構成・写真=西宮ストークス

梁川禎浩は2009年にパナソニック・トライアンズでキャリアをスタートし、今シーズンがプロ通算9シーズン目。31歳になってプレーは円熟味を帯び、精神面での成熟度も増している。コート上ではポイントガードとしてゲームの流れを変え、チームを良い方向に持っていく舵取り役。ゲームを離れてもキャプテンとしてチームをまとめることに腐心し、時には若手選手の良き相談役にもなる。今シーズンがストークス在籍5シーズン目。プロ生活の半分以上を過ごした、深い思い入れを持つチームの危機を救うべく、梁川は持ち前のリーダーシップを発揮する。

「チーム全員が同じところを目指している」

──今シーズンここまでのチームの戦いを振り返って、どんな印象ですか。

外国籍選手を始めケガ人が出てしまったり、チームとして上手く乗れていないなと感じます。接戦で落とす試合が多いことも事実ですね。第3クォーターまで良い感じで攻めていても、第4クォーターで離されたり、勝負どころで相手に簡単なプレーで点を獲られたりする。攻めていても相手にディフェンスでしっかりプレッシャーをかけられて得点が獲れないなど、波に乗れていない感じがします。

──チームが結果を残せていない要因は、どこにあると思いますか。

僕たちはB2から今季B1に上がってきて、ほぼメンバーが替わっていません。それもあって最初の何試合かは、チーム全体でB2との違いに戸惑いがありました。それに対してチームでもう少し準備ができていれば、違った形でスタートが切れたのかなと思います。

──今のチームはどんな雰囲気ですか。

以前から選手、コーチ陣も含めてチームの全員が、どうにかしてこの状況を打開しないといけないと感じていて、全員で意見を出し合っています。それがなかなか良い方向に向かなかったのが前半戦だったのかな。

──結果が出ない状態が続くと、チームがバラバラになりかねません。その点で、現在のストークスはどんな状態ですか。

兵庫出身の選手も多いですし、関西出身のメンバーも多くて仲が良い。負けが続いていますがバラバラになることはなく、一体感を持ってやれています。前半戦をああいう形で終えてしまったので、今はなにがなんでもB1に残ることが目標。チーム全員が同じところを目指しているので、一体感はより増していると感じます。

──梁川選手はベテランの世代です。チームをまとめたり、責任感も強くあるのでは?

そうですね。みんな仲が良い分、良い方向に行けば強いんですけど、間違った方向に行ってしまうと全員がそっちに流れてしまう。そうなると総崩れになりかねないので、そうならないように意識してチームを見ています。

「僕たちには後がありません」という反攻の決意

──ここから巻き返さなければなりません。今、自分がするべきことは何だと思っていますか。

今のチームは試合の中で、オフェンスでもディフェンスでも停滞する時間があります。40分間を通して良い状況がなかなか作れない。そういう悪い時に、いかにチームを良い方向に持っていけるかが、今の僕の役割だと思っています。見ていて悪いなと思ったところを次の試合や次の週ではなく、そのゲームのなかですぐに修正しないと、試合に負けてしまう。僕たちには後がありません。ゲームのなかでいかに良い方向に転換できるかが、今の僕の仕事です。

──試合が悪いペースで進んでいる時は、ポイントガードとしてどんな対応をするのですか。

その試合ごとに違うんですけど、例えばディフェンスが全部引いてしまって、ボールマンにプレッシャーがかからない。それが相手にとっては楽な状況で、やりたいオフェンスばかりやられてしまうことがあったりします。僕は相手のポイントガードにマークにつくことが多いので、そんな時は一人で前からディフェンスをしていく。そうすることで後ろのメンバーが感化されてプレッシャーを強くしたりするのが、良い方向に向かう一つのプレーかなと思います。試合が僕たちにとって悪い流れになった時に、全員を同じ方向に向かせるため、良いプレーコールをすることなどが今の僕の役割だと考えています。

──B1昇格を目指して戦っていた昨シーズンもチーム状態が落ちた時期があり、そこで梁川選手が発揮したリーダーシップがチームを立ち直らせました。

負けている時は各個人が何かしらの不満を持っています。それを自分の中で溜め込むのは良くない。不満に思うことを発散するために、僕が話を聞いてあげるのも一つの手かなと思っています。若手にも同じ目線で聞いてあげて、抱えている不満を発散させてあげる。思っていることを吐き出せば、気持ちも少しは楽になると思うんです。今は誰一人、良い気持ちでバスケットをしている選手はいません。不満があるなら出すだけ出せば、みんなが同じ方向を向いていける。その役割を、僕がやっていきたいと思っています。