小野龍猛

トヨタ自動車アルバルクに在籍していた小野龍猛は千葉ジェッツがbjリーグからNBLに参入したタイミングで千葉に移籍した。「自分が主力となってチームを強くする」。小野はその精神を貫き、千葉を現在の強豪へと押し上げた。そして、以前と変わらぬ思いを胸に信州ブレイブウォリアーズへ戦いの場を移した。

「自然が豊かで子供には環境的にもすごく良い」

──移籍のリリースから時間が経ちましたが、もう長野に引っ越されたのですか?

ちょうど昨日、引っ越してきました。

──そうなんですね。ではまだ長野の良さはそこまで分かっていないですね。

そうですね、引っ越してきたばかりなのでまだ何も分からないです。ただ、自然が豊かで子供には環境的にもすごく良いと感じます。僕は生まれも育ちもずっと東京なので、自然に囲まれた暮らしはしたことがないんです。

──オフはどのように過ごしていましたか? 昨年はファイナルが終わった翌日にトレーニングを開始していたと聞きましたが。

リモートでトレーニングをしたり、あとは公園を走ったりしていました。ボールは全然触ってないですね。

去年はやりすぎた感がありました。もちろん身体の動きは良くなったのですが、今までと違う感じがあって、なかなか結果に出なかったですね。必ずしも多くトレーニングすることが良いとは思わなくなったというか、自分に合ったトレーニングをしないとと思いました。

──トレーニングの開始を早めたのは初めてだったのですか?

これまでは代表活動などがあったので、シーズンが終わってもバスケットはずっとやっていた感じです。ずっとトレーニングをしていたのは初めてかもしれないですね。

──結果的に長期のオフとなりましたがトレーニング以外はどのように過ごしていましたか?

家でひたすら子供と遊んでましたよ(笑)。ウルトラマンとか仮面ライダーが好きなので戦いごっことか。他は特に何もしなかったです。休むのも仕事かなと。

──では移籍についてですが、7シーズンを過ごした千葉を離れることで悩んだりはしなかったですか?

そこまで悩まなかったです。今までずっとやってきて、チーム的にも僕的にも合わない部分が多少なりとも出てきました。そこのズレもあって、他のところでもう一度やってみたいという思いはありました。

──ズレというのは、個とチームがフィットしなくなってきたということですか?

それは少なからずあると思います。ケガをしてからリズムがつかめなくなったのと、今までやってきたことと少し違うことをチームがやるようになっていったので。ケガのせいではないと思うんですけど、フィットが難しくなったとは思いました。ポストプレーが必要なくなってきたとも感じましたし。

小野龍猛

凱旋試合で求める「大ブーイング」

──なるほど。新キャプテンの西村(文男)選手がリーダーシップを取り続けていてくれて助かったと言っていました。チームとズレを感じる中でそれを継続することは苦ではなかったですか?

練習では自分のプレーもできていたので、何も気にせず声掛けなどはしていましたね。あからさまに言葉や表現でおかしな態度を取ればチームは崩れていくと思いましたし、そこは気を付けながら自分を追い込みつつ、指示などはしていました。

──プレータイムが少ないことで不貞腐れたりする選手も中にはいるかと思いますが。

もちろんいると思いますけど、そこはやっぱり違うかなと思って。プロとして当然かなと。

──移籍に対し迷いはなかったと言えど、千葉への思い入れは人一倍あると思います。リリースで「敵のチームとして船橋アリーナに帰ってくることを楽しみにしてます」とありましたが、どのように迎えてもらいたいですか?

