ハーデン退場でロケッツは失速、サンダーが貴重な1勝を挙げる
接戦ではあってもロケッツにリードを長く許す試合展開。ここから勝負どころで相手のリズムを狂わせ、自分たちに流れを呼び込む、司令塔としてのクリス・ポールの面目躍如たるパフォーマンスが、サンダーに勝利をもたらした。
ロケッツは残り3分からジェームズ・ハーデンがジェフ・グリーンの3ポイントシュートをアシストして逆転。ハーデンは続いて自らレイアップを沈め、サンダーを一気に突き放しにかかる。ただこの直前、ハーデンは個人5つ目のファウルを犯していた。ここにクリス・ポールは目を付け、逆襲の足掛かりとした。
フィジカルなマッチアップでハーデンを苦しめるルグエンツ・ドルトをコートに戻してディフェンスを引き締めると、攻めではハーデンを狙い撃ちに。しかしロケッツも勝負どころとあって集中を高め、シューターのグリーンが相手の裏を突くダンクを決め、シュートタッチの良くなかったPJ・タッカーがこの試合最初の3ポイントシュートを沈める。
サンダーにとっては大きなピンチで、浮足立ってもおかしくないところだが、ここでポールは自らのレイアップ、また自ら切り込んでスティーブン・アダムスの得点をアシストと、大事なポゼッションごとに2点ずつ着実に返すことで若い選手たちを落ち着かせ、同時にロケッツにプレッシャーを掛けていった。
残り24秒で1点差の場面。ロケッツのリスタートの際にポールはわざとハーデンに突っかかり、ファウルをコールされる。もつれ合ったためにビデオ判定となり、ハーデンにファウルがコールされれば退場となっていたところ。この『策略』は失敗に終わったが、それでもロケッツの選手たちにハーデンのファウルトラブルを必要以上に意識させ、チームディフェンスを狂わせた。
それらの布石が残り14秒の攻めに生きる。激しく当たれないハーデンをあっさりかわしたポールは、2人の選手がカバーに来るのを冷静に見て、右コーナーで待つシェイ・ギルジャス アレクサンダーへパスを送る。このオープンスリーが決まって、土壇場でサンダーが逆転に成功した。
「シェイはあそこで決めてくれるヤツだよ。それが分かっていればパスは簡単だ」とポールは何事もなかったかのように話す。
その後のディフェンスでダニエル・ハウスJr.を止められず同点に追い付かれ、最後のオフェンスでポールがドライブ仕掛けて放ったリバースレイアップは惜しくもリングに弾かれ、試合は延長に入ったのだが、この時には劣勢だったはずのサンダーが完全に主導権を握っていた。
結果的に、延長開始早々にハーデンがファウルアウト。ロケッツ守備陣がシュートが得意ではないドルトにあえて打たせたシーン、オフェンスリバウンドをドルトに自ら取られたのは計算外だった。そこに手を出したハーデンが退場となる。そこからサンダーはポールの3ポイントシュート2本を含む12-0のランでロケッツを圧倒。最終スコア119-107と快勝を収めた。
試合後のクリス・ポールは「0勝3敗からひっくり返すのがどれだけ困難かを考えれば、今日やらなきゃいけなかった」と語る。連敗から一つ返し、いまだ1勝2敗でリードを許している状況に変わりはないが、彼はこの1勝を足掛かりにロケッツを揺さぶり、サンダーが巻き返す可能性を探っていくに違いない。
ロケッツの指揮官、マイク・ダントーニはジャッジを巡り激怒していたが、試合が終わるとクリス・ポールの司令塔ぶりを素直に称えた。「15シーズンかけて彼が高めてきたものを出されてしまった。とんでもないクラッチプレーヤーだよ。残り24秒で我々が1点リードしていたが、彼は自分たちのやるべきプレーをきっちりと遂行した。ウチはできなかった」
敗れたロケッツだが、ケガで離脱しているラッセル・ウェストブルックがコート上で練習できるまでに回復しており、次の試合からは復帰するかもしれない。1勝を返したサンダーにとっては、ウェストブルックが戻って来てからが本当の勝負になる。