取材=小永吉陽子 文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦、小永吉陽子

「結果を残せなかったら次はないという気持ちで」

22日のチャイニーズ・タイペイ戦、『絶対に勝たなければいけない試合』を落としたのは事実だが、収穫もあった。選手個人で言えば、宇都直輝は『ビビった』Window1から脱却して自分らしいプレーを見せたし、Window1はケガで外れた辻直人が持ち前の勝負強さを発揮してアウトサイドの核となる力を示した。

もう一人が永吉佑也だ。竹内兄弟と太田敦也に取って代わることが期待される若手ビッグマンの最有力候補ながら、フリオ・ラマス体制では合宿には呼ばれるもののメンバー入りを果たせず。Window1では予備登録メンバーには入ったが、それ以降の合宿には呼ばれなかった。

その永吉が今回は12名のメンバー入りを果たし、チャイニーズ・タイペイ戦では途中出場で17分半プレー。アイラ・ブラウンや太田もマッチアップに四苦八苦したクインシー・デイビスを相手に当たり負けせず、出だしの一歩のスピードで有利なポジションを取ることで、互角以上に渡り合った。

昨日、マニラでの前日練習を終えた永吉は、「こうやって選ばれたのも、実際はケガ人がいたということだったからです。自分にとってはチャンスだし、これで結果を残せなかったら次はないという気持ちで試合に入りました」とチャイニーズ・タイペイ戦を振り返る。「デイビスの体力を消耗させろというのがコーチの指示だったので、アグレッシブなディフェンスを心掛けてました。目の前でやられた記憶はないので、自分の中では手応えがありました」

「それでも負けてしまって、目の前が真っ暗になった」と言う永吉だが、すでに気持ちは切り替わっている。「まだ終わったわけじゃないことをみんなで話し合って再確認できて、今はフィリピンに勝つことだけに集中しています」

カギとなるリバウンド「取ることが一番の仕事です」

クインシー・デイビスの次はフィリピンの大黒柱アンドレ・ブラッチェ。マッチアップする相手は強力だが、今の永吉はそれを楽しみにするだけの自信と精神的な余裕がある。「もちろん楽しみです。Bリーグでも京都に移籍してから外国人選手とマッチアップする時間がすごく増えて、怖くないというか、そういう気持ちは持っているので今は楽しみですね」

永吉に限らずインサイド陣にとってはリバウンドがカギとなる。主導権が行ったり来たりしたチャイニーズ・タイペイ戦も、結局はディフェンスリバウンドをしっかり押さえ、相手にセカンドチャンスを与えなかった時間帯が日本のペースだった。

「取らせないことも大事ですけど、やっぱり取ることが一番の仕事です」と永吉はここでも強気だ。「自分が取ればチームのオフェンスのリズムも良くなります。そこも昨日今日のミーティングでしっかり話し合いをしたし、その前からも合宿で常々言われ続けたので。それを形として表現できたらいいなと思っています」

日本代表の大黒柱へ、永吉にかかる期待

最も重要な仕事はリバウンドで間違いないが、もう一つ先へと進むならピック&ロールからの攻めを演出することだ。チャイニーズ・タイペイ戦ではスクリーンプレーを巧みに使った辻直人が次々と3ポイントシュートを決めたが、辻に続く選手が出て来なかった。これはスクリーンをかける側の問題でもある。

「今日そのことも話し合いました。ピック&ロールの使い方、スペーシングは確認できたので、明日は改善できると思います」と永吉は言う。ピックプレーを起点とした攻めが機能すれば、比江島と辻の個人技に得点を依存することもなくなり、日本の課題が一つ解消することになる。

永吉が2桁得点を決めてヒーローになることはないかもしれないが、相手の大黒柱に仕事をさせず、日本代表を支える力になることを期待したい。まだ結果を出したのはチャイニーズ・タイペイ戦の1試合のみ。しかしこれを続けていけば、いずれ永吉が日本代表の大黒柱になるはずだ。紆余曲折はあったが、永吉がその位置に収まってくれるのが日本代表にとってはベストだ。