文=泉誠一 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

オン・ザ・コート数が割れたケースでの力の差

Bリーグでは外国籍選手を最大2人まで同時に起用できる。5人しかコートに立てないバスケットボールにおいては、40%を外国籍選手が占める構図だ。

トップリーグであるB1では各クォーター最大2人まで、1試合のべ6人まで外国籍選手を起用できるオン・ザ・コート数を事前申告する。後半はどのチームもほぼ100%の確率で第3クォーターで「1」、第4クォーターで「2」を採用する。これは勝負の懸かる最終クォーターに外国籍選手をフルで使って強みを出すためだ。

一方で前半は第1クォーターで「1」、第2クォーターで「2」が採用されることが多いものの、割れる機会も少なからずある。第6節終了時点までの99試合中、前半だけオン・ザ・コート数が割れたケースは約3割となる29試合あった。これを10分間の戦いだけで見てみよう。第1、第2クォーターの裏返しで述べ58回の戦いのうち、外国籍選手を1人しか起用しないオン「1」のチームが「2」を上回ったのは16回あった。

「1」でも、帰化選手を擁するクラブは外国籍選手と同時に起用できる。「1」が「2」を凌駕したうち、帰化選手がいるのは千葉ジェッツと滋賀レイクスターズ、琉球ゴールデンキングスだけであった。内訳は以下の通り。

[2回]千葉(*)、A東京、名古屋D、滋賀(*)、大阪
[1回]北海道、SR渋谷、川崎、新潟、西宮、琉球(*)
※=帰化選手がいるクラブ

逆に、外国籍選手が1人多い「2」のチームが「1」に対して10分間に2桁以上の点差をつけたケースは13回を数える。最大は名古屋ダイヤモンドドルフィンズvs三遠ネオフェニックスの第2クォーター、オン・ザ・コート「2」の名古屋Dが33-16と17点差をつけた。まだまだ「2」の方が力は上であり、有利に立っている。

国内リーグからアメリカ人との競争が必要

バスケットボールは身長が高い方が有利なスポーツであり、小さな日本人の弱点を補うべく助っ人外国人に頼る。体格的に有利な外国籍選手たちは、自ずと得点とリバウンドのランキング上位を占める。だが、これは日本だけの話ではない。韓国KBLの得点ランキングを見れば、アンドレ・エミット(全州KCCイージス)の28.3点を筆頭に、平均20点を超える選手のほとんどが外国籍だ。高身長選手が揃う中国CBAでも、平均37点のダリウス・アダムス(新疆フライングタイガース)が現在トップで、続く平均28点のカルロス・ブーザー(広東サザンタイガース)はNBA時代のキャリア以上の得点を挙げている。(※各国リーグの得点ランキングは10月末日時点のもの)

国際試合を見ても帰化選手の活躍は目立つ。6月に長野で行われた東アジア選手権、日本代表vsチャイニーズ・タイペイの準決勝。帰化選手のクィンシー・デイビスIIIに29得点17リバウンドを許し、73-78で敗れたのは記憶に新しい。まもなく11月24日より始まるワールドカップ予選の開幕戦で駒沢体育館にやって来るフィリピンには、NBAのウィザーズなどで活躍したアンドレイ・ブラッチが帰化選手として在籍しており、大きな壁となり得る。

かつてドイツリーグでプレーしていた石崎巧(琉球ゴールデンキングス)は、海外挑戦では自分たちが外国籍選手になるという意味で「競争相手がアメリカ人になる」と話していた。世界のトップに君臨するアメリカの選手たちが、日本はもとよりアジアやヨーロッパ各国のリーグで主力となっている。国内リーグから外国籍選手とプレータイムを奪い合う競争があり、その中で日本人選手が台頭すれば自ずと日本代表は強くなる。その競争がない今、Bリーグから海外のリーグへ日本人選手を輩出できる状況はまだ遠いと感じてしまう。

勝負どころで活躍する日本人選手の台頭

昨シーズン、日韓クラブ頂上決戦の『イースト・アジア・クラブ・チャンピオンシップ』が行われ、川崎ブレイブサンダースが83-80の接戦を制し、安養KGCを倒した。Bリーグでは同然のように第4クォーターは「2」になる。その状況を「新鮮だった」と驚いていたのは、安養KGCのアメリカ人、キーファー・サイクスだった。KBLはルールとして第4クォーターは「1」と定めている。リーグを盛り上げるためには、自国の選手の活躍が一番であるため、最終クォーターで勝負を決める役割を自国の選手に担わせるルールだ。これは代表強化にも直結している。

10月末時点で、得点ランキングベスト10のうち、日本人選手は5位の宇都直輝(平均16点/富山)と8位の富樫勇樹(平均14.9点/千葉)、そしてベテラン帰化選手の桜木ジェイアール(平均14.5点/三河)が名を連ねている。だが、それ以外は外国選手が占めており、接戦となった試合で勝負を決めるのも彼らの力が大きい……と勝手に考えていた。

しかし、1ゴール差(3点差以内)の接戦はこれまで16回あり、その接戦を演じたのべ32チームにおける第4クォーターまたはオーバータイムの得点者を調べて集計すると、32チーム中18チームで日本人選手が最も得点を挙げていた。

なぜか接戦が多い川崎(6回)と新潟アルビレックスBB(5回)。現在、得点ランキング1位のダバンテ・ガードナー(新潟)と昨シーズンの得点王であるニック・ファジーカス(川崎/得点ランキング現在2位)を擁するこの2クラブだが、こと接戦時になると川崎では辻直人や篠山竜青、新潟では池田雄一と畠山俊樹がハイスコアを叩き出す。緊張感高まる接戦、その勝負を決める時間帯で日本人選手が活躍するのは明るい兆しと言えよう。

Bリーグを盛り上げるためにも、同胞である日本人選手の活躍が手っ取り早い。オン・ザ・コート数が割れた時こそ、日本人選手の力が試される。