それは大ブーイングですよ。千葉のお客さんは今までのメンバーを拍手で迎えることが多かったですけど、僕はそれは違うかなって。敵となるからには倒したい気持ちを持って戻って来るわけですから、その敵に対して拍手はちょっとおかしいと。

──それでも功労者に対してブーイングはしづらいのかなとも思います。

いや、そこはブーイングしてほしいですね(笑)。そういう中でプレーして、自分が活躍して勝てばさらに僕は気持ち良いです。

でもブースターに対しては本当に感謝しかないですね。それこそ最初の頃はお客さんもそんなに入っていなかったですし、そこから支え続けてくれている人もいますしね。ああいう空間を作ってくれて、本当にブースターの皆さんには感謝しかないです。でもやっぱり敵は敵なので、そこは区別していただきたいかなと(笑)。

──さっぱりしてますね(笑)。

引きずらないタイプなので。

──オファーは他にもあったのではないかと思いますが、その中で信州を選んだは何故でしょうか?

決め手はやり甲斐ですね。千葉に移籍した時もbjからNBLに入ってきたタイミングでやり甲斐を感じました。信州はB2で2年連続で優勝してますし、B1に上がったばかりのチームですから。すべてにおいてやり甲斐をすごく感じられたので、そこに尽きますね。

──リリースで「今まで培ってきたことを最大限発揮」したいとありました。強豪チームでロールプレーヤーとして優勝を目指すという選択肢もあったと思います。

僕にそれは似合わないと思ったんです。今までやってきたことに対してのプライドもありますし自信もあるので、僕にそれは無理だと。僕は優勝の1ピースになるという考えが全くなくて、こういうチームに入って、自分が主力で優勝するのが一番かなと思っています。優勝候補よりもこういうチームで優勝した方がインパクト強いじゃないですか。10分出て優勝するより、30分出て優勝したいです。

「ポストプレーもまたゴリゴリやっていきたい(笑)」

──なるほど、選手としてそのような考え方はアリだと思います。ただ、これまでの歴史が物語っているように、B2からの昇格組はずっと苦戦が続いています。

確かにそうですが、そのことは一切考えてなかったですね。逆にワクワクしています。まずはチームに入って良いマインドを伝えたり、勝ち方を少なからず知っていると思うので、そういった部分で引っ張っていけたらと思っています。

──千葉は勝って当然という状況だったので、逆のプレッシャーとの戦いになるかと思っていました。

今は勝って当たり前みたいに大きくなりましたけど、千葉も最初は弱かったですから。当時もそういうことは考えずにプレーしていました。そこまで信州の歴史を知っているわけじゃないですけど、これからだと思っています。大きくなる見込みもあるじゃないですか。そういったグループの一員になるのもうれしいですし、大きくしていくのが好きなんですよ。

──チームの人気、集客の面でも小野選手の力が必要になってくるのではないでしょうか?

そうあってくれれば一番うれしいですね。スポンサーさんも含め、長野を盛り上げていこうという人が1人でも増えたらうれしいです。強いチームの方が応援されやすいと思うので、僕たちはチームの勝ちだけを考えていきます。ジェッツの時もそうでしたが、魅力のあるチームにしていけば、スポンサーさんやお客さんは自ずと増えていくと思っています。そこに尽きるかと。

──個人的に平均何点くらいを目指しますか?

落ちているのはここ1、2年だけで、それまではずっと平均10点前後だったので、そこまではしっかり伸ばしたいです。それができたらチームも良くなると思うし、自分の存在を証明できればなと思っています。ポストプレーもまたゴリゴリやっていきたいです(笑)。

──では最後に、再起のシーズンへの意気込みと信州のファンにメッセージをお願いします。

信州はB1に上がって1年目のシーズンですし、すごく楽しみです。自分ももう一度輝けたら最高だと思っていますし、信州も僕を取って良かったと思ってもらえるような1年にしたいです。

もう僕は信州の選手なので、ブースターには本当に楽しみにしていただけたらと思います。どういう感じでシーズンが始まるか分からないですが、笑顔で皆さんと会えてのシーズンスタートがベストだと思っています。僕もコンディショニングをしっかり上げて、チームの勝利にしっかり貢献できるように頑張るので、ホームアリーナに一人でも多くの方が来てくれることを願っています。

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