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ウェストブルックを上回るインパクトでサンダーを圧倒

ジャズのルーキー、ドノバン・ミッチェルはプレーオフでまた一段階成長している。レギュラーシーズンは20.5だった1試合平均得点が27.5へと伸びた。数字だけでなく、勝負どころのオフェンスを託されるゴー・トゥ・ガイとしてチームを勝利に導く心象的なインパクトも大きい。

チームとしても、ミッチェルのアタックを最大限に生かすシステムを敷いている。優れたシューターを配置して彼のためのスペースを広げ、ルディ・ゴベアやデリック・フェイバーズが献身的にサポート。ミッチェルと並んで好調なリッキー・ルビオが多彩なプレーで相手守備陣をかき回す。そこで最後にミッチェルがオフェンスを託され、決めきっているからこそサンダー相手に3勝1敗でリードしている今がある。

サンダーとのプレーオフ1回戦は、「リーグ最少失点を誇るジャズが守り勝つか、サンダーの『OK3』が打ち勝つか」という構図で見られていたが、始まってみれば違った。「サンダーがいかにしてミッチェルを止めるか」が大きなポイントとなっている。

シリーズ当初のサンダーは、アウトサイドのシューター陣を警戒しつつ、ミッチェルは1対1で止めればいいと考えていたようだが、『Playoff P』ことポール・ジョージがマッチアップしてもストップできない。ゲームに与えるインパクトでミッチェルがラッセル・ウェストブルックを上回るという、サンダーにとっては予想もできなかった事態が起きている。

第4戦は113-96とジャズの大勝。スコア以上に試合途中でサンダーの心を折ったことが印象的なこの勝利でシリーズ突破に王手をかけた。この試合でミッチェルは33得点を挙げているが、「自分に与えられたタスクをどうこなすか、それだけを考えている。数字を気にし始めたら試合に集中できない」と素っ気ない。

スタッツについてのコメントを引き出そうとなおも粘るメディアに対して彼は「ターンオーバーがゼロだったことにも注目してほしい」と笑顔で答えた。確かに、誰よりも警戒され、厳しい局面でボールを託されているにもかかわらずターンオーバーを記録していない。

地味な守備のチームと見られていたジャズは、ミッチェルの台頭で強く魅力的なチームになりつつある。「冷静でいなくちゃいけない。シリーズ突破にはもう一つ勝たないといけないからね」とミッチェルは言うが、周囲の関心は「このチームがどこまで行けるか」に向かいつつある。サンダーを下せば、次はロケッツと当たることになるだろう。ここで番狂わせを起こせば、次は王者ウォリアーズ……。

東にセブンティシクサーズがあれば、西にジャズがいる。ここ数年は戦う前からプレーオフ進出チームが決定づけられていたようなものだが、今シーズンはサプライズチームの存在がプレーオフをよりスリリングなものにしている。