千葉県船橋市出身の原修太は、ホームアリーナの船橋アリーナからほど近い場所で育った『生え抜き』の選手で、NBLラストシーズンにデビューを飾って以来、少しずつステップアップして今の地位を築いてきた。プロ4年目の昨シーズンは20試合に先発出場し、初めてプレータイムが20分を超えた。Bリーグになって優勝候補へと飛躍したチームにようやく成長が追い付き、欠かせない主力としての立ち位置を確保したように見えるが、本人は「そうでもない」と語る。そんな原に、これまでの4年間と、これからさらにチーム内競争が激化するであろう新シーズンの意気込みを聞いた。
「バスケができないことよりも嫌なことはない」
──アーリーエントリーを除いて、千葉での4年目のシーズンが終わりました。この4年間で得たものは何でしょうか?
このチームで4年間やってきて、いろいろな経験をしてきました。同ポジションに上手い選手がいる中でプレータイムを勝ち取る競争をしてきて、昨シーズンはスタートの2人が抜けたことで僕が先発で出させてもらいました。もともとチームの中心でやっている選手は、ミスがあっても得点は取れるし、良いアシストもできるので、一つのミスでプレータイムが減ることはあまりありません。そういうプレータイムが確実な選手が多いチームで、競争をしてプレータイムを勝ち取ってきたことは、他の同世代の選手に負けていない部分です。
──千葉でなければもっと早くからプレータイムをもらえたんじゃないかと、移籍が頭をよぎったことはありますか?
このチームにいたい気持ちはずっとあります。ただ、毎年シーズンが終わった時に一度フラットに考えるので、出たい出たくないは関係なしに「自分がこういうチームにいたらどんな感じかな」という想像はちょっとしますね。ですが、ウチのスタメンや他チームの主力選手に負けているとは思わないし、その気持ちはこの2年か3年は持ち続けています。
──逆に言うとキャリアをスタートさせた頃は自信が持てなかったということでしょうか?
そうですね。1、2年目はミスをして指摘されると、それに対して反省ばかりしていました。特に2年目はめちゃくちゃ悩みましたね。練習から上手く行かず、その気持ちがプレーにも出てしまっていて。何か一つを指摘されると、いろいろと考えすぎて他も上手く行かなくなるし、自分の良さも出せなくて、人生で初めて1シーズンの3ポイントシュート成功率が20%台になりました。当時は気づかなかったですが、今振り返ってみるとメンタル的にも相当ハマっていて、全然楽しめていませんでした。
──今も同じ環境にいる原選手ですが、どうやってその壁を乗り越えたのでしょうか?
3年目のシーズンに入る前の夏の練習が終わった後に、実は1カ月ぐらい休んだことがありました。1カ月もバスケットができなかったのは、小中高大学プロとやってきてその時が初めてです。ただ、そのおかげで考え方も変わったんですよ。バスケができないことよりも嫌なことはないって。
コーチからは厳しく育ててもらっていて、言っていることも間違っていないし、今も練習や試合後に思い返したりしています。ただ自分の中で、「僕はこういうプレーでやっていく」という自信もついてきました。あと、その時期から僕は『適当』という言葉を使うようになったんです。例えばノーマークのシュートを外しても考えすぎるのではなく、次のディフェンスで頑張ろうみたいな。そういう大雑把な性格になりましたね。
当時は上手く行かなすぎて、どうしたら良いのか分からなかったんですけど、その時に荒尾(岳)さんや阿部(友和)さん、伊藤(俊亮)さんがいてくれたおかげで、腐ることなくやっていけました。プレータイムが少なくても文句一つ言わずチームのために頑張っている3人を見て、僕もつらくてもやるしかないと思いました。なので、その3人には感謝しかないです。
──考え方が180度変わったんですね。
本当にそんな感じです。溜め込むこともなくなりましたし、口が悪くなったと思います(笑)。もともと怒ったりする性格ではないですが、言いたいことは言うようになりました。それまでは口に出すことが悪いことだと思っていたので、思ったことを誰にも言っていなかったんです。でも、吐き出すことも必要だなと。
「エースの調子が悪い時に得点が取れるような選手になりたい」
──気持ちの変化があったことで、プレーにも変化はありましたか?
