Bクラブのキーマンに聞く
Bリーグも2年目のシーズンを迎え、バスケットボール界が激動する中で各クラブはそれぞれの信じるポリシーと特色を生かして『生きる道』を探っている。それぞれのクラブが置かれた『現在』と『未来』を、クラブのキーマンに聞く。

秋田ノーザンハピネッツ 水野勇気社長に聞く
vol.1「おらが町のチームを応援する楽しみは秋田にもあるべきだ」
vol.2「チームカラーをピンクにしたのも、結果としては大正解でした」

文=鈴木健一郎 写真=古後登志夫

秋田の強みは「圧倒的な認知度とコアファンの数」

──チームは1年での昇格を目指し戦っていますが、「フロントとしてはとにかく売上を増やすこと」とおっしゃいました。具体的な目標や方策はありますか?

当面の目標は1年でのB1復帰ですが、昨シーズンのようにB1でなかなか勝てない状況を繰り返したいとは思いません。秋田のクラブチームとして上を目指さなければならない。弱肉強食のルールのこのリーグで勝ち抜くには、とにかく補強に使えるお金を増やすしかありません。

お金がすべてではないですが、上位争いをしようと思ったらかなりの割合で重要になります。そうなると、私たちが目指すのは売上10億円です。昨シーズンが6億ぐらい。これを10億円に持っていくことでB1でも優勝争いを演じられると思っています。そのポジションに行くために、売上を増やしていく。B1上位クラブと比べた場合、私たちの弱みはやはり大きいスポンサーがいないことです。いわゆる胸スポンサーも1年目からついたことがありません。そこは県内に限らず、秋田の魅力を説いて取りに行く努力が必要です。また県内でもまだまだ応援してくれる企業があるはずで、その掘り起こしもやっていきます。

お客様からいただくチケット収入もまだ伸びる余地があります。昨シーズンは平均で3000人を超えて、「秋田はお客様が入る」というイメージを持たれているかもしれませんが、立ち見も含めてキャパは5000人なんです。まずは平均4000人を達成しないといけない。そのためにはB2の今シーズン、昨シーズンの9万人台を超えて10万人の観客動員を実現したいです。それだけ増えていけば、B1でももうワンステップ先まで行けると思います。既存のお客様はもちろん、もっと新規のお客さんに来てもらう努力をします。もちろん簡単ではないのですが、B1に戻ってスポンサー収入やチケット収入を増やすのはまだ先のこと。今やれることをやっていきます。

──上を目指すと、どうやっても『地の利』の課題は出てきます。逆に、秋田ならではの強みはどこでしょうか。

秋田県の中での圧倒的な認知度と、応援してくれるコアファンの数です。別に統計を取ったわけではありませんが、地元の認知度とコアファンの数はBリーグの中でも圧倒的だと思います。その強みを生かして収入を増やしていく。大きいスポンサーがいるクラブではないので、常に工夫をして収入源を作っていく必要があります。その仕掛けをこの1年でやって、その結果、強いクラブにしていくのが私たちの次のステップです。

ただ、秘策はありません。私たちも1年目からずっと観客動員数を増やしていますが、それはステップを踏んでいるからできているわけです。まだ8年目なので、その積み重ねをもっと続けていきます。

「あきらめたら経営者としては無能だと思っています」

──厳しいことばかり指摘するようですが、秋田は人口減の激しい県でもありますよね。ここに根を張ってクラブとして伸びていく難しさと向き合わなければいけません。

チームの立ち上げをやり始めた2008年に作ったユニフォームの背番号が「111」でした。こえは当時の秋田県の人口が111万人だったからです。それが10年たって、100万人を切ってしまった。県で一番大きな秋田市も人口減少が激しく、31万人台の人口が2040年には24万人になるという予測が立っているんです。でも、それで観客動員を増やせないかというと、私はそんなこと全く思っていません。これはやり方次第ですよ。

サッカーの松本山雅FCはすごいじゃないですか。1試合平均1万6000人の観客が入ります。人口24万人の松本市であれだけのことがやれている。サッカーとバスケで、週1試合と2試合の違いはあるにしても、単純に半分にしたって8000人は入る。松本にそういうモデルがある以上、やれない理由はありません。人口が減るので厳しい環境ではあると思いますけど、そこであきらめたら経営者としては無能だと思っています。

それにバスケがもっとメジャーになって、中央での露出が増えれば、地方にも必ず波及します。そういう意味では昨シーズンのB1は全国レベルでの露出は正直まだ物足りないと思っています。結果それはBリーグではなくて日本代表の強化が必要なのかもしれません。メディアの傾向として、日本代表が強いことはやはり不可欠だと思うので。それで言うと私たちも代表に選ばれるような選手をどう輩出していくか、その部分にも取り組んでいく必要があります。

「将来的には優勝争いできるチームを作る」

──経営の話ばかりでバスケの話をしていませんでした。最後に今のチームをどう見ているかを教えてください。

今のルールで戦う上で、秋田としては良い若手を取って育てていくのは重要です。今で言うと、中山拓哉という東海大のレギュラーだった選手を取れました。これはbjリーグ時代では考えられないことで、Bリーグになったことでの大きな変化です。他にも小野寺祥太選手は高卒で岩手ビッグブルズに入って、昨シーズンからポイントガードを始めた選手ですが、ペップ(ジョゼップ・カナルス)コーチはまだまだ伸びる、ポイントガードとして育てていきたいと話しています。こういう形で若手を発掘していかなければならないと思います。

そして来シーズンにB1を戦うことになったら、代表クラスの選手を補強することを目指さないといけない。ペップコーチの目指す激しいディフェンスのバスケットボールに補強がうまくマッチすれば、相当面白いと思います。ただ、B1がそんなに甘くないことはよく分かっているつもりです。東地区でも戦えるチーム、将来的には優勝争いできるチームを作ることが、私たちの戦いです。