張本天傑の3ポイントシュートでリードを再び10点に広げ、再び主導権を握った。52-45とリードして迎えた第4クォーターも流れは変わらず、残り約4分半にバーレルがシュートを沈め68-55と大量リードに。

「自分たち、チームメートを信じてプレーできた」

だが、ここからホームの大歓声の後押しを受けた琉球が猛追を開始し、残り7秒でブラウンが3ポイントシュートを決めて2点差に詰め寄る。ここで名古屋Dのパスミスで、残り6秒で琉球のオフェンスに。だが、ここで琉球は「本当は2点を取りに行ければ良かったです。オーバータイムに持ち込めれば、展開的にこちらの流れでした」と佐々宜央ヘッドコーチが語るように、岸本にボールを持たせて2点を取りたいところだったが、名古屋Dがそれを許さない。結果的に田代直希が厳しい体勢から打たされた3ポイントシュートが外れ、名古屋Dが辛くも逃げ切った。

勝った名古屋Dの梶山信吾ヘッドコーチは、「チャンピオンシップらしい気持ちと気持ちのぶつかり合った試合でした。今日は選手たちがやるべきことを遂行し、しっかり自分たち、チームメートを信じてプレーできたことが勝利につながったと思います」と語る。

「琉球さんはリーグNo.1のディフェンスですが、それに引かないで逆にプレッシャーを楽しもう、プレッシャーをかけてくるので強い気持ちでアタックしようと言いました。守備では相手の得意とするピック&ロールについての対策で、ベストの答えをみんなで共有してやることができました」

そして指揮官は「戦術よりも気持ちの入ったディフェンスをコートで出せたことが良かったです」と、チャンピオンシップの大舞台で強い気持ちを出せたことが最大の勝因だったと強調する。その強気の姿勢を示す例として、2点リードで迎えた残り6秒でのディフェンスという状況でのタイムアウトでは、「2点を取られても負けではないから3ポイントシュートを警戒」といった受け身の指示ではなく、「とにかく勝つ! それだけでした」と振り返っている。

「対策も大事ですが、まずは気持ちの部分」

一方、西地区首位でホームアドバンテージがある琉球だが、これで後がなくなった。15得点の岸本隆一は「悔しいですが、明日あと2つ勝つしかない。そこに向けて気持ちを切り替えて臨むだけです」と前を向いている。そして「ピック&ロールでなかなかズレが作れなかった。対策をしてくることは想定していましたが、それに対して最後までアジャストできなかった」と、69点と低調に終わったオフェンスの改善点につい振り返る。

それでも佐々ヘッドコーチは「対策も大事ですが、まずは気持ちの部分で選手に思いっきり戦ってもらえるように持っていきたい」と、強いメンタルの必要性を説いた。

図らずも両指揮官が勝敗を分けた要素を『気持ちの強さ』と語った今回の試合。今日以上に激しい潰し合いとなることが必至となる明日、心身ともによりタフに戦ったチームがセミファイナルへの切符をつかむ。