文=鈴木栄一、写真=野口岳彦、鈴木栄一

強みにも弱みにもなるセカンドユニットの『エース』

3月31日、川崎ブレイブサンダースは、本拠地とどろきアリーナでアルバルク東京と対戦。高確率でシュートを沈めて89-73と快勝し、前日に敗れた借りを返した。勝利の立役者となったのは藤井祐眞。3ポイントシュート3本成功を含む15得点、6アシストとチームに勢いをもたらした。

試合後、北卓也ヘッドコーチが、「完璧というくらいのゲームをしてくれました」と語る会心の勝利について、藤井は何よりもディフェンスが良かったと振り返る。「まずは相手にやられたくないところをやらせなかった。ディフェンスで昨日、相手との距離を詰めすぎて抜かれたり、簡単に飛んでしまうことで抜かれてしまったところをしっかり修正できたのが大きかった。ディフェンスでしっかり守れたのが一番です」

またこの試合、川崎にとって大きかったのは特に上位チーム相手に点が取れずに苦戦していたベンチメンバー主体のオン・ザ・コート「1」の第2クォーターにおいて、23-16とA東京を突き放すことができた点だ。

セカンドユニットの一員である藤井は、好調だった理由をこう話す。「今日の僕らセカンドユニットはシュートが入ったので、ああいった良い形でいけたと思います。シュートが入れば流れも良く、セカンドユニットでも相手と大差なくプレーできます」。ただ、シュートが水ものであることは十分に認識しており、「シュートが入らない時、ディフェンスでもっと我慢できたら今後にもっと生かせます」と油断はない。

「セカンドユニットがダメな時は自分がダメな時」

ベンチスタートではあるが、篠山竜青、辻直人と日本代表の先発コンビとプレータイムにほとんど差がないことが示すように、藤井は川崎にとって欠かせない戦力となっている。またニック・フアジーカスの控えとして出場するルー・アマンドソンは、自ら仕掛けて積極的に点を取りに行くスコアラータイプではないため、藤井こそがセカンドユニットのエースと言える。

普段から控えめな言動の藤井が自らを『エース』と称することはない。ただ、セカンドユニットのキーマンが自分であるという自覚と覚悟は持っている。「自分が引っ張っていこうという意識はあります。セカンドユニットがダメな時は自分がダメな時、試合の中で第2クォーターだけダメだった時は、自分の責任と感じています」

「積極性の部分ではニック、辻さんが出ていない時間帯なので思いっきり打とうと。ショットクロックの時間がなくなってきたり、うまくボールが回らない時は、高い位置でボールをもらって自分で崩していこうと思います」

勝負の終盤戦も「自分のやるべきことは変わらない」

豊富な運動量を生かした激しいプレッシャーディフェンスに加え、堅守を武器とするA東京を相手に2試合とも2桁得点を挙げたように、藤井は川崎にとって攻守ともにチームに活力を与えてくれる大きな存在だ。当然、勝負の終盤戦、そしてチャンピオンシップへの期待も大きい。

「シーズン序盤から自分のやるべきことは変わらないです」と彼は意気込みを語る。「ディフェンスをハードにし、オフェンスも積極的に起点となる。得点が取れなかったり、相手に走られたりすることがここ数試合は多く見られたので、スコアの面ではよりどうやったらうまくできるか考える。ディフェンスはチームディフェンスをもっと統一していく。そしてリバウンドにルーズボールと、細かいところで負けないようにしていきたいです」

川崎の課題としてセカンドユニットが出るオン「1」の時間帯と言われて久しいが、それは藤井こそが川崎躍進のカギとなっていることを指し示している。だからこそ彼のパフォーマンスにはより注目していきたい。