文=鈴木健一郎 写真=小永吉陽子

チームバランスの良さが際立つ福岡大学附属大濠

12月27日、ウインターカップ大会5日目。男子の準々決勝4試合が行われ『4強』が出揃った。

インターハイ王者の福岡大学附属大濠(福岡)は県立厚木東(神奈川県)と対戦。立ち上がりからディフェンスの強度で相手を圧倒。厚木東が狙う走るバスケットの展開に持ち込ませない。前日に北陸学院(石川)との消耗戦をやったこともあり、片峯聡太コーチは早めに選手を代えていく。「ディフェンスをよりハードにやること、そしてタイムシェアすることは最初から考えていました」と試合後に語ったゲームプランを遂行していく。

試合開始から約7分、中田嵩基が土家大輝と交代した時点で25-11とリード。そこからセカンドユニットが活躍した。前日は井上宗一郎と横地聖真のビッグマンによる力強いプレーが目立ったが、この日は選手とボールが連動する高速パスワークで厚木東を振り回し、オープンで放つ外角シュートが攻め手になった。

後半に厚木東の反撃を受けたものの、それでもメンバーを入れ替えながら20点差をキープ。結局、厚木東が攻勢に出たはずの第3クォーターも24-19とリードを広げ、早々に試合を決めた。

98-65と完勝を決めた後、片峯コーチはチームの手応えをこう語る。「誰が出てもコート上の5人の共通意識でやれている。明らかな判断ミスは指摘しますが、選手には主張してもらいたいし、それができている。主張はするけど他の意見は聞く、そしてコートで頑張る。そのバランスが取れています」

前年王者の福岡第一とインターハイ王者の大濠が激突

その大濠と準決勝で対戦するのは福岡第一。組み合わせ抽選の結果が発表された時から実現するであろうと思われた『福岡対決』が現実のものとなった。福岡第一は準々決勝で中部大学第一(愛知)と対戦。第3クォーターまでビハインドを背負う苦しい展開となったが、最終クォーターを21-14で上回り逆転勝ちを収めている。苦戦はしたが、試合の流れを読んでの勝負強さは『さすが前年王者』といったところ。

どのチームも堅守からの速い展開を標榜するが、福岡第一のトランジションバスケットは他の追随を許さない。上背はないが、ガード陣のスピードは随一。少しでも戻りが遅いとワンパス速攻や、キレイなスリーメンで速攻からイージーシュートの機会を作り出す。ハーフコートバスケットになれば、195cmの留学生バムアンゲイ・ジョナサンのインサイドの強さが際立つ。ミドルシュートもうまく、強さと巧さを兼備。昨年大会では粗削りだったが、プレーの引き出しも増えて頼もしい存在へと成長している。そして福岡第一のもう一つの武器はボールへの執着心。ボールへのダイブは当然で、球際の強さを全員が持っている点も特徴だ。

大濠とは互いに『勝手知ったる相手』。まずはバムと井上宗一郎、ビッグマン同士のマッチアップが試合のカギとなる。バムは『負けたくないライバル」として井上を名指しし、「今までもリバウンドでは負けていないが、試合に負けている。絶対負けない」と意気込んでいる。彼らを中心とするリバウンド争い、そして速攻の出来が勝負を分けることになりそうだ。

明成では八村阿蓮が44得点14リバウンドと躍動

準決勝のもう1試合は明成(宮城)vs帝京長岡(新潟)となった。明成は昨年のウインターカップで初戦敗退の悔しさを味わっている。八村阿蓮、相原アレクサンダー学というタレントが最上級生になった今、昨年の轍を踏まぬよう目の前の試合に最大限に集中して戦うことで、ここまで勝ち上がって来た。

準決勝の相手は県立広島皆実(広島)。相手の持ち味である電光石火のトランジションに苦しみながらも試合の中でアジャストし、前半こそ競ったものの後半に入るとじわじわと点差を広げて危なげなく勝ちきった。スピードのある相手に振り回されながらも締めるべきところは締め、そしてサイズのない相手にインサイドの優位性を最大限に生かす試合巧者ぶりが光った。

八村阿蓮は44得点14リバウンドと出色の出来。「相手が小さいのもあるし留学生もいないので、自分が中でやるべき」とインサイドに専念したが、帝京長岡が相手となればティレラ・タヒロウとのマッチアップとなる。「留学生がいるところが上がってきたらプレーは変えます。中と外を交互にやることで留学生を引っ張り出してリバウンドを取らせたり、そういうプレーをしていきたい」と、準々決勝とはまた違ったプレーで勝利に貢献すると意気込んだ。

留学生プレーヤーを擁しながら依存しない帝京長岡

対する帝京長岡はどの選手もディフェンスを強みに挙げる、守備の意識が全員に浸透したチーム。ヘルプディフェンスがトラップディフェンス(ダブルチーム)に見えるほどの堅守を誇る。

192cmのティレラ・タヒロウと195cmのブラ・グロリダは留学生プレーヤーとしてはそれほど背丈が高いわけではないが、抜群の身体能力とスピードでショウディフェンスできるフットワーク持つ。そのパワーと高さ、スピードは相手にとって脅威。1対1でゴリゴリ点を取るタイプではないが、それが逆にチームとしてのバランスが良いという強みになっている。

攻撃の要はスコアリングガードの祝俊成。167cmと小柄だが当たり負けしない身体の強さを持つ。スクリーンを巧みに使い、少しのズレから放つジャンプシュートやドライブが武器となる。特にスクリーンからのジャンプシュートはカイリー・アービングを彷彿とさせ、本人もプレーを参考にしているという。1年生から出ている経験とその強心臓でチームを引っ張る。

大会6日目の28日、男子の準決勝は15時20分から福岡大学附属大濠vs福岡第一、17時から帝京長岡vs明成が行われる。