アクシデントを全員バスケで補った滋賀が先行
栃木ブレックスvs滋賀レイクスターズの第2戦は、終始滋賀がリードする展開となったが、終盤に栃木が堅守とオフェンスリバウンドでひっくり返し、80-79で逆転勝利を収めた。
滋賀は前日に23得点を挙げる鮮烈デビューを果たしたベンキー・ジョイスが練習で足首を故障し、ベンチから外れる緊急事態に。だが、この不利を埋めるべくチームが結束し、序盤からリードを奪う。第1クォーターはオン・ザ・コート数が栃木の「2」に対し滋賀は「1」だったが、並里成の落ち着いたゲームメークが冴え6人がバランス良く得点し、14-13で上回った。
第2クォーターに入ると、ディオール・フィッシャーがゴール下で強さを見せ、ミドルシュートも高確率で決めて9得点を記録。栃木もセドリック・ボーズマンの3ポイントシュートで反撃するが、ファウルのコールに納得のいかない安齋竜三ヘッドコーチがベンチテクニカルファウルをコールされるなど流れに乗れない。
後半も滋賀のペースが続く。栃木のプレッシャーディフェンスに苦しみ、24秒バイオレーションを何度も犯すも、並里とフィッシャーのホットラインを軸にリードを保つ。栃木は審判の笛にアジャストできずにファウルがかさみ、滋賀はこのクォーターだけで10本のフリースローを獲得。このうち9本を成功させ、このクォーターも27-23と上回った。
アクシデントに見舞われた滋賀、見逃さない栃木
61-50と2桁リードで最終クォーターを迎えた滋賀だが、ここで再びアクシデントに見舞われる。ジョイス不在を埋める奮闘を見せていたファイ・サンバが残り7分のところで腰を痛めてコートを去ることに。この時点で68-56とリードしていたが、フロアバランスが崩れて攻め手を欠き、得点が止まってしまう。またインサイドを攻められファウルがかさみ、残り4分でチームファウルが5に到達した。
ここから栃木の怒涛の反撃が始まった。ライアン・ロシターや竹内公輔を筆頭にオフェンスリバウンドを拾ってはそれをセカンドチャンスポイントにつなげていく。またボーズマンは執拗にリングにアタックし、フリースローで点差を縮めていった。
残り35秒、ボーズマンがシュートファウルを獲得。1本目のフリースローを沈め、ついに76-76の同点に追いついた。2本目をミスするがジェフ・ギブスがオフェンスリバウンドをもぎ取りポゼッションは栃木に。残り19秒、落ち着いたボール回しから竹内がミドルシュートを沈めて78-76と土壇場で逆転した。
その後、並里の同点を狙ったミドルシュートが外れて万事休す。ファウルゲームに持ち込むも2ポゼッション差をまくることはできず、栃木が80-79の大逆転勝利を収めた。
「強いチームと発展途上のチームとの差」
敗れた滋賀のショーン・デニスヘッドコーチは最終クォーターの数字を冷静に見つめた。「第4クォーターだけで9個のオフェンスリバウンド、17本のフリースロー、ターンオーバーも5つ。一番大事な時間帯にこのスタッツでは勝てません。チームが最後まで集中して勝ち方を学んでいかなければいけない。大事な場面で基礎的な部分を最後まで貫徹してプレーすることができるようになればリードを保って勝つことができるようになります」
第3クォーターまではすべての面で栃木を上回る出来。サンバを失ったことは大きな痛手だったが、それでもラスト1分で76-72と4点のリードがあった。ここで本来やるべきプレーを遂行できていれば、逃げ切ることはできたはず。それでも滋賀は自分たちのプレーを見失い、やってはいけないターンオーバーを連発した。
「大事な局面であおられてしまってターンオーバーが増えた。自信を持ってプレーすることが重要だが、まだ自信を持ち切れていない。そこが強いチームと発展途上のチームとの差です」とデニスヘッドコーチもその点は素直に認めた。アクシデントが重なる中、第1戦の完敗からカムバックできれば自信になったはずだが、大きな勝利を逃すことになった。
田臥が見せた執念が、栃木の勝負強さを象徴する
栃木は第3クォーターまでは不要なファウルが続いたが、「レフェリーと戦っているわけではなく、相手が誰なのかを共通理解して、点差を詰めていこう」との安齋竜三ヘッドコーチの言葉が逆転劇の下地となった。そして勝負どころで慌てた滋賀とは対照的に、最大限の集中力を見せ、相手のミスを逃さなかった。
サンバがいなくなって高さが不足した滋賀に対し、ロシター、竹内、ボーズマンが容赦なくインサイドを突いた。また残り1分を切った場面、佐藤卓磨から菅原洋介へと外でボールを回す滋賀の緩みを見逃さずに田臥勇太が強引に手を伸ばして引っ掛ける。菅原洋介が収めようとしていたボールは菅原の足に当たってコート外へ。重い重いポゼッションが、これで栃木へと移った。ここで田臥が見せたような集中力と執念が、奇跡的な逆転劇を可能とした。
それでも安齋コーチは「応援に来てくれたファンの方たちに勝たせてもらった1勝」とファンの力を強調する。このカードに連勝し、勝率を5割に戻した。それでも激戦区の東地区ではいまだ最下位という状況が続くが、「本当の勝負はこれから」と安齋コーチが言うように、気の抜けない戦いは続いていく。