文=小永吉陽子 写真=鈴木栄一

安城学園がリードし、大阪桐蔭が追い上げる展開

ウインターカップ女子決勝は大阪桐蔭(大阪)対安城学園(愛知)の対戦となり、2度にわたるオーバータイムの結果、86-84で大阪桐蔭が初優勝に輝いた。

どちらもウインターカップ初の決勝というフレッシュな対決。今年の『2強』と目されていた岐阜女子(岐阜)を準々決勝で破った安城学園と、桜花学園(愛知)を準決勝で下した大阪桐蔭の決勝進出は決してフロックではない。安城学園はズバ抜けた高さはないものの、得点源の相澤ひかりとオールラウンドにこなす野口さくらを中心に、鍛え抜かれた脚力と様々なチームオフェンスを仕掛けるチーム。大阪桐蔭は竹原レイラのインサイドの得点と永井唯菜のリバウンド力を軸に、高さある攻防が光る。

先に主導権を握ったのは安城学園だ。前半は大阪桐蔭の竹原をボックス&ワンやダブルチームで守り、竹原が下がった時はマンツーマンにするなど、チェンジングディフェンスで試合を進め、竹原を前半3得点に抑える。安城学園は前半だけで4本決めた千葉暁絵の3ポイントやポストからの合わせプレーなどを成功させて、前半を38-30でリードする。

2度の延長にもつれる熱戦、互いに一歩も譲らず

第3クォーターに入っても機動力を生かした安城学園は50-36と14点までリードを広げる。金子寛治コーチはこの場面を「リードを広げられなくてもったいなかった」と試合後に振り返ったが、ここから大阪桐蔭の反撃が始まった。大阪桐蔭のマッチアップゾーンを攻めあぐねた安城学園のペースが落ち、逆に大阪桐蔭は3回目のファウルを犯した竹原を下げた時間帯に、田中穂乃香の3ポイントと永井の得点で追い上げて45-55まで迫り、10点差で最終クォーターを迎えた。

第4クォーターでは竹原を下げてスモールラインナップでスタートした大阪桐蔭。永井のリバウンドやルーズボールで粘り、鈴木妃乃の3ポイントで追いつく戻す粘りを披露。試合を通して竹原にはマークが厳しく、竹原が面を取るポストになかなかボールが入らない。この苦しい時間帯に大阪桐蔭はアウトサイドが機能して何とかつないでいく。どちらも、相手に流れが傾きかけるとシュートを決めて食らい付く奮闘の中、最後のオフェンスがどちらも決まらず、66-66で延長に突入した。

延長では鈴木の3ポイントシュートに加え、永井のリバウンドの粘りで何度もボールをモノにした大阪桐蔭が2点差で逃げ切るかと思われたが、終了間際に安城学園の服部渚が値千金の同点ゴールを決めて、勝負は2度目の延長にもつれこんだ。再延長では大阪桐蔭の竹原が無念のファウルアウトとなるが、インサイドが不在ならばと司令塔の鈴木がドライブから突破口を開いてゲームを作り、自ら3ポイントを決める。対する安城学園は服部から相澤への合わせを決めて最後の最後まであきらめない。

消耗戦の果て、鮮やかなコンビプレーが決勝点に

手に汗握る大熱戦に終止符が打たれたのは残り6.7秒、幾度もピンチを救ってきた司令塔の鈴木のドライブから小林明生へのコンビプレーが決勝点となって、大阪桐蔭が86-84で再逆転。このまま逃げ切った大阪桐蔭が勝利し、ウインターカップ出場2度目で初の栄冠に輝いた。

この試合では選手たちの奮闘もさることながら、Bリーグの前身である旧JBL時代に優勝経験があり、元日本代表に名を連ねた両コーチの戦いも見逃せなかった。

大阪桐蔭は森田久鶴コーチがチームを総括するが、2年前から采配を振るうのは永井雅彦アシスタントコーチ。松下電器時代に日本代表のフォワードとして活躍した往年の名選手だ。安城学園のコーチである金子寛治はNKKとゼクセルで活躍し、日本代表ではキャプテンを務めた選手。ともに、初の全国大会決勝の采配でありながらも、タフなチーム力を作り上げたその手腕は今後も期待される。

初決勝、初優勝、初のメインコートと、選手たちはステップアップしながら大きな舞台を経験して、最後の最後まで白熱した展開を繰り広げた。両チームに拍手を送りたい。