取材=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一、野口岳彦

「1試合を犠牲にしたことに責任を感じています」

横浜ビー・コルセアーズは11勝29敗、B1全18チーム中ボトム4に沈んでおり、昨シーズンに続き苛烈な残留争いに巻き込まれている。先週末の川崎ブレイブサンダース戦では、強豪相手に力の差を見せ付けられて連敗。第1戦は30点差をつけられる完敗、第2戦は前半をリードして折り返したものの、後半に逆転負けを喫した。

これで4連敗。現状を何とか打破しようと個々が奮闘するも、結果が出ない。そんな中、がむしゃらな働きが一際目立つのがルーキーの満田丈太郎だ。土曜の第1戦、満田は開始10秒と3分に辻直人の3ポイントシュートに対してそれぞれファウルを犯し、川崎を勢いに乗せるとともに自身はファウルトラブルでベンチに下がる不本意な出来に終わった。

勝敗が決した後の第4クォーターを除けばプレータイムは6分、先発の役割を果たせなかった第1戦の自分に「審判がどうとかじゃなく、人として終わっていたので」と厳しい自己評価を下す。「そういう部分は絶対に出しちゃいけないんです。年上の選手がいる中でプレータイムをもらっているのだから、言い訳はできません。ただひたむきにやらないといけない。1試合を犠牲にしてしまったことに責任を感じています」

第1戦は散々だったが、昨年末から定着していた先発を外れた第2戦にカムバック。ベンチスタートながらハシーム・サビート・マンカの20得点に次ぐ18得点を挙げた。特にサビートが封じられて劣勢となった後半、横浜のオフェンスの中心となった。時には失敗もあるかもしれないが、苦しい時間帯に仕事のできるルーキーに、ファンの期待は集まりつつある。

「ヘッドコーチから求められていることをしっかりやる。それを全力でやることが結果につながると信じて、120%でひたすらにやりました」。これが満田が見いだした『回答』だ。

「自分で判断して的確なプレーを心掛けています」

満田は特に年明けの天皇杯の中断期間明けから調子を上げている。大学キャリアの最後に痛めた腰のケガに長らく苦しめられたが、トレーナーと取り組んだ対応が功を奏して今は問題がない。そしてもう一つ、攻撃面で積極性が出たことも大きいと満田は語る。「川村(卓也)さんから『練習中からしっかり打っていけ』とアドバイスをいただいて、自分らしさを出すことがチームへの貢献になると分かりました」

1年前の加入当初の自分を「迷ったプレーをしていました」と振り返る。「止まってパスすればいいのにジャンプして空中で探してパスするようなプレーでミスをしていて、『行くなら行く、パスならパスとメリハリをもっと付けろ』と川村さんに言われて、それをやっていくうちにタイミングを判断できるようになってきました」

今の満田は、筑波大時代にスコアラーとして名を馳せたスタイルをBリーグでも発揮しつつある。分かりやすい変化は外のシュートだ。「今まで外がなくて、僕なんかは捨てておいて『打たせておけ』みたいな感じでした。自分がそこを改善しないとドライブも生きないので。アタックするために3ポイントシュートも打っていますし、今は他も補っているところです」と満田は語る。実際、今年に入って12試合で3ポイントシュートは21本中10本成功。47.6%は上々の数字であり、こうなると守る側は『打たせておけ』というわけにはいかない。

リングへアタックする際の視野も広がり、自信を持ってドライブできるようになった。「以前はざっくり『アタックしろ』だけだったのが、マッチアップしている時に相手を観察できるようになって、指示も『こういうシチュエーションの時はこう動け』と細かくなりました。それをこなすことに加えて、自分で判断して的確なプレーを心掛けています。指示がより具体的になって、自分としては分かりやすいです。それをしっかり遂行できるように心掛けています」

「その積み重ねが最後の1点差になると思っています」

しかし、満田のプレーは光ってもチームは連敗。優勝候補である川崎との差を満田はこう語る。「ディフェンスのボールに対する執着心、ハードプレッシャー、そこのクオリティが川崎のほうが確実に上でした。第3クォーターの出足で逆転されたのですが、そこで最悪でもリードを広げさせず我慢しないといけないところで、どんどん離されました。細かい差ですが、一つひとつの差が出てしまいました」

チームは奮闘しているし、満田自身は間違いなく調子を上げているが、降格のリスクを負っている状況で余裕のあることは言っていられない。「試合はいつ何が起こるか分からないし、どのチームも必死になって来るので、そこで引かないようにハードに守って、しっかりアタックして。その積み重ねが最後の1点差になると思っています」

結果が出ない理由を満田は「積み重ね」という言葉で説明した。「最後の最後までプレッシャーを掛けられるかどうか。その部分が足りないからここまで負けてきています。最後もしっかり力を出す。最後まで何が起こるか分からないことを考えながらハードにプレーする。それを全員ができれば、自ずと勝利はついてきます」

横浜はB1で平均年齢が最も高いチームだが、その経験が重要な局面での勝負強さにつながっていないのが現状だ。川村からのアドバイスを満田は着実に成長へつなげているが、「全員が40分間ハードに、一つひとつのプレーを積み重ねる」という満田の声は年上の選手たちに響くだろうか。2年連続の残留プレーオフに進むことになるのでは、あまりにも厳しい。横浜が一つ上のレベルに行くためには、ここで変わるしかない。