母校の福岡第一に『里帰り』した狩野祐介、後輩たちにボール50個を寄贈「感謝を忘れない人になってほしい」

母校の福岡第一に『里帰り』した狩野祐介、後輩たちにボール50個を寄贈「感謝を忘れない人になってほしい」

2020/08/04

福岡第一

OBに声を掛けて実現「みんな協力を申し出てくれました」

先月、福岡第一のOBを代表して狩野祐介が母校を訪れた。新型コロナウイルスの影響で思うように活動できない現役生を勇気づけたいとの思いから、OBに声を掛け合ってモルテンのバスケットボールを50球購入。バスケ部に寄贈したのだ。

狩野は2008年卒業。東海大を卒業後に東京エクセレンスで3年、滋賀レイクスターズで4年プレーし、プロキャリア8年目の開幕を名古屋ダイヤモンドドルフィンズで迎える。B1屈指のピュアシューターの一人、そしてリーダーシップを発揮できる選手との評価を得ており、名古屋Dでは新加入ながら副キャプテンに指名された。

福岡県出身の狩野は、今もオフに時間を見付けては福岡第一に足を運んでいる。ただ今回は体育館の床がピカピカになっているのに驚いていた。井手口孝コーチは「コロナで練習ができない間に磨いたんです」と笑みを見せる。

この体育館は狩野にとって中学と高校の6年間を過ごした場所。彼が通っていた福岡市立春吉中は福岡第一のすぐ隣。「中学に入学した次の日に練習試合でこの体育館に初めて来たのを覚えています。思い出すとキツい練習ばかりだったので、あまり思い出したくないんですですけど」と苦笑を漏らしながらも、こう続ける。

「今は世の中がこんな状況ですけど、後輩たちがみんな頑張っています。僕も新しいチームで練習が始まってキツい時期ですが、ここで後輩たちから元気をもらえて、良いリフレッシュになります」

今回のボール寄贈のきっかけは、井手口コーチがあるOBとの雑談の中で、「プロ野球選手がやるように、練習で使わなくなった古いボールを母校に送ってくれればいいのに」と言ったのがきっかけ。この言葉がOBの間に伝わり、古いボールではなく新品が50球用意されることになった。

「井手口先生がそう言ったのであれば、もう動くしかないなって(笑)。最初はBリーガーだけで話していたんですけど、連絡できる卒業生みんなへと話が大きくなって、みんな『分かった!』と協力を申し出てくれました」と狩野は言う。

「一番驚いたのが鵤ですね」と、狩野は鵤誠司(宇都宮ブレックス)の名前を挙げる。「連絡して経緯を伝えたら、『お世話になったのに今まで何もしてあげられなかったから、是非協力させてほしい』と。ずっと僕を呼び捨てにしてた誠司がこんなこと言ってくれるんだ、って感激しました(笑)。みんなそう思ってくれていたんです」

後輩とはいえ学年で3つ下、一緒にプレーしたわけではない狩野と鵤の関係は少し驚きだが、「誠司の兄ちゃんと狩野は中学の同級生なんです」と井手口コーチが教えてくれた。弟の鵤誠司も中学の時からこの体育館に練習に来ていたそうだ。「サボっていると誠司がチクりに来ていましたよ(笑)」

福岡第一

「これだけ大変な思いをしたから、優勝させてあげたい」

いつまでも母校のことを気に掛ける教え子たちの思いが、井手口コーチに響かないはずはない。「こういうことを忘れないのはありがたいことですよ。本当に、涙が出ますね」という声は少々震えている。

「どの学校にも同窓会がありますが、同窓会費を納入してくださいとお願いしてもほとんど集まらなかったりすると聞きます。卒業したら母校なんて関係ない、という人も結構いるでしょう。でもウチの生徒たちは、現役だった頃にOBや同窓会の人から助けてもらって、自分が卒業したらそうするのが当然と思って、今もこうやってくれています」

Bリーグができて、福岡第一の部員たちもプロを意識してバスケに取り組むようになっている。ボールを寄贈することはもちろん、プロ選手として活躍する狩野が体育館に顔を出すこと自体が、選手たちにとっては大きな刺激になる。コロナ禍で大変な年を過ごす後輩たちに、狩野はこんなメッセージを送った。

「連覇ができるのは第一高校だけなので狙ってほしいのですが、それを意識しすぎると僕の高校時代みたいな決勝になっちゃう。あまり気にしすぎることなく練習をしっかりやること。練習でやってきたことをいかに試合で出せるかが勝負だし、それができれば優勝できます。もう一つ、僕が思うのは感謝を忘れない人になってほしいということです。感謝を忘れず頑張ってください」

これを聞いて井手口コーチは、『僕の高校時代みたいな決勝』と狩野が言った2008年のウインターカップに触れた。比江島慎を擁する洛南との決勝は、1ポゼッション差のクロスゲームの末に71-73と競り負けている。「私がもう少ししっかりしていれば優勝できた。頑張ってくれた選手には良い思いをさせてあげたい、優勝させてあげたいと思ってやっています。今の選手たちももちろんそうだし、ウインターカップ3連覇というチャンスはなかなかないから、どうにか実現させたい」と井手口コーチは言う。

「まだ本当の意味で日常が戻って来たわけではなく、バスケットをやるにしても厳しさを要求しづらい状況です。でも、崩したらいけない部分はしっかり守っていきたい。寄贈してもらったボールを使って良い練習をして、何とか優勝させてあげたいと思います。今年の3年生はこれだけ大変な思いをしたから、優勝させてあげたい」

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