八村塁

『8試合で1.5ゲーム差』を縮められるか

新型コロナウイルスのパンデミックにより、NBAは3月11日から中断が続いている。それでもリーグは安全面を配慮した上での再開に向けて調整を続け、7月末からのシーズン再開案がNBA理事会で承認された。それでも感染リスクを最小限に抑えるべく、レギュレーションは大幅に変更される。オーランド近郊にあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内の施設でのセントラル開催、さらにはNBA全30チームのうち参加チームを22に絞り、レギュラーシーズンの残る日程を短縮する。

参加22チームの中には八村塁が所属するウィザーズも含まれている。東カンファレンスでは30勝34敗のネッツが7位、30勝35敗のマジックが8位。これを24勝40敗のウィザーズが追うことになる。

レギュラーシーズンは各チーム8試合の『シーディングゲーム』(順位決定戦)へと短縮される。ネッツとは6ゲーム差、マジックとは5.5ゲーム差。ウィザーズにとって8試合で覆すには絶望的な差だが、今回のリーグ再開には特別ルールが組み込まれた。『シーディングゲーム』を終えた時点で8位と4ゲーム差以内であれば、『プレーイン・トーナメント』と呼ばれるプレーオフ進出決定戦が開催される。この『プレーイン・トーナメント』は最大2試合で、8位のチームは1勝を挙げた時点でプレーオフ進出が決定するが、9位のチームは2連勝すればプレーオフへと進むことができる。

つまりウィザーズは、ネッツかマジックとのゲーム差を4まで詰めて、『プレーイン・トーナメント』で連勝すればプレーオフ進出となる。

もともとウィザーズにとっての今シーズンは、ジョン・ウォールがケガで全休することもあり、八村を含む若手の成長に費やすプランだった。だが、ここにきてプレーオフ進出の道筋が見えてきた。ウォール不在の間に孤軍奮闘したブラッドリー・ビールがリーグトップクラスのスコアラーへと変貌を遂げ、ダービス・ベルターンスもリーグ屈指のシューターへと成長。八村もルーキーシーズンから主力として申し分のない働きを見せている。全員が良いコンディションでシーズン再開を迎えられれば、大逆転でのプレーオフ進出は決して不可能ではない。

ジョン・ウォールは左足アキレス腱断裂の大ケガから順調に回復しているが、彼自身がケミストリーの構築ができていないことを理由に今シーズン中には復帰しないと決めている。彼が加われば大きな戦力アップだったが、もともとウィザーズは若手が経験ある選手に頼ってしまうのが弱点。本質的には全員のレベルアップが必要であり、頼る選手が増えるよりも一人ひとりがメンタル面で成長する方が来シーズン以降を見据えてもプラスと見るべきだろう。

プレーオフとレギュラーシーズンは別物とよく言うが、これからの試合はプレーオフと同等の意味合いを持つことになる。新人ながら多くの役割を担った八村のように若さが良い方向に作用した上で、ビールが中断前と変わらず得点面でチームを牽引できれば、ウィザーズのプレーオフ進出は見えてくる。8位でプレーオフに進出した場合、1回戦で当たるであろう相手はヤニス・アデトクンボを擁するバックス。こちらは勝てる相手ではないかもしれないが、若いチームにとっては素晴らしい経験になるはずだ。八村のこの先のキャリアを考えた場合も、プレーオフの舞台に立つことは大きな意味がある。