文=泉誠一 写真=Getty Images、古後登志夫

八村塁のゴンザガ大は8強入りを懸け明日試合

日本とアメリカは時差があるために、我がスマホにはどんどん情報が送られ、朝から賑やかである。いきなりランキング1位、トーナメントの左上のトップシードを陣取るヴァージニア大学が、サウス地区最下位16位のメリーランド大学ボルティモアカウンティ校に敗れる番狂わせ(アップセット)に沸くマーチマッドネス(NCAAトーナメント)の話である。

昨年からゴンザガ大学の一員として八村塁が、日本人初となるNCAAトーナメント出場を果たしている。縁もゆかりもないアメリカの大学にもかかわらず、感情移入して見られるようになったことが喜ばしい。日本時間3月23日(金)よりスウィート16(16強/Sweet Sixteen)に突入する。ちなみに準々決勝はエリート8(Elite Eight)、準決勝はファイナル4(Final Four)と頭文字のアルファベットを揃えた通称でおなじみだ。

ゴンザガ大学(ウエスト地区5位)はエリート8を懸け、ゼイビア大学(同1位)にアップセットして勢いに乗るフロリダ州立大学(同9位)と対戦する。決戦の舞台はレイカーズとクリッパーズの本拠地であるステープルズセンターということからも、その熱狂の度合いが分かるはずだ。

アプリにより生活必需品のスマホに溢れるバスケ情報

試合結果はもとより、クロスゲームになればその行方を見逃さないように、逐一スマホがブルブルと震えて伝えてくれる。昨年、総務省が発表した日本人のスマホ保有率は71.8%。個人保有率は20代が94.2%、30代も90.4%と今や生活に欠かせない。そして、それら世代こそがBリーグのターゲットでもある。

愛するウィザーズや現地スポーツニュースのアプリのおかげで、我がスマホはバスケ(ウィザーズ)情報で溢れ、リアルタイムで勝手にインプットされていく。同じく応援する東京ヤクルトスワローズにも公式アプリがあり、シーズンが始まれば試合情報などがスマホの待受画面に表示され、いつでも気にかけていられる。プロ野球では当たり前かと思いきや、公式アプリがあるのはセ・リーグではスワローズだけ。日本ではSNSの方が合っているのかもしれない。

いずれにしても、生活に欠かせないスマホの中がバスケ情報で埋まることで認知度を上げ、文化にしていくきっかけになると期待したい。Bリーグのパートナーであるソフトバンクや富士通はその分野に長けており、もしかするとすでに着手している話かもしれない。ソフトバンクホークスは6つもアプリが用意されていた。

プロリーグの優勝を一発勝負で決める状況への『疑問』

マーチマッドネスも、スウィート16と同じ金曜日から始まるセンバツ高校野球も一発勝負のトーナメントである。高校であれば3年間、大学は4年間だが、NCAAはアーリーエントリーで卒業を待たずにNBAへ行くケースが多い昨今、学生スポーツには時間的制限がある。同世代による戦いだからこそ、何が起こるか分からない。2回戦を終えたNCAAトーナメントはすでに14試合のアップセットが起きており、そこに熱狂させられてしまう。

今週末にファイナル4が行われるWリーグは、初めて一発勝負のトーナメントでチャンピオンを決めるプレーオフが採用された。Bリーグのチャンピオンシップは、セミファイナルまではイレギュラーな3戦2先勝方式(1勝1敗になった時、第3戦は5分ハームのミニゲーム)で決着をつけるが、決勝だけは一発勝負になる。

NBAもプロ野球の日本シリーズでも、優勝決定戦はホーム&アウェーでの7戦4先勝方式である。プロとして最高峰の技術を魅せるためにも必要なフォーマットだと感じてならない。

引退を表明しているため、最初で最後の一発勝負に臨んでいる大神雄子(トヨタ自動車アンテロープス)は、プレーオフに対してこう持論を説いた。「7戦でも一発勝負でも、選手自身にとってやることは変わらない。NBAはホーム&アウェーがあり、その中でホームコートアドバンテージもある。Wリーグも同じような状況になれば一発勝負ではなく、バスケットの認知度や集客を考えてもホーム&アウェー形式の方が良いかなと思う」

筆者も同感である。同じ相手との連戦の中で、ヘッドコーチらスタッフ陣の戦略、戦術や選手たちの対応力が試される。学生スポーツとは違い、一人のスター選手の力だけで勝てるほど甘くないのがトップリーグである。スタッフやベンチメンバーを含めたすべての選手の力を引き出しながら、勝利に向かうことこそがプロの妙技と言えよう。さらに、長いシーズンをかけてともに戦ってきたファンがいる。ホーム&アウェーでの優勝決定戦になれば自ずとチケットは完売となり、より大きなアリーナの必要性を実感させるにも手っ取り早い。

マーチマッドネスの熱狂を目の当たりにしているからこそ、BリーグやWリーグが一発勝負の運まかせで優勝が決まってしまう状況に少し疑問に感じてしまう今日この頃である。その一方、1試合で終わってくれることで、財布にやさしいことも否めない。ファンの声とともに、プレーヤーズファーストを鑑みながら、より熱くなれる答え探しは続く。