取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

大神雄子、高田真希、渡嘉敷来夢、水島沙紀、三好南穂、河村美幸、そしてエブリンとステファニーの馬瓜姉妹。桜花学園は常に高校バスケ界のトップに君臨し、日本代表で活躍するトッププレーヤーを輩出してきた。スカウトがうまいのももちろんあるだろうが、それ以上に井上眞一監督を中心とする『育成』が機能しているからこそ、上のカテゴリーで活躍できる人材の質と量で他校を圧倒することができている。日本バスケが世界と戦う上で避けては通れない『ビッグマンの育成』について、井上監督に持論を語ってもらった。

[INDEX]ウインターカップ2017プレビュー 出場校インタビュー

入学からの3年間、将来を考えて基礎を教える

──ビッグマンの育成は、男女を問わず日本バスケ界の課題です。今もビッグセンターの部分で苦労されていますが、これまでビッグマンの育成ではどんなことを意識してきましたか?

昔で言うと、初優勝した昭和61年には175cmあれば大きかった時代でした。今だと185cmの子が出てきているので、日本人選手も少しずつ大きくなっています。ビッグマンを育てないといけないんだけど、まずビッグマンがいない、という状況があります。今の高2、中3、中2には、それだけのサイズがある選手がいません。今年の高3は広島と大阪、東京成徳に大きな選手がいるのですが、やっぱり日本中を探してもいないんです。

そこをまず探してこなければいけない。育てるのはその次です。中学を卒業して高校に入ってからの3年間と、高校を出てWリーグに行ってからの3年間では、同じ3年でも全く意味が違います。ここでしっかりと基礎を教えて、将来を考えて育ててあげる必要があります。ほとんど素人に近い選手でも、ちゃんと教えればモノになります。髙田真希も馬瓜エブリンも、入ってきた時はほとんど素人に近いビッグマンでした。渡嘉敷来夢も運動能力はすごかったけど、バスケット的には素人でした。

みんなそれぞれ違うんだけど、まず将来のことを考えると、日本代表だとビッグマンも走ります。ファストブレイクに絡むことができないといけない。ビッグマンと言っても世界に行けば小さいわけだから、走れるセンターを育てないと日本代表も困ります。

「選手が3年間かけて伸びるのを見るのは楽しい」

──どの選手も、日本代表を意識するようなメンタルを持たせるのですか?

本人の性格もあるので、必ずしもやり方は同じではありません。それでも、桜花学園に入ったからには必ず日本一にならないといけない、という宿命が選手にはあります。なおかつ選手たちも入学した時点で、「桜花なら全国優勝のチャンスがある」と思っています。そこは一致しているのですが、やはり個人差はあって、どれだけ厳しい環境でやっていくか、そのモチベーションはそれぞれ違うので。

──井上監督のモチベーションとしてはいかがでしょう。

やっぱり選手が3年間かけて伸びていくのを見るのは、すごく楽しいですよ。期待も込めながら卒業生を見ていますが、Wリーグで、あるいは日本代表でプレーして、日本のバスケットボールの役に立っているのですから、すごくやり甲斐のある仕事だと思っています。

──多くの選手を育ててきましたが、卒業後にトップレベルで活躍できる選手に共通する要素はありますか?

多分だけど、プライドみたいなものを持っているんだと思います。「桜花出身だから恥ずかしいプレーはできない」だとか。渡嘉敷もいろんなところでインタビューされていますが、必ず私の名前を出してくれます。ウチの高校を選んだことで自分の人生が大きく変わった、本人もそう思っているんでしょうね。