悩んで学ぶ日々を送る、シーホース三河の熊谷航「このチームをコントロールするのはなかなか難しい(笑)」

悩んで学ぶ日々を送る、シーホース三河の熊谷航「このチームをコントロールするのはなかなか難しい(笑)」

2020/06/01

熊谷航

熊谷航は昨シーズン途中に大東文化大から特別指定選手としてシーホース三河に加入すると、世代交代を図るチームにおいてシーズン終盤の14試合で先発ポイントガードに据えられた。プロ契約を結んでのルーキーイヤーとなった今シーズン、41試合すべてに先発出場。アイシン時代から佐古賢一、柏木真介、橋本竜馬と続くポイントガードの系譜に名を連ねたわけだが、まだプロ1年目を終えたばかりの24歳。実績あるベテランの中で悩みながら経験を積む熊谷に、シーズンを振り返ってもらった。

「誰も無用のストレスを溜めることなく、流れを作る」

──熊谷選手個人としてはプレータイムとともにスタッツも伸びました。一方でチームとしては2年連続で主力の入れ替えがあり、特に前半戦は勝ち星が伸びずに苦しみ、18勝23敗と勝率5割に届かないままシーズンは途中で終わってしまいました。

昨シーズンから大幅にメンバーが代わり、それをコントロールしなきゃいけなかったんですけど、個人的にも序盤戦はなかなかリズムがつかめませんでした。毎試合の良いところと悪いところのすべてを見直して、あとは先輩方にアドバイスをもらって、修正しながらやっていく中で、後半は徐々に勝ちも増えていきました。僕としては濃密なシーズンでしたね。

──昨シーズンは特別指定選手で途中からのプレーでしたが、今回はプレシーズンの準備を経て開幕を迎え、先発ポイントガードとしての責任もまた大きかったと思います。得点能力に長けた選手が揃う中、何を心掛けてコントロールしましたか?

ボール配給のバランスですね。各チームでエースとしてやってきた選手が集まっていますが、ボールは1個しかないので。1人に固まってしまうと、他の選手が勝負どころで急に渡されても難しいです。シューターの選手はボールの感覚を大事にするので、触ってない状態で打つのは難しかったりします。誰も無用のストレスを溜めることなく、流れを作ることは意識しました。

やっぱりずっと(ダバンテ)ガードナーだけとか、ずっと金丸(晃輔)さんだけでは偏ってしまうのでバランスを見ながら。その中で自分が攻めることも大事です。それがないと相手のディフェンスからしたら怖くないし、そこは昨シーズンの課題でもあったので、コントロールしながらも自分が攻める意欲はしっかりと出すよう意識しました。

そうやってバランスを取りながら、例えばフォーメーションをコールして上手くいけばやり続けるとか、上手くいかなかった時に次は何を選択して誰を使うのか、相手ディフェンスの弱点を見ながらというのもあるので、本当に毎試合難しかったです。

──ボール配給のバランスと言っても、単純に10ポゼッションあったら全員2回ずつ、というわけにはいきませんよね。ガードナー選手は2回に1回はボールを欲しがりそうだし、金丸選手はそれほど多くはないにしても、相手との駆け引きでフリーになった瞬間にパスを出してほしい。川村卓也選手は回数はそれほどじゃなくても美味しいところは俺で、と思っていそうです(笑)。タレントが揃っているのですが、ポイントガードとしては逆に難しいのでは?

キツいはキツいですね(笑)。でも、シーズン序盤はガードナーのポストプレーばかりだったんですよ。もちろんガードナーは強引に決める力があるし、それで相手がダブルチームに行ったところでパスをして誰かが打つ形が多かったのですが、流れはあまり良くないし、何より勝てていなかったのでみんなフラストレーションを溜めていました。

そこで練習からフォーメーションよりもディフェンスからのランを重視するようになって、ファストブレイクが増えたりアーリーオフェンスで攻めたり、単純なポストプレーじゃなくピック&ロールから2対2、3対3を作るようになって、シーズン途中から流れが良くなりました。おっしゃる通り、このチームをコントロールするのはなかなか難しいですけど、みんな決めてくれますから(笑)。

熊谷航

プロ選手になって「技術面よりも考える力が変わった」

──若いとはいえポイントガードとして試合の勝敗に責任を感じる部分は大きいと思います。勝ちがついてこなかった前半戦、熊谷選手の心境としては焦りがあったのか、まだシーズンは長いからとある程度の余裕はあったのか、どちらでしたか。

焦ってはいないですけど、勝てないことで「どうしたら上手くいくんだろう」とは考えていましたね。その中でやっぱりボールシェアができるようになって変わったと思います。ポストプレーが多くてボールが動いていなかったのが、ガードナーを使うのは同じでもボールを入れて任せてしまうのではなく、ガードナーのピック&ロールからのダイブに合わせたり、ディフェンスがそこに寄ったら逆サイドに振ったり、ボールが上手く回るようになって全員が絡むようになりました。

──今シーズン、「この試合は上手く噛み合った」という印象のある試合はありますか?