適当という言葉で片付けたらダメかもしれないですが、そのマインドでいることで上手く行くようになりました。今思えば、2年目に悩んだことがやっと花開いたというか、開き始めているみたいな。やっぱり心の持ちようは大きいと感じましたね。仮に自分が先発で出られるようなチームでずっとプレーしていたら、こういう経験はできなかったとも思います。
──その時期を経て昨シーズンは20試合で先発を務め、プレータイムやスタッツも軒並み伸びました。
昨シーズンはチームに貢献できる自信がある中で開幕を迎えました。ですが開幕2試合ではプレータイムを2分ぐらいしかもらえなくて、ちょっと折れかけましたね。でも、その次の三河戦では勝負どころでシュートを決めたりとアピールできて、そこからプレータイムをもらえるようになりました。ただ、端からは上手く行ったシーズンに見えるかもしれないですが、自分の中ではそうでもなかったです。
──それはチームの波とは関係なく、原選手自身がということですか?
そうですね。昨シーズンはスキルコーチも入って、自分の中でこのプレーを極めて行こうという感じでやってきたので自信がありました。それでも実際はプレータイムが少なかったりして、自分の評価を過信しすぎていたとも思いますが、現実とのギャップがすごかったです。
そのギャップがプレータイムに繋がるわけですが、ベンチから見ていて「自分だったらここでもっとこうする」というのが沸いてきて悔しかったです。その気持ちは良い意味では自信ですが、行きすぎると過信になってしまうので難しいですよね。それでも終盤で連勝してきた時は、すごく信頼してもらっていると自分でも感じていました。
──大学時代はスコアラーとして活躍していましたが、当時のようにもっと得点面で貢献したいという思いはないですか?
それはもちろんあります。でも一番の目標は、自分がプレータイムを得て優勝することです。千葉の富樫(勇樹)中心というのはブレない軸で、そこに不満はないし、彼は頼れるエースです。ただ、そういう選手と一緒にやる2、3番は想像以上に難しいポジションなんです。ボールのタッチ回数も少なくなるし、2018-19シーズンの石井(講祐)さんやアキ(チェンバース)を見ても分かるけど、得点がそんなに伸びるポジションでもありません。なので、一回の精度を上げるのはもちろん、エースの調子が悪い時に得点が取れるような選手になりたいですね。
「NBA選手はみんなお尻の筋肉がすごい」
──今オフには強力な補強もし、チーム内競争はより激しくなります。昨シーズンに得た信頼を失わないためにも、継続した活躍をしなければいけません。なかなか気を抜くことはできないですね。
僕は千葉のこのポジションで4年間やってきているので、チーム内競争が激しくなっても自信はあります。ただ、正直悔しかったのが、同じポジションで3人も補強したんですよね。それは、そのポジションが弱いと思われたからじゃないですか。なので、今までいたメンバーや自分が活躍して、その考えを覆したいです。ただ、(佐藤)卓磨も赤穂(雷太)も本当に良い選手で、(セバスチャン)サイズやシャノン・ショーターも入るので、これで今年も優勝できなかったらヤバいという危機感を感じています。
──話は変わりますが、原選手と言えば筋肉。ご自身の一番お気に入りの筋肉を教えてください(笑)。
えーっと(笑)、お気に入りというかもっと鍛えたいと思っているのがお尻です。NBAのジャパンゲームを見に行った時に、NBA選手はみんなお尻の筋肉がすごくて、すぐにトレーニングコーチにお尻を鍛えないとヤバイと話しました(笑)。僕は外国籍選手に当たり負けしないことを考えて身体を作っています。日本代表には得点力があって賢いプレーをする選手は多いですが、そこに外国人に負けないでファウルをもらえるような選手がいればもっと面白くなると思うんです。なので、そこに近づくためにも鍛えています。
──それでは最後に千葉ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
昨シーズンはチームが上り調子の中で終わってしまったのがすごく残念でした。僕は出場していませんでしたが、無観客の試合を経験して、本当にブースターの力を感じました。来シーズンも観客を入れられるかどうかは分からないので、そのためにも手洗いうがいをしっかりして、この情勢をどうにかして早くみんなの前でプレーしたいと願っています。昨シーズンは新型コロナウイルスで終わって、その前はファイナルで負けてしまい、自分が千葉に入ってからの4、5年は悔しいシーズンばかりなので、今年こそBリーグ制覇目指して頑張ります。たくさんの応援をお願いします。
原選手のお話を聞いていると「千葉ジェッツでやってきた」というプライドをとても感じます。ちなみに先日話題になった原選手の女性化画像については「結構事故なのに、一番反響が良かったので複雑な気持ちです(笑)」とのことでした!#Bリーグ #chibajetshttps://t.co/whME8Pa73K pic.twitter.com/aCNmQioiSH
— バスケット・カウント (@basket_count) July 10, 2020
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