取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

大阪学院は2013年にインターハイ8強に進出、その後も安定した成績を収めて強豪校の地位を確立している。ただ、全国の壁はそう簡単に乗り越えられるものではない。インターハイでは昨年が2回戦負け、今年は初戦敗退で、最後の大会となるウインターカップに臨む。大阪のライバルに競り勝って全国への切符を手にしているが、全国でどれだけ戦えるかが問われる大会となる。

それでも髙橋渉監督はチームの出来に自信を持っている。個性の発揮と協調性の両方を要求されるバスケットボールにおいて、選手たちは自分たちで課題に取り組み、解決策を見いだして成長してきた。その3年間の集大成となるウインターカップで、4年ぶりのベスト8、さらにその上を目指す。

[INDEX]ウインターカップ2017プレビュー 出場校インタビュー

「落ち着かせて『40分でゲームをやらなあかんよ』と」

──まずは髙橋監督の自己紹介をお願いします。

大阪の高校を卒業して筑波大学に進みました。卒業して今のJX(日本鉱業)でプレーし、デンソーへ移籍して、1997年に大阪に帰って来ました。当時は成年国体の選手だったので、指導を始めたのは2000年からになります。最初は成年男子の国体、そこから監督をやって、2003年と04年に全国優勝しました。

──では、今年の大阪学院がどんなチームなのか教えてください。

この学年はジュニアオールスターで大阪が優勝した代なのですが、ほとんどの選手が大阪に残らず外へ出ています。それを感じた私は、大阪で素材のある子や伸びしろがある子はもちろん、県外の子も積極的に取りにいきました。だから今は3年生で試合に出せる選手が10人ほどいます。プレータイムの長い短いはありますが、彼らを取っ替え引っ替えで、インターハイ予選もウインターカップ予選も選手層で勝ったところがあります。

これまで40分を6人か7人でシェアしていたのが、10人になってくるので、それぞれの負担が軽減できますし、短い時間を集中して思いきりプレーできます。選手たちにも、自分の良いところを積極的に出すように話しています。展開を速くしながら、個々の良いところを出せるようなチーム作りをしてきました。

──ウインターカップは大きなチャレンジになりますが、どの部分に気を配りますか?

落ち着いて、今まで自分たちがやってきたことを試合でいかに出せるか。ここが一番大事です。大阪予選でも選手たちは早く結果が欲しくて、40分トータルのコーディネートではなく最初の10分で試合を決めてしまうぐらいの感覚になります。そうなってくると自分たちがやってきたことに集中できず、みんな好き勝手にやってしまう。それを落ち着かせて「40分でゲームをやらなあかんよ」と。特にウインターカップ予選ではその話をしながら、苦しいゲームを乗り切ってきました。

──試合に限らず練習でも、高校生で常に気持ちを整理してプレーするのは難しいですよね。

怒りながらでも褒める、注意しながらでも次の展望が見えるような言葉をかけることを意識しています。「それはダメだよ」だけでなく、「だから次はどうするの」というアプローチです。

「結果はどうあれ自分で責任を取ることは大事」

──2004年の就任からここまで、どんな指導のスタイル、ポリシーでやってこられましたか。

私が大阪学院に来た時は、1位が大商学園、2位が桜宮でした。地区が一緒の大商学院にまず勝たないといけない。その次には桜宮に勝たないとダメ。それでこの2校とは全く違うチームスタイルを確立しようと考えました。こちらから全部押し付けるのではなく、選択肢は与えても決めるのは選手にやらせる。選択肢を与えずとも自分でアイデアを出せる選手もいます。そういう部分が自発的に出てくる土壌を作ろうと考えました。

最初は難しかったです。うまい言葉で言えば『自主性』ですが、中学生から上がってきたばかりの選手が「はい、自分たちで考えなさい」と言われても無理なんです。だから、「こうすれば、こうなるよ」と、ある程度の道筋を作っておいて、そこから先の大海原でどの海路を行くかは自分たちで磁石を使いながら進んでいけるよう仕向けていく。それでも逆に、私たちが想像していないことを彼らがやり始めることもあります。それは成長が見える部分でもあります。

──それが指導者としてのやり甲斐というわけですね。

そうですね。このチームが始まってすぐの練習試合で、選手たちは自分たちで責任を取りませんでした。どこかでシュートを打たなければいけないけど、自分はやめておこう、という。そんな試合を見て、「お前たちはもう無理だ、勝負の世界では生きていけない。だからお前たち3年生はいらない」と厳しい話をしました。それでも彼らは乗り越えてやってくれました。

自分で決断して、結果はどうあれ自分で責任を取ることはすごく大事です。腹をくくって何か勝負をするということが絶対に大事で、それができないと、上へ勝ち上がっていけません。

「高校生のうちに悩んで、そこで自分で解決する」

──そこで腹をくくったことで、全国に行けるチームに成長したというわけですか。

1年前の私学大会の準決勝で阪南大に30点差負けしています。それは自分たちの無責任さや不甲斐なさが露呈した試合でした。そこからそういう話をしてこつこつやり直して、新人戦では13点差くらいで勝ちました。それが彼らの自信になったと思います。ボールを持っている選手にはスポットが当たります。そこでしっかり自分の持っているものを出す、それをやりなさいと繰り返し伝えました。

──選手それぞれ個性があるし、思春期なので気持ちの浮き沈みも激しいと思います。そんな選手たちとどう接していますか?

一番に観察するようにしています。昼休みのシューティングなんかは誰かに声をかけることなく全体の様子を眺めながら、それぞれの選手の表情や動きを見ます。それで「今こいつは充実してる」とか「悩んでいるな」というのは分かります。それをどのタイミングで伝えるかは、私自身も気を遣うようにしています。何回もトライさせて待つこともあります。内心イライラすることもありますが、でも高校生なので、ここで完成ではないです。

やっぱり卒業後も次のステージでバスケを続けてもらいたいし、できればそこで活躍してほしい。だから高校生のうちに悩んで、そこで自分で解決するのは大事なんです。答えを言うのは簡単かもしれませんが、そこを何とか待って、ようやく進みだした時に引っ張り上げてやることで後は勝手に転がっていきます。そこはイライラしながらも待ちますよ。