劣勢を跳ね返す第3クォーターの活躍も光る
12月2日、サンロッカーズ渋谷は敵地での川崎ブレイブサンダース戦で、残り3秒にロバート・サクレの勝ち越し3ポイントにより78-77で劇的勝利。前日に続く川崎撃破により、連勝を9に伸ばしている。
この値千金の決勝シュートを演出したのがベンドラメ礼生だ。残り11秒、2点差でのオフェンスとなったSR渋谷はベンドラメがドリブルで敵陣へと攻め込む。ここでゴール下へのアタックを仕掛けた彼に対し、川崎のディフェンスが収縮して寄ったところで、冷静に状況を見極めてアウトサイドでノーマークになっていたサクレに正確なパスを出したことが、決勝3ポイントシュートにつながった。
「試合を通してサクレがポップ(スクリーンの後、外に開いてパスを待つ動き)で、ボールを呼んでいたのは分かっていました。普段から3ポイントを練習しているのを知っていましたし、彼に託しました」とベンドラメは振り返っている。
また、このパスだけでなく第3クォーター中盤にSR渋谷が2桁のリードを許す劣勢になった時に盛り返せたのは、ベンドラメがこのクォーターで10得点を挙げる活躍でチームをけん引したからだった。
「10点のリードを奪われた時、オフェンスが外、外になり、そこでシュートが入らなくて悪い流れが続いていました。相手のファウルがかさんでいるのに、アウトサイドで攻めてしまう。そこでサクレがみんなに『相手のファウルが多いんだから、インサイドにアタックしよう』と言いました。最初ターンオーバーから入ってしまいましたが、リングにアタックする姿勢が良かったのかと思います」と、積極性が良い結果につながったと見ている。
「あのパスミスがあったからこそ選択肢が増えました」
苦しい場面こそ積極性が重要となる──。これはベンドラメが川崎戦で得た教訓だ。前回の川崎戦で、SR渋谷はともに2点差での惜敗を喫している。特に11月20日の試合、ベンドラメは2点を追う残り1分から2回連続でインサイドに切れ込むもそこから外にさばいたパスをスティールされる連続ターンオーバーを献上し、自分にここ一番の場面でボールを預けてくれたチームの期待に応えられなかった。
「あのパスミスがあったからこそ選択肢が増えました。絶対にああいう場面が来たらシュートを打つというメンタリティを持つ。消極的な結果、ミスにならないことを意識しています」
このようにベンドラメは語り、今回の試合ではこの決意を実際にプレーで示している。残り22秒で73-76とされた後、ベンドラメは自らアタックしてレイアップを決めて1点差に縮めた。このアタックがあったからこそ最後のオフェンスで、川崎のディフェンスの意識がベンドラメの再びのドライブに向かい、結果的にサクレの3ポイントを呼び込んだ要素も少なからずあったのではないだろうか。
強気なアタックを仕掛けながらも、それに固執することなくノーマークの相手を見つける冷静な部分も同居させる。そんなベンドラメの『成熟』がよく見えた残り30秒だった。
懐疑論を払拭、優勝候補の一角へとステップアップ
これで連勝が9にまで伸びたSR渋谷だが、正直に言えばどこまで中身が伴っているのか、この川崎との連戦の前には懐疑的な見方もあった。というのも黒星が先行しているチームを相手の連勝であり、さらに直近の試合となった天皇杯ではB2の茨城ロボッツにアップセットを許していたからだ。
だからこそ、今回の川崎相手の連勝は「すごくうれしいです。接戦で勝ち切れない試合が続いていた中で、上位チーム相手に勝ち切れました。ロボッツに負けてチームとしてネガティブになったところで、上位チームとの対戦が続く12月を迎えましたが、ここで勝ったことで、逆に良い雰囲気になります」とベンドラメは連勝の意義を強調する。
「連勝は意識しています。連勝を伸ばすことで、チームとしてより勢いに乗っていけます」とさらなる快進撃への意欲を見せるベンドラメ。次の試合はホームの青山学院記念館で千葉ジェッツを迎え撃つ。この難敵相手にも連勝を伸ばした時、SR渋谷は優勝候補の一角として誰しも無視できないチームになるだろう。そのためには、ここぞの場面で強気に攻めてチームをけん引するベンドラメのプレーが欠かせない。
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