年が明けてすぐの秋田ノーザンハピネッツとの連戦です。最初の試合に金丸さんが出ていなかったんですけど森川(正明)さんが20点取って、僕も2桁得点で、次の試合では金丸さんが戻って来て点を取って。土曜はこの選手、日曜はまた別の選手と特定の選手に頼ることなくチームで戦うバスケットができたのがその2試合でした。ボールもすごくよく回ったし、個人的にもすごくイメージの良かった試合でした。

やっぱり勝つと雰囲気も明るくなります。それでもディフェンスからのファストブレイクを練習からすごく意識して、そこからアーリーオフェンスでピック&ロールを使うようになったのが大きいと思います。コミュニケーションを取りながらチームの共通認識ができていきました。

──プロ1年目のシーズンを終えましたが、三河に来てバスケへの取り組み方が変わった、意識が変わった部分はありますか?

技術面よりも考える力が変わったと思います。環境が変わる中で毎試合のプレー一つひとつについて考えることが増えました。「今、なぜこのフォーメーションをやったのか」と質問された時にちゃんと答えられないといけない。そういうIQの部分はすごく変わったと思います。

試合が終わってホテルに戻ると、必ず通しで1回は試合を見返します。あとは休みの日になると別のチームの試合だったり、海外のリーグを見たりします。自分の試合でいつも確認するのは上手くいかなかったプレーです。例えばパスミスしたシーンだと、その状況で何を見て何を判断したのか。逆に言えば何が見えていなくて、どんな判断をすべきだったか。自分のミスを見て「何やってんだよ」と思うのですが、その時にはそのプレーを選んだ理由があるはずなので。

チームが勝った時は自分の良いプレーも見たいんですけど、負けた試合のミスを見る方が次に生きると思うので、上手くいってもタフショットのシーンとか、なぜこういうプレーになったのか、他の選択肢はなかったのかと確認しながら見ています。あと、モチベーションが落ちている時には大好きなコービー・ブライアントのビデオを見てアゲます(笑)。

熊谷航

「良いアシストとターンオーバーは紙一重です」

──熊谷選手の得点は1試合平均で5.3で、すごく多いわけではないですが、鈴木貴美一ヘッドコーチは攻め気をしっかり出せる点を評価していました。自分で攻める意欲を出す、という課題はクリアできましたか?

正直、まだ全然ダメですね。2桁得点できる試合もあれば無得点の試合もあって、波があるんですよ。自分の得点が少なくても勝てればいいんですけど、そこで負けた時はなおさら自分ができなかったと考えることが多かったです。大学までは自分中心というか、自分の判断だけで自由にやらせてもらっていたので気楽だったんですけど、ここではそういうわけにはいかないので。そうなると僕のメンタル的に、フリーで来たチャンスは絶対に打たなきゃいけない、絶対に決めなきゃいけないとなって、身体が固くなるイメージでした。攻める意欲を出すのは大事ですけど、それが変なプレッシャーになってしまって。

それはシーズン後半戦にも続いていました。最後の方は悩まずに打てるシーンとか、1本入ったら次も自分で行こうとか、少しずつ変えられていたんですけど、まだ答えは出ていないです。来シーズンどう改善していくかは個人としては大きな課題です。

──昨シーズンに比べるとアシストは2.6から4.0に増え、ターンオーバーは1.0から0.9に減っています。ポイントガードとしてターンオーバーは禁物ですが、安全策ばかりで攻め気が出ないのもダメですよね。そのバランスはどう考えますか?

良いアシストとターンオーバーは紙一重ですが、明らかにダメなターンオーバーもあります。ドリブルをカットされたり、ボール運びでのターンオーバーは限りなくゼロにしないといけないですね。でもあとは紙一重で、そこの線引きは僕も明確には分かりません。例えば金丸さんがノーマークになるのは本当に一瞬なんです。各チームともディフェンスの上手い選手が付いていて、僕にもプレッシャーが掛かっている。ただ、そこで「パスを出さなきゃいけない」とは思わないようにしました。そこで「今はちょっと出せませんでした」、「今のは出せないよな」みたいなコミュニケーションを取るうちに、無理なパスが減ったし、アシスト自体も増えました。

──最初におっしゃったように、確かに『濃密なシーズン』でしたね。シーズンが最後まで続けば、もっとやれたと思いますか?

後半戦になって勝ちは増えていたので、そう思いますね。シーズン最初からみんな「そのうち勝てるだろう」みたいな感覚だったと思うんですけど、後半戦になって出てきた貪欲さを最初から持っていればもっと良かったです。点数を付けるなら60点ですけど、最後までやっていればもっと上げられたと思います。

──それでは最後に、来シーズンに向けた意気込みをお願いします。

ある程度はメンバーが固まってきて、大幅に選手を入れ替えたという言い訳はもうできないので、プレッシャーはあるんですけど、逆にやりがいはあります。まずは前半戦、自信を持ってしっかり入ることですね。個人的にはもう少し得点能力、パーセンテージを上げていきたいと思います。東と西に分かれますが、まずは西地区優勝を目標にやっていきます。プレッシャーはありますが、試合では割り切って自分のプレーをやろうと思えるようになってきたので、考えすぎずに思い切ってプレーします。

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